2012年07月15日

魚話その191 実験屋ケンちゃん

●安全な実験操作をするために


続きモノを中断させて恐縮なのだが,思いつきでネタを選んでいるので,ご勘弁.
他にも理由はあるのだけれど,それは更新時に.
次回は続きに戻る(予定).

発端は軟骨標本.
薬品が直接肌に触れないようにするため,手術用のゴム手袋を着用して作業している.
素手の感覚をスポイルしたくないという意見は非常にわかるのだが,教育的配慮ということで,ここでは手袋着用を前提で書く.


いわゆるバイオテクノロジーを扱った実験では,総量1ml未満の薬品同士を混ぜて実験をすることが多く,指先から落ちる皮膚や埃が混入すると,想定とは異なる結果になってしまうことがある.
そういった状況をコンタミした(英語のcontaminationより)と言い,大学の実習で頻繁に耳にする言葉ではないかと思う.
外部から混入したホコリがデータを増やしてしまったり,サンプルを分解してしまったりと,様々な状況をひっくるめてコンタミと呼ぶので,なかなか便利な言葉なのである.
例えば魚のある遺伝子配列を調べようとして,明らかにヒト由来である遺伝子が同時に検出されてしまった場合,『ヒトの組織がコンタミした』という表現になる.
『ヒトと同じ配列である可能性も追求すべきでは?』と言われそうだが,全ゲノム配列が明らかになっている魚種がいるので,それを参考に即比較検討することが可能だ.
自分が経験した範囲でしかないが,やっぱりヒトはヒト,魚は魚で互いに似る.

さて.
冒頭で述べたゴム手袋である.
ヒト由来のコンタミ予防のみならず,人体に有害な薬品を取り扱う際にも有効なので,実験では必要不可欠な道具の一つだ(図1).


sb19101.jpg
図1.実験用グローブ


ところが,手袋を着用することで油断するのか,大胆な動作になる人が少なくない.
例えば,普段素手でも触る部屋のドアノブや携帯電話(咄嗟の試薬の量の計算とか,メールとか…ね)をそのまま触ってしまうこと.
自分のサンプルがコンタミで自滅するのは勝手だけれど,有害物質がついた手袋でそういった場所に触れ,知らない人が素手で触れるということだってある.
ピンポン汚染とでもいおうか.
手袋イコール完璧と思っていたら,いつか痛い目に遭う.
面倒くさがらずに着脱すればいいじゃないと思うかもしれないけれど,実験用手袋は手汗で極めて着用しづらくなる.
そのため,数分の待ち時間であれば,手袋を付けっぱなしにしてしまう状況も凄く分かる.
是非とも実験時の手袋の扱いを,再確認したい.

似たようなことは実験器具の開閉にもいえる.
図2はエッペンチューブという容器.


sb19102.jpg
図2.エッペンチューブ 写真は蓋を開けたところ.上部の蓋を閉めると,約1.5mlの密閉容器になる.



古い映画の科学者が持っている試験管とかの小型版と思ってくれればいい.
各種技術の向上で,より小スケールでの実験が可能となったわけだが,ホコリ1粒の影響が出やすくなったとも言える.
そのため,蓋の開閉もできれば気をつけたいところ.
右手なら左側・奥のチューブから開け,右側・手前のチューブから閉じるようにしてきた(図3).


sb19103.jpg
図3.エッペンチューブを実際に使用しているところ


あくまでこれは僕のルールで,気にしすぎなのか当たり前なのか知らない.
ただ,ラボで人間観察していると,実験の巧い下手が見えてくると思う.
言葉では出てこない細かなコツを,巧い人を観察して是非とも盗んで欲しいと思う.
ラベル:実験
posted by osakana at 13:48| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする