2009年05月17日

2009年05月17日の更新状況

2009年05月17日の更新状況
『魚話の目次』を更新しました.
ブクログ『魚本倉庫』を更新しました.
※更新分は『魚本蔵書目録』NEWと書いてあります.


2009年05月07日の更新状況
次回もしくは次々回のネタとの関連も考え,『魚話その154』の内容をちょっと変えました.


2009年05月06日の更新状況
『魚話その154』をアップしました.


2009年04月28日の更新状況
『魚話その153』をアップしました.


2009年04月26日の更新状況
『魚話その152』下段の『参考文献』に左右チェックに使用した文献のデータを追加しました(pdf形式).

2009年03月20日の更新状況
『魚話その152』をアップしました.
すんまへん.
やっと更新しました.




















ご意見・ご感想・タレコミ等お待ちしております。
なんでもいいんで(前向きな)レスポンスがほしいです。
※ご指摘受け付けますが、できればソース込みでお願いします。
あと、公開していいネタをお願いします。





E-mail
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2009年05月06日

魚話その154 超さめざめと泣けい! その2

●チョウザメを食べてみる


今回は中身.
まずは食物用に調達したメスでガシガシと捌く.
本来なら包丁を使うシーンだが,骨格標本も作りたいのと,チョウザメの骨格は軟骨なので,包丁よりも小回りが利くメスが便利なのである.
包丁も併用することが多いが,ペンナイフと同サイズのメスだけでも1mくらいの魚は捌ける.
あ,これを読んだメス所持学生諸君,迂闊に真似しないように.
僕のは実験使用後のメスではなく,ちゃんと未使用品を一本用意しているのだ.

捌いた肉は,珍食愛好家達と分配したので,意外と取り分は少なかった(全部僕の自腹なのだが).

ちょっと料理するタイミングが得られなかったので,冷凍庫にポイ.
しかし,我が家の冷凍庫は既に珍魚のフィレ達がカオスを形成しており,わずか数日の保存なのになかなか見つからぬ.
勝手に借りている冷凍庫などを含めると,一般家庭用冷蔵庫丸ごとの容量分(←冷凍スペースだけではない)の冷凍貯蔵物があるのだ.

カオス
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で,ようやく見つけた凍結フィレ.

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解凍すると,改めてそのヌメリの強さに気付く.

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皮も固いし,皮剥きはケガをしないように注意が必要だ.

さて.
初めての魚は,塩焼きにして食べることにしているが,全部塩焼きにするのも勿体ないので,冷蔵庫の中身とご相談.
出てきたのはキャベツとマイタケ.

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これらと炒めればよいか…
まずはフィレを一口大に切る.

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小麦粉をまぶし,フライパンで焼く.

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ざく切りにしたキャベツ,マイタケ,酒の順に炒め,先ほど焼いたフィレと生姜,豆板醤,酒,オイスターソースを加えてさらに炒める.

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で,完成.

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塩焼き
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炒め物
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塩焼きは,ちょっと堅めで風味を強くした銀ダラという感じ.
炒め物は,獣肉に近い歯ごたえ.
風味は魚なのだけれど,噛み切りやすい獣肉が具材に加わっている感覚なのだ.
ただ,この風味,冷めたらちょっと…
刺身でもイケるとのことなので,調理法によりけりということなのだろう.
いやしかし,出来立ては美味い.
キャビアだけがチョウザメじゃぁないのではなかろうか.
ただ,僕は味音痴味に寛容であることも付け加えておきたい.

ちなみに図鑑以外でチョウザメを扱った書籍というのは意外と見つかるもので,僕の本棚からは,開高健の『オーパ,オーパ!!』,末広陽子の『私はチョウザメが食べたかった』などが見つかった.
両者とも美味い不味いの両方が書かれている.
風味が強いので,種差・条件を如実に反映してしまうのだろうか.

古書では,『松前志』,『栗氏魚譜』,『異魚図賛』,『阿淡産志』,『紫藤園海鯊図』,『本草写生図譜』にチョウザメの記録があるという.
国会図書館のサイトで閲覧可能な『栗氏魚譜』と『異魚図賛』を調べたところ,なにやらゾウの鼻のような吻と,やたらといかつい鱗を持った魚が描かれていた.
チョウザメと『特徴』を共有しているのだが,どこでどう伝言ゲームを間違えたのやら…という感じで面白い.
また,『和漢三才図会』や『本草綱目』,『本朝食鑑』でもそれっぽい記述が出ているのだが,マグロやカジキとの混同が起きている.
京極堂よろしく内容を解体すれば分かるのだろうが,それはまたいつかの機会に…と思ったら,同じようなことを考えていた人がいた.
う〜ん.
後手後手だなぁ….
でも機会があれば次回,もしくは一回違う魚話を挟んで次々回くらいには紹介したいところだ.


