2016年02月24日

魚話その204 おぴんぴん拡張〜先細り篇〜

●強力ピンセットP-899の先端を削り込む


魚のホネ取りをしている.
収納スペースの関係から,多くは全長40cm程度の魚を鮮魚店で入手し,胴体は食用,頭部はホネ用に分けている.
何年かやっているが,ホネに張り付いた皮剥がしは地味に大変で,未だに慣れない.
小さくて掴み辛いくせに,強固に張り付いた皮は,通常のピンセットで引っ張ると曲がってしまい,非常に剥がし辛いのである.
メスで削ったり薬品で溶かすのも良いのだけれど,ホネが傷つく恐れがあり,特に,ベラ科魚類のように厚い皮と薄い鰓蓋骨の組合せでは,ヘタすると穴が開いてしまう.
かといって皮を残すと干物感満載になるため,できるだけ処理したい.


sb20401.jpg
図1.a)ブダイ頭部,b)鰓蓋骨
鰓蓋骨は薄く透けて見えるが,皮は硬く通常のピンセットでは剥がせない



理想の摘み道具を求めて毛抜きやらラジオペンチやら試してみたのだけれど,強度不足だったりピンセットと持ち方が違ったり,どれもイマイチであった.


表.皮剥きに使用した器具の比較(主観に基づく)
sb20402.jpg


sb20403.jpg
図2.骨抜き(左),毛抜き(右)


そんなある日,Hozan P-891と書かれた妙にゴツいピンセットを職場徘徊中に発見した.
生物系の(馴染みのある)実験操作では見かけないメーカーで,調べてみると工業系製品を取り扱うメーカーであった.
一般販売もされていたので早速Amazonでポチポチし,自宅にお出迎えしたのであった.

さて.
P-891は厚手のステンレス材でできており,通常のピンセットではご法度の『つまんで捻る』ができる.


sb20404.jpg
図3.a)P-891正面,b)P-891側面
比較用に一般的なサイズのK-3 GG(KFI製)を並べた.
正面から見ると通常のピンセットと同じ形状をしているが,板厚は通常のピンセットよりかなり厚い.



しかし,平滑な把握面ゆえに摘まんだ皮が滑ってしまうのがネックであり,先端を焼き鈍して有鉤化したりもしたものの,イマイチ使い勝手が悪い上に量産しづらいので,早々に断念.


sb20405.jpg
図4.有鉤化したP-891


ただ,強力ピンセットシリーズが皮剥きで無双するのは確信していたので,同シリーズでヤスリ目が付いたP-895とP-899を追加で購入してみた.
P-895は細身で魚の奥まで届くのだけれど,細身が災いしてちょっと厚めの皮を摘まむと先端がずれてしまい,P-891の代打にはならなかった.


sb20406.jpg
図5.a)P-895正面,b)P-895側面
※ネジ穴加工をしたため,P-895の穴が大きくなっている



一方,P-899はドラゴン殺しを彷彿とさせる凶悪な厚さで,安ものペンチじゃ勝てないんじゃないかとさえ思える把握力に,ホネ取り作業が一気に快適になったのであった.


sb20407.jpg
図6.a)P-899正面,b)P-899側面


ただ人間は贅沢なもので,P-899も気になる点が見えてきた.
鰓蓋のように開放的な場所では向かうところ敵なしであったが,ちょっと入り組んだ場所になるとピンセットが入らないのである.
加えて,力を入れて摘まむことが多く,角の部分が指に当たってあっという間にタコができてしまい,地味に痛い.
ただ,せっかく出会った理想の性能を持ったピンセットとサヨナラするのは非常に心苦しい.
『よろしいならば改造だ』と少佐の声が脳内にリフレインし,P-891にヤスリ目処理をするのは素人には無理そうなので,P-899を細身化を試すことにした.
使用時は頼もしく思えたその板厚に若干怯んだが,試しに鉄工ヤスリを当ててみると,少しずつ削れることがわかった.
グラインダーを使えば手軽に整形できるかもしれないが,作業時の過熱で硬度が変化するのも怖いので,チマチマと手作業することにした.


sb20408.jpg
図7.改造に用いたヤスリ
※写真には写っていないが,仕上げ用に紙やすりも使用した



左右の合わせ具合をチェックするため,養生テープでピンセットを閉じた状態で固定し,音楽を聴きながら削ること1時間.
調子に乗って削り過ぎると強力ピンセットとしての利点が消えるので,板厚はそのまま,側面のみを削りこみ,終了.



sb20409.jpg
図8.削ったP-899


なんだか歪な形だが,使い勝手は改善したような気がする.
まだ若干気になるところがあるのだけれど,実際に使ってみないと分からないので,ホネ取り作業を通じて微調整する予定だ.
失敗したときのことを考えると決して安い作業ではないけれど,自分用に改造していくのはとても楽しいね,という話.


