2011年10月11日

【予定は】予告【未定】

ホネホネサミット2011に関わった皆様,お疲れ様でした.

最近某所で起きた事件を配慮し,資料の一般配布を控えておりましたが,当方のブースに来て頂いた方に何かできないかと思い(ついでに当たり障りのない部分の供養もしたい)魚話に何話か連続掲載したいと思います.
せっかく知り合った方が私の名刺を見てブログに来ていただいたのに,8月から更新されていないのもみっともないので.
しかし,過去の魚話の更新履歴を見て頂ければ分かる通り,極度の遅筆で更新がいつになるか分かりません.
とりあえず1つだけでも本日24時までににアップしたいものです.
お,何かのフラグが立ちました.
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2011年10月12日

魚話番外編 ホネホネサミット配付資料供養企画〜序〜

ホネホネサミット2011にてブース参加&講演を行なってきた.
実は骨格標本のHow to本を配布する予定だったが,学生が『混ぜるな危険系薬品』を混ぜて有毒ガスを発生させた事件が生じたため,配布を自粛し,博物館や水族館関係者など,設備が整っている場合に限って配布した.
しかし,できるだけ読みやすいように『項目は見開きで完結させ,ページをまたがない』『言葉を極力改行で分断しない』等のルールを設けて書いたので,微妙に心残りもあったりする.
そこで,資料の供養も兼ね,安全そうなパートに関しては加筆修正しつつ掲載していくことにした.

興味・訂正・より素敵なネタがあれば,是非ともメールにご一報願います.
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魚話その185 もめない程度に撮りたいな Phase 2

● 小さな骨格標本のマクロ撮影法


供養初回は撮影に関して.
ホネ取り以上に日が浅いのでここで触れるのは畏れ多いのだが,本サミット参加のための撮影を機に使ってみて当たりだった商品を紹介.
一つ目は照明.
小さい骨格標本はマクロ撮影が不可欠だが,光学的な問題やカメラ本体の陰により,かなり暗くなってしまう.
マクロ撮影はカメラと被写体が近いことが多いので,フラッシュや卓上スタンドは使いづらい.
また,観察に適切な明るさにするためには絞りを開くか,ISO感度を上げるか,編集で加工するかのいずれかを選ぶが,いずれもやり過ぎるとノイズまみれになってしまう(実例は魚話その177).
そこで便利なのがリングライト(図1).
通常の照明と異なり,レンズが照明の中央に来るので,カメラ自体の影をどこにも作らずに撮影ができるのだ.
ワンフェスなどのフィギュアイベントではこのテの機材を持った『おっきなおともだち』をよく見かけるが,骨格標本系のイベントでは余り見かけない.
数万円する純正品と異なり,GODOX製などサードパーティー製は数千円で購入できるので,お勧めだ.


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図1.リングライト a)リングライト一式,b)SONY製ミラーレス一眼NEX-5 + Tamron SP AF60mm F/2 Di II LD [IF] MACROに装着,c)Canon製コンデジPowershot G10に装着 NEXはホットシューがないので,シューブラケットを使用.Powershotはレンズメイト製アダプターを使用.


2つ目は撮影環境.
ホネの撮影で一番簡単なのは机の上に置いてしまうことだが,その骨格の特徴を最も表している角度を写せるとは限らない.
また,ホネは白っぽいことが多く,暗い色を背景にした方が見やすいのだが,背景とホネが近いと背景の模様が写り込んでしまうことがある.
そこで段ボール箱と黒い布を用意し,ブースを作る(図2a).
こうすることで,ホネの背景が真っ黒で,かつ,被写体から離れているため模様が写り込まず,真っ黒い舞台を用意することができる.
サイズの関係で床置きしなければならない場合も,黒い布を敷き,小さな土台を使ってホネを少し浮かせてやると,模様なしの真っ黒い背景になる.
さらに黒い粘着式の綿棒と洗濯ばさみで撮影台を作った(図2b).
粘着ゲルが凹凸にフィットし,きちんとバランスを取れば,そこそこ大きなホネまで支えることができる.
しかも綿棒が黒っぽいおかげでホネ撮影の邪魔にならないのだ.


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図2.撮影セット a)撮影ブース,b)撮影台,c)撮影の様子


最後は編集ソフト.
骨格標本のように起伏に富んだ立体物のマクロ撮影を行うと,被写界深度が足りず手前もしくは奥がボケることがある.
特にコンデジと異なりデジタル一眼はセンサーサイズが大きいせいで,画質が良い反面,被写界深度が浅い(ボケやすい)という弱点がある.
芸術作品ならばボケも表現手法の一つになるが,科学情報としてのボケは時として邪魔になる.
研究室や手元にCS4以降のPhotoshopがある人はその中にある『被写界深度の拡張』機能を使用すると便利だ(図3).
この辺りは魚話その169に書いたので,参照して欲しい.


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図3.『被写界深度の拡張』の実例(メダカ頭骨) a〜e)手前から奥にフォーカスをずらして撮影,f)写真を合成 詳細は魚話その169に.スケールバーは1mm.


ちなみに『そんなのデジタル一眼を持ってないと意味ないじゃない』『買えば全部解決って言いたいんだろ?』とツッコマれるかもしれないが,ブックエンドと本でこの通り(図4).
画像編集だって高価なAdobeのソフトが無いからできない訳ではなく,GIMP,Combine ZMやImage J等のフリーソフトで画像編集や被写界深度の拡張合成を行うことは可能だ.
要は工夫と情報収集にどれだけ労力を割くかに依るところが大きい.


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図4.リングライト使用の一例 使用デジカメはIXY Digital 500.a)ブックエンド,b)装着例(側面),c)正面 このデジカメにはホットシューもレンズアダプターも付いていないが,工夫次第でいくらでも使用可能だ.


冒頭で事故が起こらなそうとは書いたが,今回のネタだって充電中に感電するかもしれない.
『まぁそこまでは気にするなよ』と考えてくれる人だけ読んでくれれば良いと思っている.


本日の魚
メダカ Oryzias latipes (Temminck et Schlegel, 1846)

参考文献
Combine ZMの使い方(丸山宗利 研究室HP)→リンク
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2011年10月13日

魚話その186 軟骨と硬骨のあいだ rot

●軟骨魚類の石灰化


供養企画第二弾かつ,約10ヶ月ぶりの続編.
軟骨魚類といえば,雑学系書籍に『全身が軟骨だから,大型のサメでも包丁で切れるほど』といった文章が掲載されることがある.
確かに我々が認識する,リン酸カルシウムで構成される『硬骨』は持たない.
ところが,軟骨魚類も石灰化した(=カルシウムが沈着した)パーツを持っている.
どう表現したらよいか…
図1に記したような,硬骨の間に軟骨が挟まるというのが,我々の‘硬骨/軟骨観’ではなかろうか.


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図1.関節の模式図


ところが,軟骨魚類の背骨部分のそれは,軟骨の内側が石灰化している.
魚類関係の教科書にも掲載されているのだが,意外と図版は少なく,カラーの画像はさらに少ない.
そこでこの際自分で撮影してしまえ!ということで,サメの骨格を調べることにした.
イタズラ好きな僕としては,このテの,常識とちょっとズレたネタを準備している時が一番楽しいのである.

さて.
長い前置きはここまでにして,手元にあったドチザメの背骨を用い,染色してみた.
用いた染色液や原理は最近流行の透明標本とまったく同じ.
要はスライスした脊柱をアルシアンブルーとアリザリンレッドで染め分けただけ.
薬品のくわしい話は魚話その**に書いたとおりだ.

早速結果を見てみよう.


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図2.ドチザメ脊椎骨の染色標本 a)未処理の脊椎骨,b)アリザリンレッドおよびアルシアンブルーによる染色.aに振った番号とbの切断方法と合わせてある.bの一部が崩れているのは,薬品処理中に撮影し,分解が進んだため


赤く染色された部分,すなわち石灰化部分のパターンはかつてサメの分類にも用いられていたようだが,『複雑なので今はあまり行なわれていない』ともある….
断面によってパターンが変わるので,どこをどう切るかの統一やデータの検索も難しいのだろう.