本日の魚
アムールチョウザメ(Acipenser schrenckii)


参考文献
オーパ、オーパ!!アラスカ篇 カリフォルニア・カナダ篇 (開高健 集英社)第1版 P378-379
私はチョウザメが食べたかった (末広陽子 河出書房新社)第1版 P357-359
磯野直秀 (2005), 珍禽異獣奇魚の古記録, 慶応大学日吉紀要・自然, 37号, 33-59
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2009年04月28日

魚話その153 超さめざめとむせび泣けぃ! その1

●サメとチョウザメ


タイと名前が付くと有り難みが増すのか,アマダイやらキンメダイやらマトウダイなど形や類縁関係は違えど●●ダイと呼ばれる魚は多い.


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図1.マトウダイ


似たような・・・というか,同じような例としてサメがある.
いや,●●カジカやら◆◆ハゼやら,類縁関係を跨いで名称が付いている例は他にもあるのだが,ええい,今回はサメなのである.

サメではない●●ザメには,コバンザメとチョウザメがいる.
前者は背ビレが変形してできた吸盤で,サメを始めとする大きな生き物にくっつくそのユニークな生態から,‘ちゃっかりもの’として紹介されることが多い.
対して,チョウザメの場合,テレビなどのメディアでキャビアの話題抜きにチョウザメが紹介されるのは,まぁ,あまりない.
飼育条件もなかなか一般家庭では満たしにくいので,魚体の馴染みの低さに拍車がかかる.

そんなわけで,今回はチョウザメに焦点を当ててみた.

チョウザメはサメやらエイやらが属する軟骨魚類ではなく,‘普通の魚’が属する硬骨魚類である.
厳密には,硬骨魚類の中でも,‘ホントーにフツーの魚’である真骨類というグループではなく,軟質類というグループに含まれている.
熱帯魚好きの間で,いわゆる‘古代魚’と呼ばれるカテゴリーの一員と言えば良いか・・・しかし,‘真骨類’よりも古いのは確かなのだが,どうも‘古代魚グループ内’での類縁関係がしっくりこないようで,文献を漁っていると,ちょこちょこ更新されている.

さて.
とりあえず実物を出さにゃあ話は始まらんということで,チョウザメの養殖場から血抜きしただけのチョウザメを注文(※本当は鰓や内臓を抜いたものを送ってくれる).
小型の個体を注文したとはいえ,80センチ近くあり,明らかに一般家庭向けではないサイズの発泡スチロールが届く.

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図2.届いた箱(葉書と比較)


今回購入したのは,アムールチョウザメ.
小型の個体を注文したとはいえ,80センチ近くあり,明らかに一般家庭向けではないサイズの発泡スチロールが届く.

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図3.アムールチョウザメ(a;側面,b;腹面,c;背面,スケールは10cm)


水族館では何度も見たことがあるが,目の前で今まさに捌かれんとするチョウザメは始めて.
確かにサメを冠したくなる気持ちは分かる.
全体的な形状もさることながら,尾鰭(おびれ)の形が明らかに通常の魚ではなく,サメのそれである.

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図4.尾鰭の比較(a;アムールチョウザメ,b;ドチザメ,c;シイラ)


一瞬現在の魚類学を疑いそうになるが,確かに細部は違う.
まず,顔面.
よく見ると口に歯がない(図5a).
また,鼻の下に4本のヒゲがある(図5b).

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図5.アムールチョウザメの顔面とヒゲ(a;腹面より,b;左斜め前方より)


加えて,口が伸びる.

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図6.アムールチョウザメの口(a;収縮時,b;伸長時)


さらにエラブタもある.
サメの仲間はエラブタを持たず,5〜7本のスリットから水が抜けていくのである.

次いで胴体.
鮫肌と言われるように,サメはトゲ状の鱗(うろこ)を持つが,チョウザメにはそれがない.
代わりに,魚話その136 で紹介したガーの鱗と同質の,ガノイン鱗と呼ばれる硬質の鱗を持つ.
ただし,ガーと異なり,鱗は全身を覆っていない.
余談だが,この体表面に広がる鱗こそチョウザメを‘蝶鮫’たらしめている.

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図7.チョウザメの鱗(a;全身における鱗の分布,b;上図の内の拡大図,c;鱗,スケールは5mm)


じ〜っと見ていると,なんとなく蝶の形に見えないだろうか?
鱗だけ取りだしてみると,確かにガーの鱗にそっくりだ.
ちなみにこれ,刀剣類の装飾にも使われており,菊綴(きくとじ)と呼ばれている.
房飾りにも‘菊綴’があるが,どういう課程を経て同じ名前で呼ばれるようになったのかは,ちょっと調べきれなかった.
まぁ,引っ張りたいところだが,チョウザメがサメとは違いそうだというネタを,なんとなく消化したところで,今回は終了.

次回,そのお味に迫る!?



今日の魚
コチョウザメ(Acipenser rutbenus
シイラ(Coryphaena hippura
ドチザメ(Triakis scyllium
アムールチョウザメ(Acipenser kikuchii
ベルーガ(Huso huso
マトウダイ(Zeus faber


参考文献
古代魚を飼う (小寺春人 他 マリン企画)第1版 P68-69
図説魚と貝の事典 (望月賢一 柏書房)第1版 P256-257

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2009年03月20日

魚話その152 ぶろっほっほっほ(後編)

●左向きであること


ようやく最後.
だいぶん空いてしまい,気付けば,5回分くらいのネタの取材が済んでしまった.
まずはウェブ上で見つけた『魚図鑑に左向きが多い理由』なぞ.