本日の魚
ブダイ:Calotomus japonicus (Valenciennes, 1840)
posted by osakana at 22:57| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月27日

魚話その205 おぴんぴん拡張〜締め付け篇〜

●強力ピンセットP-899をバイスにする

前回に続き改造ネタもう1つ.
“第3の手”という商品がある.
なんだか3本足のリカちゃんぽいけれど,鋳鉄の台座と逆作用ピンセットがボールジョイントで連結された保持用道具である.
逆作用ピンセットとはバネの力で普段は洗濯ばさみのように閉じており手を離すとパーツをつまみ続けてくれるので,ロウ付け時(高温のはんだ付け)のパーツ保持にとても便利なのである.
ツールクリッパーやサポートスタンドといった感じの名称で認識している人もいるかもしれないが,正式名称が分からないので,とりあえずここでは“第3の手”で統一する.
僕も数年前からホネの支柱作製で真鍮やステンレスのロウ付けを行なっており,“第3の手”を数個所有している.

sb20501.jpg
図1.a)“第3の手”,b)ロウ付けの様子(撮影用ヤラセ),c)ホネ用に作った支柱


さて.
以前から,マクロ撮影での被写体ブレや,直置きでは不安定な/壊れやすい角度で保持しつつの作業に難儀していた.
何かに立てかければブレ自体はなくなるのだけれど,角度を自由に変えられる小型保持台があればさらに快適に…と常々思っていた.
最初は三脚についている雲台のギミックを流用したスタンドも自作してみたけれど,量産性に乏しく扱えるサイズに限度もあったため,試作のみで終了した(図2).

sb20502.jpg
図2.a)自由雲台のギミックを使用した台座,b)2way雲台のギミックを使用した台座,c)使用例
実際の雲台同様に,レバーの捻りで締め付けが可能.





次に目を付けたのがフライフィッシング用のタイイングバイスで,細かい釣り針を掴んで角度調整もできるギミックに期待が高まったものの,欲しい性能のバイスは数万円するため,ちょっと手が出なかった.
コストを抑えたい理由は単純な懐事情のみならず,複数のバイスで複数のパーツをそれぞれ固定し,接着剤を流すといった作業がしたいためで,タイイングバイスの複数購入は完全に予算オーバーとなってしまうのだ.

“第3の手”を入手したのはタイイングバイスについて調べ始めたのとほぼ同時期で,角度調整の利くスタンドと撮影や作業は早々に結びついたのだけれど,付属の逆作用ピンセットは微妙な力加減が利かず,巧い解決策も思いつかないまま,長いことロウ付け専用となっていた.

sb20503.jpg
図3.ホネを支える“第3の手”
支えやすい形状・方向は特に問題ないのだけれど,作業によっては無理な角度で作業したかったり,潰れやすいホネを扱うことがあり,逆作用ピンセットではやや不都合



ところがある日,夕飯の準備中にP-899の穴がネジ加工用の下穴に使えるのではないかと突然思い付いてしまった.
焼き入れ済みのステンレス板に左右の位置合わせをしながら穴を開けるのは大変なのだけれど,元々穴が開いているのであれば話は別.
調理を中断し,忘れる前に加工.
そうしてネジによる強固かつ調節可能な把握力を併せ持つバイスが誕生したのであった.

sb20504.jpg
図4.加工の様子 a)HOZANのP-899,b)卓上ボール盤で穴開け,c)バリ取り,d)ネジ切り,e)完成

sb20505.jpg
図5.a)解放時(左)と締め込み時(右),b)ヒゲキホウボウ半身骨格,c)トビウオ頭部
ヒゲキホウボウはどの角度で直置きしても華奢な鰭が破損する恐れがあり,しかも摘まめる場所が狭いため,浮かせた状態で作業.
トビウオは脊椎に接着した針金を支えにして不安定な角度で作業.



その後いくつかの試作(図6)を経て,市販のステンレス製サムスクリューと組み合わせた現在の形状に落ち着いた.
模型用ピンセットもバイス化可能(図7)だが,強度に不安があるので,加工は大変でも個人的にはP-899がお勧めだ.

sb20506.jpg
図6.試作の様子 a)旋盤で締め込みネジを試作,b)装着時,c)試作品

sb20507.jpg
図7.a)HOZANのP-895をバイス化,b)Mr. TOOLS先細ストレート型をバイス化
P-895は強い締め込みは苦手っぽいが,小さいパーツの撮影や塗装の保持台には適.
Mr. TOOLSのピンセットは滑り止めを外すと開いている穴を加工.
板厚が薄くてネジ山がほとんどないので,寿命は微妙.



“第3の手”は1000円台で入手でき,工作環境さえあれば“改造P-899x第3の手”は4000円で作製できるので,タイイングバイスよりかなり安い.
ちなみに“第3の手”は大型台モデルの方が安定して好きなのだけれど,最近とんと見かけなくなってしまったのがとても残念である.

sb20508.jpg
図8.馬台タイプの“第3の手”の台座
一番左のモデルが重くて安定感もあるのだけれど,最近よく見るのは一番右の軽量モデル.



なお,ピンセット単体としても使えるので,個人的には結構気に入っている改造である.
ホネ取りに用いると,ネジ穴に詰まった肉の除去が若干面倒だが,大きめの歯間ブラシで対処可能だ.
ほとんど市販品の流用なので,改造としてはショボいのだけれど,自分用にアレンジしましたというお話.


本日の魚
イネゴチの一種:Cociella sp.
トビウオの一種:Cypselurus sp.
ヒゲキホウボウ:Satyrichthys amiscus (Jordan & Starks, 1904)
posted by osakana at 21:35| 千葉 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。