別の用途もある.
この断面に注目して欲しい.
筋のようなものが見えないだろうか?
おそらくこれは年輪と思われる.
実際に検証した訳ではないので鵜呑みは厳禁だが,X線写真で浮かび上がる軟骨魚類の年齢査定のパターンとよく似ている.
耳石や鱗など,硬骨魚類では年齢を査定できるパーツはいくつもあるが,軟骨魚類の場合は硬いパーツが限られている.
ツノザメの仲間など,背びれに棘を持つサメではその模様にも年齢とリンクしたリングが現れるが,棘を持たないサメのことを加味すると,脊柱の方が汎用性は高そうだ.
ただし,棘の場合はサンプリング後に放流できるので,一長一短ではある.


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図3.アリザリンレッド染色により浮かび上がった筋模様 a)未処理の脊椎骨,b)アリザリンレッドおよびアルシアンブルーによる染色,c)図3b点線部分の拡大写真.aに振った番号とbの切断方法と合わせてある.年輪とおぼしき部分を矢印で示した.



注意点を一つ.
他にふさわしい言葉が思いつかなかったので『年輪』と書いたが,1年で1つ筋が入るかが不明である.
仮に鱗や耳石などと同じであれば,最初の年にどのタイミングで冬眠を挟むか等々の条件で本数が変わる可能性がある.
また,削り過ぎによる年輪の消失や切削器具による傷と年輪を誤認することにより,年齢査定を誤る可能性があるので要注意だ.
とはいえ,何らかの周期で暦を示す形質ではありそうだ.

周囲がぼちぼち三十路を迎え,友人達も年齢をかなり気にし始めた.
僕は昔から年上に見られることが多く,ようやく年齢が追い付いてきたという気分なのだが,世間一般ではそうでもないらしい.
迂闊に年齢を尋ねることも憚られる昨今.
その点,魚の年齢は気軽に尋ねることができるので,非常に気が楽である.


本日の魚
ドチザメ Triakis scyllium Müller & Henle, 1839

参考文献
河川の生態学 補訂改装版(水野信彦 他,築地書館)
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旅モノその33 管理人のいちばん長いホネの日 その1 〜序〜

2011年1月2日,関東某所.
さるメンバーに招待され,ホネ三昧の新年を迎える.
その時に『いやぁ,ほねほねサミットがまたあったらゼヒとも参加したいですなぁ,ガハハ.』と,ほろ酔い気分で宣った記憶がある.

2011年2月,自宅.
アクアトトぎふで行われた『ホネホネ合宿IN岐阜』の参加(後に病欠)手続きを行っている一環でほねほねサミットがどうも行われるようなことを知る.

2011年7月24日,幕張メッセ.
ワンダーフェスティバル会場でGalvanicの骨オヤジ氏と会い,第2回ホネホネサミットこと,ほねほねサミット2011の開催が確実になったことを知る.

2011年8月上旬,自宅.
なにわホネホネ団のサイトでほねほねサミット2011の告知開始.

2011年8月30日,自宅.
締め切りぎりぎりでほねほねサミット2011に滑り込む.

2011年9月上旬,自宅.
具体的な展示ネタがようやく見つかる.

2011年9月中旬,自宅.
半ベソかきながら3時間睡眠で準備を進める.
晩酌しつつホネ取りとホネ撮りと書きモノをしていると,ホネホネ☆発表会の講演依頼が来る.

2011年10月上旬,自宅.
1日おきに完徹して準備の追い込み.

2011年10月7日,自宅.
サミット前夜.
最後の追い込み.


そして,ながいホネの日が始まる….
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2011年10月14日

旅モノその34 管理人のいちばん長いホネの日 その2 〜ホネとり物語〜

前回も書いたが,実は展示テーマが決まったのはサミットの1ヶ月前のことだ.

今回は個人出展で申請しており,素人魂というブログ(あんまり影響ないけれど)も伏せておいたため,来場者は完全に『無名の新顔』の展示を見ることになる.
そんな中で漠然と『魚のホネを取りました〜』と全身骨格を表示するだけではインパクトに欠けるし,時間がない.
そこで,テーマを絞って来場者に分かりやすい展示をすることにした.