理由1.最初の本格的な魚図鑑(Blochの図鑑)が左向きだった
…お手本図鑑として重宝され,皆がそれに倣ったという説らしい.

理由2.文字の記述方向に合わせた
…記述方向に頭を向けると,『流れ』を感じさせることができ,日本は(縦書きだと)右→左へ書くので頭が左になる.

理由3.本の綴じ方にあわせた
…理由2同様に和書は右綴じが多いので,頭が左側だとページ進行に沿っていて『流れ』を感じさせることが出来る.

理由4.食事の盛り付けが左向きだから
…日本の魚は基本的に左向きであり,それに合わせると違和感がない.

理由5.右利きの人は頭を左から描く方が楽
…最初に大事な部分(=頭)を描き,その後細かいパーツが無い体へと流れるその動きには,右利きの場合,左から書き上げていく方が楽という説.

理由6.心臓の位置が左寄りだから
…心臓が左に寄っているので,左側面を解剖した方が観察しやすい.

この6つが有名どころか.
いずれも『ああなるほど…』とうなずける説明ではあるが,実際は,図鑑の左向きは日本だけではない.
しかも現在よりも西洋の文献が浸透していないであろう江戸時代の書籍を見ても右向き描写が存在したり,欧米系の書籍における左向きの説明ができない.


栗氏魚譜2.jpg
図1.左向きに描かれた,江戸時代の魚図鑑(栗氏魚譜;クリックすると拡大)


栗氏魚譜1.jpg
図2.同じ図鑑の中で右向きに描かれている魚(クリックすると拡大)


さらに,数えるほどの魚種しか調べてないのでそんなに大きなことは言えないが,魚類の心臓は、『明らかな左寄り』と言うよりは正中線に沿っている気がする.
図3は夕食のために捌いていた魚を撮影したものだが,苦手な人は注意されたし.
もっとも,心房・心室がそれぞれ左右にずれている種もいるので,それを踏まえてのことだろうか?
ただし,心臓をひとかたまりとして見れば,やはり真ん中にあると言えそうだが….


心臓の位置.jpg
図3.腹側から見た心臓の位置(a.ワカサギ,b.ウナギ,c.キチジ;スケールバーは5mm;クリックすると拡大)


状況はそんなに単純ではなさそうだ.

魚の向きと実生活を考えてみる.
食生活や利き手など,生活習慣のような直接図鑑制作に関係がない部分に刷り込まれている可能性は高い.
ナイフとフォークを使う場合も箸を使う場合も,魚を押さえつけるのは利き手と逆側であり,裏返すにしても押さえつけるにしても,胴体と密にくっついている頭の方が,尻尾よりもしっかりと掴みやすい.
右利き人口は5倍近く多いとされており,(家庭料理レベルで)盛り付け方向に決まったルールが無い場合,尾頭付きの魚は頭を左向きにしておいた方が無難ではなかろうか.
また,右利きの人間が筆を左から右へ動かすことは,描いた部分を手で擦る頻度が低くなり,イラストが汚れるのを防ぐことが出来るので合理的だ.
まぁこんな感じの経験が著者に影響を与えた可能性はないだろうか.
もっとも,どっち向きで描いても良いという状況になった時に,『じゃあ…左向きかなぁ…』程度の効果しか想定していないが.

ところで,情報量の多い文章は複数の人間が分担して執筆することが多く,そのような場合文体やら描画方法など,きちっと決めてしまった方が楽だ.
窮屈に感じるかもしれないが,細かいことまで理に適った体裁で決まっていればいるほど,赤の他人と共同作業を行う際には余計な混乱を避けることができるのである.
新たな図鑑を刊行する際にも,ゼロから考え直すよりは,先達の体裁に倣った方が楽なのは明らかだ.

そんなわけで,図鑑左向き多数派の背景は,偶然引用に用いられた図鑑が左向きに偏り,大量情報掲載に伴う体裁の画一化によって,偏りに拍車がかかったのではないだろうか・・・と僕は考えている.
兎に角,様々な時代・場所で,独立に図鑑が作成されていくことを考えれば,左向きに偏る理由は,冒頭の理由を始め,『イラストが綺麗』『記述が正確』『情報量が多い』等々,いろいろあるのだろう.
ウェブ上で論じられているように,一つの理由だけで説明しきれるとは思えない.

とりあえずお茶を濁すような感じであるが,150回記念に纏わる左向き優勢ネタはこれで一時完結とする.
将来的に,左右混合図鑑に関する考察もするかもしれないが,具体的な時期は未定だ.


※今回使用した図1と図2は国立国会図書館に使用申請し,許可を得ています.
無断複写はマズいので,必要な人は各自国会図書館に申請してください.



