2013年10月01日

魚話その197 ポセイドンK

●論文の『孫引き』の意味について考える


何気なく使用している言葉の意味が,本来とは異なる場合がある.
『破天荒』や『姑息』といった言葉が取り上げられた記事を読んだことがあるかもしれない.
定義に厳しい学術系用語は一意的に用いられている…と思いきや,身近なところに例外があった.
それが『孫引き』という言葉.


まずは学術文書について.
研究成果は,論文などの学術文書で公開する.
多くの自然科学系論文は『要旨』『背景』『手法』『結果』『考察』『引用文献』に分かれ,読み手が分かりやすいよう,各項目の初めに『考察』などのように明示される(図1).


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図1.論文の構成の一例 
a. 題名(title)…論文の題名. b. 著者(authors)…論文内の研究に関わった人が出てくる.順番も大事で,一番関わった人が最初. c. 要旨(abstract)…論文の概要.無料公開していることが多い. d. 背景…(introduction)理解に必要な先行研究や原理を紹介. e. 手法…(materials and methods)再現性を高めるため,シンプルかつ正確さが求められる. f. 結果…(results)実際のデータが掲載される項目.データ解釈を行わず,記載がメイン. g. 表(table)…タイトルと説明文は表の上に,補足文は下に書く. h. 図(figure/fig.)…表と異なり,タイトルも説明文も図の下に書く. i. 考察(discussion)…データの解釈を行う項目. j. 謝辞(acknowledgements)…実験操作やサンプル提供,英文校閲を手伝ってくれた人などお世話になった人,使用した研究予算を紹介する. k. 引用文献(references)…本文中で引用した文献の詳細情報のリスト.


英語論文の場合,専門用語を除けば,恐らく高校英語の教科書に載る文学作品よりも読みやすい.
他文献と情報が重複する場合は引用による紹介で文章を単純化し,より相手に伝わりやすいよう工夫されている.
例えば,『●●に関する処理は××(2005)の手法を用いた』『■■に関しては▼▼(1999)が述べているように…』といった表現を用いる.
そういった××(2005)や▼▼(1999)のタイトルがリスト化されているのが『引用文献』という項目だ.

さて,冒頭の『孫引き』.
論文や専門書を読んでいると,本文中で引用された文献の情報が気になってくることがある.
引用される情報は文献の一部であるから,その他の部分が気になるのだ.
派生した興味で,もしくは,より自分に関連性が高そうな情報を得るために,最初に調べていた文献の『引用文献』のリストから文献を見つけ出し,さらにその文献の『引用文献』のリストから文献を見つけ出し…といった行為を『孫引き』と呼ぶ人(僕も含む)がいるのだが,どうも本来はそういう意味ではないようだ(図2a).


広辞苑によると『他の書物に引用されたものを,原点にさかのぼって調べることなく,そのまま引用すること』という,どちらかといえば,いや,かなりネガティブな意味だ(図2b).
ひょっとしたら文系の専門用語かと思い,手持ちの科学論文執筆の指南書を漁ったが,やはりネガティブな意味であった.


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図2.『孫引き』二様 a)僕が認識していた用法,b)辞書に掲載されていた本来の用法


従って,より多くの原著文献を積極的に探すというポジティブな意味で
『いやぁ,関連情報が多くて,昨夜は孫引き・ひ孫引きしまくりで疲れましたよ…』
と言ったつもりなのに,
『情報が多いから,巧いこと要約してある文献を丸写しするのに疲れましたよ』
というニュアンスで伝わりかねない.

基本的に(本来の意味での)孫引きは避けるべきとされるが,入手困難な古い文献等で,例外的に使うこともある.
引用の形式が何にせよ,調べ物をして報告する場合には,出典の表記や,引用部分の明示は大事だ.

知っている人には当たり前のことなのかもしれないが,周囲に訊いた限りでは,僕を含め年齢・出身ラボ関係なしに『原著を遡る』という意味で使用している人が多かった.
『この作品のDNAが第二作にも引き継がれ…』というように,本来とは異なる慣用的な表現が広まっているのだろう.
時代とともに言葉の方法は変化するし,実際こちらの意図するところで伝わってしまうので,誤用とすべきかわからない.
しかし,『孫引き』はどちらの意味も同じ分野の人が使用する用語ゆえ,アンジャッシュの勘違いネタ漫才のように,互いの認識がずれたまま話が進んでしまう可能性もあるかも,と酒を呑みながら思った.