魚の骨格といえば鯛のタイや耳石,脊椎骨なども考えられるが,来場者は魚好きという保証は全く無いため,却下.
そもそも魚に縁のない人にとっては,ホネ好きと言えどマニアックすぎる.


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ナマズの脊椎骨(上)とキンメダイの『鯛のタイ』(下)


そこで候補になったのは魚の顎.
魚の頭は見かける機会が多い割に,主上顎骨(唇っぽい部分)などに隠れて歯を見ることは少ない.


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アオメエソ(上)とアカアマダイ(下)


サイズによっては見づらいこともあるので,マクロ撮影した写真も掲載し,分類や餌などの各種情報も盛り込むことにした.
ついでにホネだけでは持ち主の形が分からないので,生体の写真も載せることにした.
いくつか隠しネタも仕込んだが,またいずれ触れることに.
全身骨格と異なり,展示物は小さくまとまってしまうため,また,来客が自分なりの視点で傾向を見出してストーリーを作れるよう,可能な限り展示数を増やしたい.

目標は100種類以上.
方向性が決まった段階で手元にあった骨格標本は20種類程度.
撮影や編集の時間も考えると,9月中旬には終わらせたい.


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この作業のおかげで食卓は床に変更


週末にまとめて処理するので,ペースはまちまちだったが,0時頃帰宅してから朝5時頃まで作業し,7時半頃に出勤準備という生活パターンが1ヶ月ほど続き,三十路を迎えた体にはなかなか堪えるものがあった.
『仕事暇なんでしょ?』とよく言われるが,半分は当たり,残り半分は上記の時間帯で作業しているので,何とかなっているのである.
徹夜に強い体で良かった.
もともと短眠だし(3〜4時間で目が覚めてしまう).

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血と涙と酒の結晶・・・


とまぁ自分の老体報告はさておき,ホネ取りが終了し,今度はホネ撮り.
実は組み立ててしまうと個別のパーツの撮影ができなくなるので,はじめにパーツ別の撮影を行った.
撮影したのは左右対称な魚の場合は左側の骨格4種の外側と内側.
レンズの関係で被写界深度が浅いため,三脚の雲台にフォーカシングレールを設置し,ピントを固定したカメラを1mmずつずらしながら撮影していく.
パーツ撮影が終わってから組み立てと完成品の撮影.
この段階で9000枚の写真データができたのだが,展示で使用するのは完成品の写真のみなので,今回は無縁のデータである.
結局完成品の撮影で3000枚が追加され,のべ12000枚の写真データとなった.
ちなみに写真データはJPEGではなくRAWなので,トータルで約200GBほどある.
ここからPhotoshop Lightroomで色調補正とJPEG出力→Photoshopで被写界深度の拡張とトリミング→Illustratorで資料のレイアウト作製となり,最終的に展示資料の総ファイル容量が300GBになってしまった.
なんだかカメラのシャッター耐久試験とPCのベンチマークテストをしている気分である.
サミットが終了した今だから落ち着いているが,当時は4TBある自宅の外付HDDが一気に埋まっていくのを見て,ヒヤヒヤしたものだ.


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展示写真の一例(A4サイズに2魚種で60枚弱)


実はこれと並行して約20ページの配布資料もIllustratorで作製しており,こちらも600MBにのぼり,ウェブ配布は断念.
自宅のレーザープリンターで地道に印刷し,約2000ページ刷ったのだが,ある事情により一般配布をやめた.
このままでは悔しかったので,身内用には業者に製本して配り,一般配布用はネタ供養のために魚話の『供養企画』に繋げることにしたのであった.
posted by osakana at 21:35| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅モノ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月15日

旅モノその35 管理人のいちばん長いホネの日 その3 〜ようじょとゴキブリホイホイ〜

2011年10月8日午前4時,自宅.
ようやく準備が終了し,梱包を開始である.

配布物や展示物の用意はすでに終わっていたのだが,実は9月半ばに講演依頼が来たので,そちらの準備もあったのだ.
主催者からの依頼とあっては断るわけにはいかない.
とは言うものの,無名の一個人が果たしてホネのプロに混じって,講演など可能なのか?
プレゼンは学会や仕事でちょくちょく行うので規模は気にならないのだが,いかんせん専門外の発表は今回が初めてだ.
一晩悩んだ結果,引き受けることにした.
魚の骨格標本に関するネタで,できれば一般的な内容は話さず,そこからさらに一歩発展した話題を目指すことにした.
発表は15分,長いようで案外短い.
きちんとネタを絞らないと発表の方向性が発散してしまい,全国からわざわざ来ている来聴者の貴重な時間を無駄にしてしまう.
そんなプレッシャーを背負いつつ,とにかく発表のスライドに使うイラストだけは完成させ,表示アニメーションや文章は移動中に作ってしまうことにした.
人によってやり方は異なるが,僕はイラスト多めで文字数を減らし,できるだけ直感的に分かるようなスライドにしたいので,イラストとストーリーラインを仕上げてしまえば,大体完成するのである.


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もともとのストーリーライン(文字だけの頃)


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イラストを入れた後はクリックごとにこんな感じでスライドが変わる


さて.
この日は参加者向けの企画があり,午前6時半の電車に乗らねばならない.
ふとキャンセルという言葉も頭をよぎったが,PCまみれの研究生活で,生物的イベントに飢えている友人のMさんがこの企画を心待ちにしていたので,裏切ってはいけないと思い,老体に鞭打って準備を進める.
なにしろイベントを手伝ってくれる貴重な友人のご機嫌を損ねる訳にはいかない.

それにしても,骨格標本の梱包が厄介である.
引っ越し経験者なら分かると思うが,壊れ物の運搬は非常に厄介なのだ.
今回用意したのは2cm角の木製台座に乗せた骨格標本で,100以上ある.
大きくても5cm程度であり,非常にデリケートなのだ.


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展示用の標本(これが100個以上と大きめの頭骨が20個弱)


トイレットペーパーで包もうとしたその刹那,頭に電流が走る.
ざわ…
  ざわ…
ようじょ※を使おう…
『魚話その180』で紹介した低粘着テープのことである.

紙箱にテープを貼り,丁寧に台座を貼付ける.
試しに振ってみると,ほとんど音がしない.
糊の耐久性は不明であったが,とりあえずこれで準備時間がかなり短縮される.
やはり必要は成功の母であった.


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移動用の手抜き梱包


こうして大量の荷物を持参して新幹線に乗り込み,大阪・長居駅に着いたのであった.
posted by osakana at 23:08| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅モノ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月16日

旅モノその36 管理人のいちばん長いホネの日 その4 〜偽詩庵大阪本店〜

未だホネホネサミット当日にならないこの旅モノ.
こういう話は当日までの話がいろいろあるんです…と自分に言い聞かせ,誰が読むんだか分からないマイナーブログの更新をせっせと続けるのである.

さて.
長居駅で下車し,運動公園をてくてく歩く.
秋空の下でジョギングする人と同じ道路を大量にホネを持った人間が共存するこの不思議な状況.



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参加者受付の案内1


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参加者受付の案内2

会場の大阪市立自然史博物館に入ると,すでに知り合いが到着しており,しばし談笑.
しばらくして友人Mさんも到着し,バックヤードツアー開始.



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バックヤードツアー御一行


水族館や博物館のバックヤードツアーには大抵参加するのだが,実は僕の職場もバックヤードツアーを行なったりするので,いろいろ学ぶ点があっておもしろい.
ただしここで問題が発生.
バックヤードツアーは標本保護のためカバン持ち込み禁止だったのだが,カメラにマクロレンズを付けたまま参加してしまった.
僕が使用しているマクロレンズは手ブレ防止がなく,中望遠の単焦点,絞りもピントも全てマニュアルで撮影するため,三脚固定で標本を撮るには良いが,ツアーなど頻繁に動き回る場所で様々なモノを撮るには不便なのである.
一言で言えば『マ・ズ・い』.
とは言え,なんとか頑張って撮影.