参考文献
※左右チェック以外に使用した文献
魚類解剖学 (落合 明,緑書房)第1版,p137-140
観賞魚解剖図鑑 (落合 明 他,緑書房)第1版,p41-90
新版 魚類生理学概論 (田村 保 他,恒星社厚生閣)第1版,p58
※左右チェックに使用した文献→SUPPLY.pdf


参照ウェブサイト
『大分週間釣り太カ』→参照先
『木下眞二のホームページ』→参照先
『足利工業大学 中山研究室ホームページ』→参照先
『Dolphin Blog』→参照先
『Yahoo!知恵袋』→参照先
『ヤッちゃんパパ奮闘記』→参照先
posted by osakana at 23:36| 埼玉 晴れ| Comment(5) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月06日

魚話その151 ぶろっほっほっほ(中編)

●左右混合の魚図鑑


まず前回の結果の解釈から.
左向き優勢と書いたが,実際は左右混合も多い.

ある方向から逆の方向へ変化する過渡期…とは考えにくい.
例えば,引用した図が逆向きだったり,互い違いに入れて省スペースを図ったり(カラー図鑑は費用がかかるが,高額すぎると一般向けでなくなる),片側が傷ついて標本写真には不適だったり,希少すぎて満足な写真が撮れなかったり…その他編者の目論見によるものだろう.
スペースの関係上前回触れなかったのだが,例えば『左ページの魚は右向き,右ページの魚は左向き』,『1種で2枚の図を載せ,左側面は白黒イラスト,右側面は写真』,『とにかく左右関係なしに詰め込んだ』タイプなどなど,実際には左右の混ざりっぷりにもいくつかあった.
また,特殊な例として,『王余魚図彙』のような江戸時代に描かれたカレイとヒラメの図鑑も自然と左右混合になる.


王余魚図彙.jpg

図1.左右混合図鑑の特殊な例(王余魚図彙)クリックすると拡大


また,ざっと見て,写真を多用したもので左右混合が多めだったように感じたが,スケッチと違って記録の難易度が変わらないからだろうか.
もちろん貴重なシャッターチャンスはどんな方向からやってくるかわからないというのもあるだろうが.
とにかく,自然界での様子を示す生態図鑑のように,『背景』が含まれている写真には,左右不問のものが多かった.

しかし,そこまで強調するほど,左右が統一されていることにメリットはあるのだろうか?
図鑑は種類の特定という役割を持っているのは周知の事実である.
『ものすごく似ているのだけれど,ビミョ〜に他と違う特徴がある…』そんな微妙な見分けの際に,図鑑に掲載されている方向がバラバラだと,その都度頭の中で左右反転しなければならない.
『魚が好きな人なら苦痛ではないんじゃ?』と思うかもしれないが,それを仕事にしている人にとっては,大量の情報を扱うこともあり,余計な作業はしない方が楽だし,ミスする可能性も減るだろう.
下図は適当に描いた想像上の魚の図鑑で,シチュエーションを変えて描いてみた.
どちらが種類の特定をしやすいだろうか?


左右混合事例.jpg
図2.図鑑の表示例(A:左右混合の場合,B:方向が統一されている場合).
クリックすると拡大


もっとも,見分けるのが難しいグループ内での方向は統一し,グループ間では左右混合しても支障が小さいわけだ.
例えば,ウナギやアナゴなどは左向き,マダイや●●ダイなどは右向き,トラフグと▲▲フグは…そんな構成にしても大きな問題は出ないだろう.

ちなみに古い魚図鑑(おそらく富裕層や学識者向けだろう)にも上下左右混合モノはあり,『分かる人』や『見て楽しむ』人にとって,方向の統一はさほど重要ではなさそうだ.


梅園魚品図正.jpg

図3.左右向きどちらでもない例(梅園魚品図正)クリックすると拡大


冒頭でも書いたように,左右混合図鑑は分類法も含め,僕の中で未整理のデータがごまんとあるので,今回の特集とは別に,再分析に挑戦する予定だ.

さて本題.
『魚図鑑はなぜ左向きか?』というテーマは,いくつかのサイトで考察されているので,次回はそれらの紹介から(まだ引っ張る).


※今回使用した図のうち,図1と3は国立国会図書館に使用を申請し,許可を得ています.
無断複写はマズいので,必要な人は各自国会図書館に申請してください.
posted by osakana at 03:48| 埼玉 曇り| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月12日

魚話その150 ぶろっほっほっほ(前編)

●魚本の方向


飽きっぽい僕が(こういうのをやっている人の枕詞…?)よくまぁ150回も続いたもんだ.
今回から,150回記念と称し,3回に渡った小ネタでもやろうかと思っている.
とはいえ,別に大したことをしているわけではないので,なんか最近テレビもつまらんし,休日の夜は気分も憂鬱だし…なんて思っている人の暇つぶしにでもなってくれれば幸いである.