参考文献
広辞苑 DVD-ROM版(新村 出,岩波書店)第6版
集英社国語辞典 (森岡 健二 他,集英社)第1版
これからレポート・卒論を書く若者のために(酒井 聡樹,共立出版)第1版,P143-145
一流の科学者が書く英語論文(Ann M. Korner 他,東京電機大学出版局)第1版,P72
フィールドの観察から論文を書く方法―観察事例の報告から研究論文まで(濱尾 章二,文一総合出版)第1版,P176-177
タグ:孫引き
posted by osakana at 00:50| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月03日

旅モノその40 魚のホネ屋探訪

ホネ好きがホネを入手するにはいくつか方法がある.
もちろん自分でホネ取りすれば手っ取り早いが,作業の得手不得手,家族の理解,動物の入手等でなかなかうまくいかない.
そんなわけで,世のホネ好きはネット通販やイベント等を活用してコレクションを収集していく訳だ.
実店舗もあるにはあるが,委託販売ばかりで,作者は店舗にはまずいない.
そんな中,実店舗販売で,しかも魚の頭骨を中心に販売という,恐ろしくニッチな店が都内に誕生した.

『いぞらど isolado』はワンフェス2013夏で出会ったI氏が経営する店で,開店したのは最近のこと.
isoladoとはポルトガル語で『隔絶された』といったニュアンスの言葉で,恐らく英語のisolatedに相当する.
そこから転じて,専門家の間では『現代文明とは異なった別の文化や言語,価値観などを有する独立したひとつの文明』=『アマゾンの奥地で未だ現代文明と接触を拒む未開の民族』を指す言葉として使われているそうで,店名もそこからとったとのこと.
ワンフェスで話した際に都内で店舗経営もしていると知り,すぐにでも遊びに行きたかったのだが,なかなか都合が合わず,気付けばワンフェスから1ヶ月以上経ってしまった.


さて.
三軒茶屋駅を下車し,閑静な住宅街をのんびり15分ほど歩いたところに『いぞらど isolado』はある.
窓から中を覗くと,気さくそうな男性が卓上のPCと睨めっこしていた.

店主のI氏は平日にホネを取り,週末に店を開く.
小ぢんまりとした店内には多種多様な魚の頭骨が整然と並び,こんな魚種までホネにしたのか…と,ちょっと驚く.



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図1.店内の見取り図(アルファベットは以下の写真と撮影方向に対応).


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主なラインナップは国産海水魚と南米・東南アジア産淡水魚の頭骨で,多くの商品が1000円台で売られていることに再度驚く.
あまりの低価格ぶりにいささか不安を隠せないが,材料費や人件費(自分の手)を節約し『買ってみようかな』という価格に抑えたとのことで,安かろう悪かろうというわけではない.

実際に手に取ってみると,歯がきっちり残っている.
歯が大きくて少ない爬虫類や哺乳類と異なり,魚類は細かくて小さな歯が密集していることが多いため,抜けた歯を接着して再構築することが難しい.
そのため,歯の残り具合は重要なチェックポイントになるのだ.


下の写真は,僕がほねほねサミットの展示用に取ったホネで,歯の残り具合が全く異なるのがわかる.
パっと見では頭骨が取れていても,歯を見ると抜けてたりすることもあるのだ.


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図2.頭骨を取った際の歯の有無



口や胸鰭のポーズなどは人によって好みが分かれるところだが,関節を濡らしてやれば多少の調整は可能なので,各自で好きなように再ポージングすれば良いと思う.
実際の商品は『旅モノその39』で紹介済みなので,今回は省略.


他にも書きたいことは多々あるが,ウェブサイトでの不特定多数への情報公開は様子見した方が良いというのが僕とI氏の共通見解なので,住所その他の詳細は割愛する.
興味のある人は,店舗のウェブサイトに掲載されているアドレスにメールを送れば,快く店舗の詳細情報を教えてくれる.
また,『現物を実際に手に取り,納得した上で購入して欲しいので,店舗販売を中心にイベント等に積極的に参加していきたい』とのこと.

購入を考えている人は,手ブラで帰りたいからといって宅配便は避けた方が良いだろう.
僕がほねほねサミットに参加した際も,小型魚の華奢なホネを保護できる梱包を低コストで済ませる方法が思い付かず,宅配便に踏み出せなかった.
破損はないにしても,外れてしまったパーツの組立てを電話やメールの文書で伝えあうことを考えると,ちょっと面倒だ(梱包法は僕も教えてほしい).

都内某所にひっそり佇む魚のホネ屋,魚好き・ホネ好きは上京の折に時間を作って覗きに行くと楽しめるはずだ.


店舗ウェブサイト→いぞらど isolado 魚の骨格標本日誌
posted by osakana at 01:17| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅モノ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月20日

なまけっと遊びに行きます

出展者ではなく,客として.
なまけっと,面白そうですね,
http://ikimonomarket.island.ac/index.htm
知り合いが何グループかいるので,遊びに行こうと思ってます.

2回目があるとしたら,『自分が思っていたのと違った…』『自分も出てみたい』『今後の反省点として…』等々があって様相が変わるかもしれないので,1回目も抑えておきたいところです.
魚関係ブースで不振な坊主頭の眼鏡がいたら,たぶんそれは僕です…
タグ:なまけっと
posted by osakana at 17:37| 千葉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 筆者からの連絡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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