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なめし中の毛皮?


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カバの下顎


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液浸標本庫


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ザトウクジラの骨


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化石


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こういう表示を見ると安心する


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乾燥標本庫


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砂に埋めて大型標本を作製する場所


30分ほどの休憩を挟んで安全講習会.
サミット初日は参加者向けのイベントのみで,バックヤードツアーとカエルの骨格標本作製の研修なのである.
その研修に先立ち,安全衛生上の講義をするというのだ.
受ける側としては早く研修に移りたいところだが,不特定多数の人を研修に受け入れる立場になった場合,たぶん僕も講習をやるだろう.



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安全講習会


意識が幻想入りしつつおとなしく受講し,カエルの解体開始.



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解体前のウシガエル


ホネホネ団団長ニシマキさんの音頭で作業が進行していくものの,ホネマニア達が機械的にさっさと作業をするわけもなく,当然のようにアッチやコッチの観察で寄り道のオンパレード.
後から修正は可能なので,僕は作業を中断し,途中からMさんの手伝いに変更.



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ホネの乾燥用台座に固定する友人


彼女の自宅もラボも,そのテの設備がなく,可能な限り仕上げねばならないのである.
よく考えたら二人でカエル1体を引き受けた方が効率的であったが,申し込みの時点では全く思い付かなかった.
微妙に肉が残った状態で乾燥し,研修終了となった.
個人的には未完も心残りであったが,Galvanic氏の作業も見てみたかった.
彼の骨格標本がどのようにしてあそこまで仕上がっていくのか,興味深いところではあったのだけれど.

そんなこんなでヘロヘロになりつつ初日は終了.
すでに22時を回ってしまたっため,食事をすることもなく,解散となった.
一人ホテルに着き,近所のラーメン屋で夕食を済ませ,早速スライド作製を再会.
すると日付が変わる頃に,久しぶりの桃色吐息が.
確かに薄壁越しに楽しそうな声は聞こえてきたが…
この状況は2006年に学会参加でイギリスに行った時以来である.
こうして大阪の夜は更けていくのであった.
posted by osakana at 12:20| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅モノ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月19日

旅モノその37 管理人のいちばん長いホネの日 その5 〜素人魂 meets ホネ屋〜

昨夜のアクシデントも乗り越え,本日から一般公開である.
僕のブースはガラスケースを借りての展示なのだが,博物館の職員の人に天板を開けてもらわねばならないため,準備に少々難があるのだ.なにしろ1.4m×0.9mの展示専用1枚ガラスである.
弁償価格など,知りたくもない.
実は昨日もちょこちょこ準備をしていたのだが,何度もガラス板の移動は頼めないため,ある程度準備を済ませた状態で一気にケリを付けねばならない.

そんなこんなで準備が完了したのは公開の5分前.



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我がブース全体像


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メインのガラスケース


すぐ近くに自販機があるおかげで,朝食代わりのコーラを一杯.
某格闘漫画でも炭酸抜きコーラは良いと書かれていたし.

ちなみにガラスに入りきらなかった分は,その場の思いつきでドキュメントケースにようじょをゴキブリホイホイして展示することにした.
ホント,ようじょ様々である.



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養生テープを用いた展示1

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養生テープを用いた展示2


実は前々回,裏テーマが云々と書いたが,それは以下の通りである.
・顎ばかりの展示に円口類(顎を持たない)のカワヤツメを展示することで,顎の有無の比較をできるようにした.
・スルメイカ,スッポン,シチメンチョウを展示し,フグやイシダイ,アオブダイといった『クチバシ系』と並べ,形は似ているけれど,由来は違うことを出した.
・餌の種類と分類を表記し,来場者の頭の中で歯や顎の形態と好きなように結びつけられるようにした.
・展示した魚の個数は108種である(準備に苦労したので,四苦八苦のダジャレとかけてみた).

でも正直なところ,来場者が楽しんでくれれば構わないので,ほとんど裏テーマには触れなかった.
好きなように見て、好きなように感じてくれれば良いのである.
ブースはちょうど角にあり,曲がってきた人が驚く様子を見たり,『自分もやってみようと思います』と言われたりするのは,準備の苦労を忘れさせるほど嬉しかった.
これはちょっとブログでは体感できない経験である.
またイベントがあれば参加してみたい…かな.

17時半を迎え初日の展示が終了し,懇親会へと突入.



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懇親会会場


ジビエ料理が出たり,マグロやサワラの解体ショーがあったり,ニシマキ団長のMCで出展者紹介(ランダム?)あったりと,なかなか楽しいイベント盛りだくさんであった.



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イノシシ肉料理(手前)と酒を振る舞うニシマキ団長(奥)


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シカ肉料理


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魚の解体ショー


サワラは一度脱脂に失敗しているので,僕もこの機を逃してはならぬと考え,サワラの頭をそそくさと回収.
(ちなみに前回はジビエのホネをGalvanic氏が回収していったらしい…)
入手は難しくないのだが,一人暮らしの僕にとって大型魚は計画的な購入が必要なので,こういった頭だけを得る機会は貴重なのだ.

カメラカバンにサワラの頭をくくりつけたまま2次会に参加.
披露とすきっ腹に酒を入れたせいで,微妙に記憶が抜けているので,2次会はちょいと省略.
皆徒歩圏に宿泊しているわけではないので,23時頃解散.
宿に帰宅してから,明け方までスライドの手直し.
こうして初日が終了したのであった.
posted by osakana at 23:46| 埼玉 ☔| Comment(0) | 旅モノ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月21日

魚話その187 柔らか頭を硬く取る

●PEG含浸と軟骨魚類の骨格標本

注意!
・本文中に『一般入手できる』という記述がありますが,一般家庭での作業を推奨する意味ではありません.
・高校や大学の生物系サークルなど,大型専門機器の購入が困難ではあるものの,しかるべき施設と知識を持った人が対象です.
・ホルマリンを扱うので,その処理方法が確立している方々を対象としております.
・ポリエチレングリコールとエチレングリコールは別物です(危険度も).
・現在も試行錯誤中の手法であることにご留意ください.



配付資料供養ネタ第3弾.
実際にサメの顎を取ったことがある人ならば分かると思うが,軟骨魚類の骨格は,ただ柔らかいだけでなく,乾燥と共に歪みが生じてしまう(図1).


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図1.乾燥に伴うトラザメの顎の変形 a)乾燥前,b)乾燥後 scale bar : 1 cm


凍らせながら水分を昇華させる『凍結乾燥』は一つの解決法だが,機材が数百万するので,現実的ではない.
また,この手法で家庭向きな冷凍庫での乾燥法こと『冷凍乾燥』は歪みを軽減できるものの,幼い個体ではヒビ割れが生じてしまう.
これらの予防策として樹脂を染み込ませる方法は『魚話その85』で既に触れているが,当時は,良い樹脂が見つからなかった.
いわゆる身近な樹脂は石油系樹脂が多く,樹脂浸透に先立って脱水(完全な乾燥)が必要なため,歪んでしまう.
一方,水溶性樹脂であれば,完全な脱水と樹脂への置き換えが同時に行われる.
もしそんなすてきな樹脂が見つかれば,徐々に濃度を上げていくことで,軟骨を歪ませずに樹脂を染み込ませることが可能だ.


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図2.サメの骨格標本作製方法 a)風乾,b)冷凍乾燥,c)石油系樹脂,d)水溶性樹脂


樹脂との出会いは唐突であった.
ある日,呑み会にて,Aさんからポリエチレングリコール(PEG)含浸の話を聞いた.
遺跡から出土した木材は大量に水分を含んでいることがあり,発掘後に放置しておくと,乾燥で歪んでしまう.
それを防ぐためにPEG含浸などの処置が行われるそうだ.
この手法が,剥製業界でもブームになりつつあるのだという.
これは軟骨魚類の骨格とよく似ている(図3).


sb13703.jpg
図3.風乾に伴う軟骨魚類の顎の重量変化(トラザメおよびカスザメ)
scale bar : 1 cm

調べてみると大掛かりな機材が必要で,一般には手が出せない.
ただし,木材に染み込ませる際には細胞壁が難点のようで,動物にはこれが無いため,機材や手法をアレンジできそうだ.
一般入手できる範囲の機材で何とかアレンジした結果出来上がったのが下記の手法である.
機材の関係で小型標本に限定されるが,そこはご勘弁願いたい.