では…

イマドキの魚の図鑑は,魚の特徴を示すため,生態が分かるようにするため,水中で生活している時の色合いを出すという目論見に応じた水中写真や水槽撮影も珍しくないが,それでもやはり図鑑の多くは背景無しで魚の写真やイラストを陳列しており,形態やその他の説明を行なっている.
『この魚はなんじゃろな?』が目的の書物なのだから,整然とした陳列は便利なのだろう.
また,上記の『なんじゃろな?』に特化した(種同定)専門書では写真よりも線画で表現されることも多い.

ところで,魚図鑑を眺めていると,特にイラスト系の図鑑において左向きのものが多くないだろうか?

一説には,『ドイツの物理学者であり魚類学者でもあったMarcus Elieser Bloch [1723 - 1799]という人物が美麗な図版を出版し,皆がそれに倣った』という説が有力視されている.
しかも『右側を解剖して観察し,無傷の左側をスケッチに使った』という逸話付きだ.
当初それで納得していたのだが,魚本好きな僕はどうしても元祖とされるBlochの図鑑を見てみたくなり,先日Bloch's Atlas [Allgemeine Naturgeschichte Der Fische](復刻版)を入手した.
しかし,僕のBlochの魚図鑑はことごとく右向きなのである.
これはひょっとして,国外の図鑑も視野に入れた方が良いんじゃあなかろうか?
と言うわけで,自宅の本棚他,手近なところを調べてみたところ,左向きもしくは左右混合が圧倒的に多く,右向き優勢の魚図鑑は圧倒的に少ないことが分かった(条件は最後に記した).


asia oceania.jpg
図1.アジア・オセアニアの図鑑における魚の方向(クリックすると拡大)


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図2.南北アメリカの図鑑における魚の方向(クリックすると拡大)


europe and africa.jpg
図3.ヨーロッパ・アフリカの図鑑における魚の方向(クリックすると拡大)


もちろん少数しか調べられなかった国もあるので,実際に検証できるのは数カ国だとは思う….
ところで,先のBlochの図鑑が右向きだった件であるが,最初は何らかの意図で編集され,左右反転された可能性も考えた.
しかし,文字は反転しておらず,しかも背景は不均一なベージュ(いわゆる古紙色)なので,繊維の模様まで誤魔化して反転する意義を感じない.
また,カレイやヒラメではなく,普通の体型の魚もごく稀に左向きになっているので,やはり方向統一のための編集が行なわれたとは考えにくい.
当時の印刷方法(銅版画と同じ原理だと思われる)を考慮しても,さすがに文章をイラスト中に挿入することや,学術目的の書籍を出版することを考えれば,左右反転くらいは意識しそうである.
すなわち,Blochは右向きの魚図鑑を出版していた可能性が高いのである.
『Blochの魚類図鑑が現在の魚図鑑の体裁を作ったってさっき書いたんじゃない?』というツッコミはごもっとも.
確かにBlochの魚図鑑は大量の詳細美麗な図と,記述的な文章の組み合わせで,現在の専門的な図鑑の体裁を擁している.
しかし,もしもBlochの図鑑を『元祖』とするなら,魚の方向という項目は含まれていないのではないだろうか?
まあいずれにせよ,左向き優勢な魚図鑑が多そうだ.
次回はその背景について,アレコレ調べたり考えたことを書いてみようかと思う(ちょっと引っ張る).




魚の方向に関しては,いくつか条件を設けた.
a) ジャンル…図鑑と読み物を,それぞれ『一般向け』と『専門書』に分類する
b) 国…例えば日本で編集された『アメリカの魚』は,日本の本として考える
c) 時代…国によって印刷技術の進歩状況が異なるので,出版された世紀で分ける
d) 方向…カレイ・ヒラメ以外の魚で判断し,9割以上を『●向き』,それ未満を『左右混合』とする
e) 上向き(エイに多い)はカウントしない
f) 冊数…続巻モノは1冊として考える


参考文献
ちょっと多すぎるので,本企画終了時に一覧を掲載します.
posted by osakana at 02:24| 埼玉 曇り| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月04日

魚話その149 綺麗な指のお姉さんは好きですか?

●シラウオ


正月特番で特に面白い番組もなく,ダラダラとパソコンの前でネットをやってませんか?
そんなあなたのための,お目汚しブログ.
本日はちょっと長めの記事を更新である…

私用で小魚が必要になり,季節と価格,サイズを兼ねたワカサギを購入することになった.
ふと中身を見ると,何か白っぽくて細いものが混じりこんでいる.


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図.1ワカサギのパック


一瞬虫かと思ったが,シラウオであった.


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図2.周辺の拡大


シラウオは海と河川を行き来していると考えられている.
どうもその行き来の間でワカサギ漁の季節とかぶるため,混獲されるのである.
ちなみに山上湖で冬季の穴釣りのイメージが強いワカサギだが,海に行ったり川に行ったりするのである.

シラウオは漢字で書くと白魚であり,白魚は『しろうお』とも読めちゃうのだが,シロウオ(漢字は”素魚”)というまったく別の魚もいるので,とても紛らわしい.
ここら辺はお魚ネタ系のお約束っぽいネタなので微妙なのだが,一応書いておこうか.
大雑把に分けると,シラウオはサケの仲間(サケ目シラウオ科),シロウオはハゼの仲間(ハゼ目シロウオ科)と図鑑では説明されている.


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図3.シラウオ(スケールは1cm)


渓流釣りに興味を持っている人ならば,特に話が通じやすいのだが,サケ科魚類と言えば,脂鰭(あぶらびれ)というイメージが強い.
しかし,脂鰭はカラシン(ネオンテトラとかピラニアのグループ)やナマズの仲間も持っているので,脂鰭がある=サケ目とは必ずしも言い切れないのだが,ただの一ブログが現在の分類学に殴り込みをかけたところで何も起きないし,反論する理由もないので,図鑑の記載に従うことにする.
とにかく,我らがシラウオたんも脂鰭を持っているのである(図4).


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図4.シラウオの脂鰭


そういえば,細くて色白な指のことを『白魚のような指』と言うことがあるが,これはシロウオではなくシラウオを指す.
どっちだっていいじゃないかと言うのはごもっとも.
だってシロウオだって透き通っていて小さくて,可憐なイメージはあるのだから.
僕にとってはどちらも身近ではないので,実はどうでもいいなぁと思ってしまうのである.

さて.
シラウオと聞いて徳川家康を思い浮かべる人もいるかもしれない.
鮮度命のシラウオは,大名行列すら無視しても良いというほど優遇され,産地直送で家康の下に運ばれたと言われている.
真偽が気になるところだが,ちょっと調べる余裕がなかったので,資料が見つかったら,また後日載せることにしよう.
話が逸れた.
とにかくシラウオが江戸へ直送されたのは,珍味もさることながら,背側から見ると頭に徳川の家紋が浮かぶためだという.


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図5.三つ葉葵の紋と背側から見たシラウオ頭部.a,bは倍率違い,cはbの高コントラスト画像(スケールは1mm).


図5のcに徳川家の家紋を時計回りに90度回転させたものを併載してみたが…まぁ言われてみれば,見えなくもない…か.
実際には脳が透けて見えているわけだが,よくもまぁ,あんな小さいところに紋を見出したものだ.
で,実はこの透明ヘッドが思いがけぬ効果をもたらした.
実は冒頭の『私用』と言うのは透明標本の自作のことなのだが,『もともと透明なシラウオで透明標本を作って何の意味があるのか?』というツッコミは一切考えないことにし,とりあえず作ってみたら,あら,びっくり.
結構綺麗に仕上がっちゃったのである.

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図6.シラウオの透明標本(スケールは2mm/クリックすると拡大画像)


で,ついでに頭の周辺を顕微鏡で観察していたら二度びっくり.
なんとまぁ,透明ヘッドは染まらない(≒骨のない)場所があったようで,中までスケスケ見えるのである.
そんな中にひと際輝くピンクの物体.
どうやら,耳石を上手いこと染めちゃったようなのである.
耳石とは,ものすごく乱暴な説明をすると,『頭の中にあって,分析すると魚の年齢とか棲んでいた環境が分かる便利なカルシウムの塊』とでも言おうか.


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図7.シラウオの耳石.a,b,cは倍率違い(スケールは1mm).


とにかく耳石といえば僕のブログでも『魚話その13』で紹介したし,そもそも魚類学などの教科書にもしょっちゅう出てくるので珍しいものではないが,考えてみれば,頭の中でどのように納まっているのかを外から覗けるなんてそうそうない.
普通の魚はたとえ透明標本にしても,頭蓋骨で覆われているので,赤い層に覆われてしまうのだ.
酔っ払って観察していたせいか知らないが,顕微鏡の視界の中で,一人花見気分になっていたのは事実である.
耳石は炭酸カルシウム,硬骨は燐酸カルシウムと成分が異なるのは調べれば分かるのだが,それが色の違いに関係しているのかは不明だ.
そんなわけで,江戸時代の人がスケスケヘッドから家紋を見出したように,現代の僕にもちょっとした花をプレゼントしてくれたようだ.


今日の魚
シラウオ(Salangichthys microdon)


参考文献
川と海を回遊する淡水魚―生活史と進化 (後藤 晃 他 東海大学出版会)
日本の淡水魚 (川那部 浩哉 他 山と渓谷社)
posted by osakana at 03:21| 埼玉 晴れ| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月01日

新年のご挨拶

usinosita4.jpg

あけましておめでとうございます.
今年もよろしくお願いします.

さて.
恒例のアクセス解析公開.
2005年の7月に開設(※1)してから3年半弱,そこそこアクセスも伸びてきました.


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グラフ1.アクセス解析の結果(クリックすると拡大)

更新数は月を追うごとに減っているにもかかわらず(※2),アクセスの増加は喜ばしい限りです.

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グラフ2.月別更新数(クリックすると拡大)


また,今回の集計をしていて,1ネタあたり1万円弱かかっていることも明らかになりました.
もちろんブログのためだけの出資ではなく,『完全に手持ちの資料・情報ゼロから始めた場合にかかる経費』として計算した結果ですが,もうちょっと社会に還元できるような内容も盛り込めたらと思っている次第です.