PEGは重合度によって液状〜フレーク状まで種々ある.
今回は含浸法の資料で見かけたPEG4000(500gで約2000円)を購入し,以下の処理を行った.


sb13704.jpg
図4.PEG含浸処理のフロー 筆者が行なっているPEG含浸処理を示した.現在も試行錯誤中であることに留意されたい.


100%まで置換したいが,機材・金銭的に現実的なのは80%(w/v)程度までであろう.
少なくとも60%までは常温で水に溶け,80%は湯煎で溶ける.
僕は定温調理機能付きのIHクッキングヒーターで60℃処理しているが,メーカー保証の対象外になるので,自己責任で
手法の更新に伴い,IHクッキングヒーターでは対処しきれない長時間処理が必要になったので,使用しないでください.
処理の効果を図5aに示したが,歪みの軽減がおわかりいただけるだろうか?


sb13705.jpg
図5.PEG処理の効果 a)トラザメ顎(上段:乾燥前,下段:乾燥後),b)ノコギリザメ頭骨(入手時に吻は切断されていた) c)ドチザメ上半身(鰓付き) aは撮影時の角度が若干異なっているのでPEG処理も歪んでいるように見えるが,実際はほとんど歪んでいない.cはフラッシュと液跡の残る新聞紙のせいで湿っているように見えるが,実際の触感はサラサラしている scale bar : 1 cm


MSDSを見る限りPEGは危険性が低そうであるが,可燃性や強酸化剤との反応性があるので,除肉や固定後ののすすぎは念入りに.
また,独特の臭いが出るので,排気装置などを使用すべきだ.

また,PEG含浸処理標本にも弱点はある.
第一に接着剤が効かない.
針金固定による連結か,交連状態を維持した状態でPEG処理する必要がある.
第二に高温多湿に弱い.
日向の窓辺や車内に置くのは論外だ.
博物館など,保管環境が整った施設ならば良いが,通常はそうもいくまい.
大型のタッパー+乾燥剤での保管がベターだ.
第三に除肉のごまかしが効かない.
従来の手法では多少の肉は乾燥で目立たなくなっていたが,PEG含浸処理では全ての収縮が抑えられるので,残った肉が目立つ.
第四に特許が絡む.
主に硬化方法に関し,既に特許が受理されている(公開番号:特開平10−287501).
特許に抵触する可能性があるので,凝った方法を思いついた場合,一度チェックしておく必要がある.
本当はもう少し試したかったのだが,サミットでの配布資料と講演をきっかけに始めたアレンジであるため,まだまだ手探り状態だ.
軟体動物のPEG処理標本が少なくとも数年経っても変化がないという報告もされているが,どれくらい持つのかは不明である.
とはいえ,軟骨骨格標本に明るい未来が見えてきた気がするのは僕だけではあるまい.
『サメは骨格標本が作れない』といった魚ネタサイトが大量にあり,多くはそこで完結か,透明骨格標本に話題がシフトしてしまうことが多い.
そのような中で,その常識を覆すべく,このマイナーブログでひっそりと開発・発表していると想像すると,非常に楽しかったりもする.


本日の魚
カスザメ Squatina japonica Bleeker, 1858
ドチザメ Triakis scyllium Müller & Henle, 1839
トラザメ Scyliorhinus torazame Tanaka, 1908


参考文献
増田 修 他(2003)水溶性樹脂を用いた水棲動物の標本作製の試み(予報).兵庫県陸水生物,55,59-62
遺物の保存と調査(沢田 正昭,クバプロ)
生物起源のものの標本作成法法(特開平10−287501)付属資料
ポリエチレングリコール4000のMSDS(ナカライテスク)→リンク
posted by osakana at 01:01| 埼玉 ☔| Comment(3) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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