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グラフ3.出費の内訳(クリックすると拡大)

拙い文章にもかかわらず,2007年以降,水産試験場を始めとする研究・調査関連業界からの問い合わせ,NHKや出版社等からの打診,海外の研究所・博物館からの問い合わせメール等々が届くようになり(もちろん一般の魚好きの方々からもいただきます),おかげさまでネタのアップ時にはヒリヒリした気分でやっております.



最後に.
昨年も素人魂〜特濃魚汁〜をご贔屓いただきありがとうございました.
拙い文章で読みづらい場所も多々あると思われますが,今年も何卒よろしくお願いします.
シメるとこはシメないとね.

※1 もっと古い年代の記事もあるが,『別のブログで書いた記事を移植』もしくは『記事以外の用途(目次など)があるため,わざとアップの日時を外れた時期に設定し,管理人が探しやすいようにしてある』という背景がある.

※2 実際には複数のカテゴリーを始めたせいだが,今回の解析は魚話に限定した.

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2008年12月28日

魚話その148 続・スメリー・クリスマス

●シュールストレミングの成分など


さて,前回の続き.
意外に平気だったシュールストレミングのニオイだが,味は予想を超えるものであった.
トマトやらタマネギなどの食材をきちんと準備すれば美味いのだが,とにかくそれらを打ち消すほどに単品で食うと塩辛いのである.
塩辛さの主たる要因である食塩の濃度を,身近な魚類製品中の数値とともに示したのが表1である.


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表1.身近な魚類食品中の塩分濃度


驚いたことに,シュールストレミングは通常の食品よりも高い数値を示している.
確かにこれでは塩辛さが目立つわけである.
添え物として用意するトマトはナトリウム排出の促進も行なうと言われており,相性が良さそうだ(巷で噂のカリウム濃度は他の野菜とそんなに変わらない).
前回ベタ褒めしたタマネギの効用については未だ分からないのだが,とにかくタマネギ抜きでは塩味とにおいが目立つので,タマネギ中の何らかの成分が干渉しているはずである.
加えて,飲酒はアルコール分解に伴う利尿作用が起こり,同時に塩分を失う.
宴会の帰り道にラーメンが欲しくなるアノ現象は,生理的に合理的だったりするのである(ラーメン汁の脂肪分は良くないけれど).
順序は違えど,アルコール摂取で失う分位はシュールストレミングから補充できているんじゃなかろうか.
ただし,ビールやサワーなどの炭酸飲料はゲップが出る.
すると,胃からのニオイがこみ上げてくるので,酒が苦手な人は,むしろ炭酸系の弱い酒を飲むよりは牛乳などを飲めば良いとされている.
というわけで,シュールストレミングで準備する酒や野菜の類は非常に合理的な品々であった.

そうだ.
テレビに登場するシュールストレミングは,膨れ上がった缶が紹介されることが多い.
要は非加熱殺菌の缶だから,嫌気状態を好む細菌が増殖して,ガスを発生させることにより,缶がパンパンになるのである.
しかし,現地ならいざ知らず,少なくとも国内の輸入店から購入した段階では膨らんでおらず,しかも,指示通り冷蔵庫で保管すれば,賞味期限ギリギリになっても,ほとんど変形は見られなかった.
確かにテレビでインパクトを与えるには効果的なのだろうが,暖かい場所で保管するなど,意図的に細菌活動を活発にしない限り,パンパンになることはなさそうだ.
ただし,缶が破裂するということはあるようで,飛行機持ち込みが禁止されている理由の一つなのだろう.
破裂よりも中身の飛散を考慮してのことだと思うが.

ちなみにシュールストレミングの枕詞として『世界一臭い缶詰』やら『世界一臭い食品』が使われることがあるが,ギネスブックには記載されていない.
発酵食品の大家,東京農業大学の小泉武夫教授が臭度測定器で測定したところ,表2のような数値を得たという報告もあるが,臭度計は硫化水素(温泉とか卵の腐ったようなニオイ)などの硫化物の測定が得意なようだ.


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表2.様々な食品の臭度


もちろん製品により異なるのだろうが,『臭さ』を感じるには,臭度測定器で測れる数字以外の要素もあるということか.
興味深いことに,『ふなずしは食べられないけれど,シュールストレミングは平気』と言う人も意外といる.
これもまた,表2には出てこない要素によるものではないだろうか?

そういえばニンニク料理の後は口臭を気にする人がいる.
シュールストレミングの場合,翌日のオナラと便もシュール臭がする.
明朝布団の中でオナラをした日にゃあ…
お粗末!


引用文献
魚の発酵食品 (藤井 健夫 ベルソーブックス)第1版 P107-112
五訂日本食品成分表 (食品成分研究調査会 医歯薬出版株式会社)P136-189
海洋生物の機能 (竹井祥郎 他 東海大学出版会) 第1版
posted by osakana at 04:02| 埼玉 晴れ| Comment(1) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月26日

魚話その147 スメリー・クリスマス!(Smelly Christmas)

●シュールストレミング


注意!
臭いへの耐性は個人差があるので,僕の感想を完全には鵜呑みにしないでください.


僕が高校生の頃,生物の教科書の最初の方に,生物現象の一例として,発酵と腐敗の記述があった.
前者は人間にとって有用なモノ,後者はその逆を作り出す現象で,微生物による現象であることが,様々な実験によって証明されていくわけである.
で,この発酵と腐敗,見分ける初めの一歩として,においをスンスン嗅いでみることが多い.
舐めるよりはリスクが少ないからだろう.
一般的に,変な/不快な/嫌なにおいがしたら,腐敗の可能性が高い.
しかし,世の中には,腐敗のカテゴリーに入りそうなにおいを持っているにもかかわらず,れっきとした食材がある.
それが,かねてからアナウンスしてきたスウェーデンの秘宝こと,シュールストレミング(Surströmming文字化けしてたら…)である.
今のご時世,『世界一臭い缶詰はシュールストレミングである』という情報を持つことはたやすいが,『じゃあ,どれだけ臭いの?どう臭いの?味はどうなの?』と言う質問に答える人が何人いるのだろうか?
せっかくの魚ネタなのだし,こういうのは実際にやってみないと好奇心が抑えられないのである.
伝聞情報を書くだけなら誰でもできるが,やはり実体験した方が,内容に信憑性が出ると思うのだ.

ただ,別にクリスマスでなくても良いんでねぇかと言う突っ込みはごもっとも.
しかし,賞味期限と言うものが存在し,2008年の12月31日なのである.
早く食さねば,秘宝がゴミになってしまう.


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図1.シュールストレミング(2007年購入モノ)


賞味期限的にそろそろ危ないと言うこと保存方法によっては,開缶したらドロドロに溶けていたという情報もあり,念のため,今秋発売モノも購入してみた.
いろんな人を招いておきながら,とろけて食べる場所が残ってないというのは,さすがに虚しいので.


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図2.シュールストレミング(2008年購入モノ)


周囲に飛び散るとことを考え,大きめの透明ゴミ袋に缶と缶切りを入れ,袋の外からキリキリと開封.
水の中でなくとも,雨合羽を使わなくとも,普通に開封できるのである.


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図3.シュールストレミングの中身(2007年購入モノ)


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図4.シュールストレミングの中身(2008年購入モノ)


寒かったせいか,臭いは思ったほどきつくなく,腐ったドブのような臭いという表現がしっくりくるものの,たとえば,酢のボトルを直嗅ぎした時のようなパンチ力は無く,『嗅ぐ→卒倒・嘔吐』という感じでも無かった.
僕が釣りで腐った水域の香りを嗅ぎ慣れているからなのか,変わったなれずしを食べたりしているせいなのか,ホネ取りで腐敗した魚を扱っているからかは分からないが,『超悪臭』の範疇に入らないと言うのが正直な感想だ.
さて.
『とにかくタマネギを用意すべし』というウェブサイトが多かったのでそれに従い,大量のタマネギスライスとマッシュポテト,トマト,クラッカーを準備し,オープンサンド形式でいざ実食.


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図5.シュールストレミングのオープンサンド


確かに臭いは少々きついが,それ以上に塩辛さが目立つ.
単体で食べると,確かに臭いと塩辛さで『うっ!』とくるのだが,タマネギを添えることで,相当マイルドになり,美味しい.
ただし,会社の違いよりは,保存期間の違いによる熟成だと思うのだが,確かに賞味期限間際のシュールストレミングの方が,風味がきつく,噛み続けても口内に臭いが残る感じであった.

さて,まじめに.
シュールストレミングは,塩蔵したニシンを,加熱殺菌しないまま保存することで,機密性の高い缶内で発酵が起こり,独特の風味が産まれるというスウェーデンの調理品である.
Haloanaerobium alcaliphilumTetragenococcus muriaticusなどと呼ばれる嫌気性細菌の仲間が発酵に関与していると考えられており,悪臭物質としては,プロピオン酸(刺激臭),硫化水素(腐卵臭),酪酸(腐ったバターのような臭い),酢酸(酸っぱい臭い)などが挙げられている.
装置の関係上,塩分濃度を測ることはできなかったが,pHは6前後と,中性付近の値を示した.


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図6,新旧シュールストレミングのpH


最後に.
今回は2年分のシュールストレミングを食べたわけだが,僕の率直な感想は『塩辛いが,結構旨い』と言うものであった.
ただ,意外と準備が面倒なので,あれば食べるけれど,何が何でも入手して食べたいと言うレベルの旨さではないことも足しておく.
また,味覚や嗅覚には個人差があること,周囲に迷惑がかかりうるので,十分な注意が必要だ.


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図7.空き缶



今日の魚
ニシン(Clupea sp.)


参考文献
魚の発酵食品 (藤井 健夫 ベルソーブックス)第1版 P107-112
川口貿易(シュールストレミング販売会社)ウェブサイト

posted by osakana at 04:57| 埼玉 晴れ| Comment(3) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする