2009年01月04日

魚話その149 綺麗な指のお姉さんは好きですか?

●シラウオ


正月特番で特に面白い番組もなく,ダラダラとパソコンの前でネットをやってませんか?
そんなあなたのための,お目汚しブログ.
本日はちょっと長めの記事を更新である…

私用で小魚が必要になり,季節と価格,サイズを兼ねたワカサギを購入することになった.
ふと中身を見ると,何か白っぽくて細いものが混じりこんでいる.


shirauo1.jpg
図.1ワカサギのパック


一瞬虫かと思ったが,シラウオであった.


shirauo2.jpg
図2.周辺の拡大


シラウオは海と河川を行き来していると考えられている.
どうもその行き来の間でワカサギ漁の季節とかぶるため,混獲されるのである.
ちなみに山上湖で冬季の穴釣りのイメージが強いワカサギだが,海に行ったり川に行ったりするのである.

シラウオは漢字で書くと白魚であり,白魚は『しろうお』とも読めちゃうのだが,シロウオ(漢字は”素魚”)というまったく別の魚もいるので,とても紛らわしい.
ここら辺はお魚ネタ系のお約束っぽいネタなので微妙なのだが,一応書いておこうか.
大雑把に分けると,シラウオはサケの仲間(サケ目シラウオ科),シロウオはハゼの仲間(ハゼ目シロウオ科)と図鑑では説明されている.


shirauo3.jpg
図3.シラウオ(スケールは1cm)


渓流釣りに興味を持っている人ならば,特に話が通じやすいのだが,サケ科魚類と言えば,脂鰭(あぶらびれ)というイメージが強い.
しかし,脂鰭はカラシン(ネオンテトラとかピラニアのグループ)やナマズの仲間も持っているので,脂鰭がある=サケ目とは必ずしも言い切れないのだが,ただの一ブログが現在の分類学に殴り込みをかけたところで何も起きないし,反論する理由もないので,図鑑の記載に従うことにする.
とにかく,我らがシラウオたんも脂鰭を持っているのである(図4).


shirauo4.jpg
図4.シラウオの脂鰭


そういえば,細くて色白な指のことを『白魚のような指』と言うことがあるが,これはシロウオではなくシラウオを指す.
どっちだっていいじゃないかと言うのはごもっとも.
だってシロウオだって透き通っていて小さくて,可憐なイメージはあるのだから.
僕にとってはどちらも身近ではないので,実はどうでもいいなぁと思ってしまうのである.

さて.
シラウオと聞いて徳川家康を思い浮かべる人もいるかもしれない.
鮮度命のシラウオは,大名行列すら無視しても良いというほど優遇され,産地直送で家康の下に運ばれたと言われている.
真偽が気になるところだが,ちょっと調べる余裕がなかったので,資料が見つかったら,また後日載せることにしよう.
話が逸れた.
とにかくシラウオが江戸へ直送されたのは,珍味もさることながら,背側から見ると頭に徳川の家紋が浮かぶためだという.


shirauo5.jpg
図5.三つ葉葵の紋と背側から見たシラウオ頭部.a,bは倍率違い,cはbの高コントラスト画像(スケールは1mm).


図5のcに徳川家の家紋を時計回りに90度回転させたものを併載してみたが…まぁ言われてみれば,見えなくもない…か.
実際には脳が透けて見えているわけだが,よくもまぁ,あんな小さいところに紋を見出したものだ.
で,実はこの透明ヘッドが思いがけぬ効果をもたらした.
実は冒頭の『私用』と言うのは透明標本の自作のことなのだが,『もともと透明なシラウオで透明標本を作って何の意味があるのか?』というツッコミは一切考えないことにし,とりあえず作ってみたら,あら,びっくり.
結構綺麗に仕上がっちゃったのである.

shirauo6.jpg
図6.シラウオの透明標本(スケールは2mm/クリックすると拡大画像)


で,ついでに頭の周辺を顕微鏡で観察していたら二度びっくり.
なんとまぁ,透明ヘッドは染まらない(≒骨のない)場所があったようで,中までスケスケ見えるのである.
そんな中にひと際輝くピンクの物体.
どうやら,耳石を上手いこと染めちゃったようなのである.
耳石とは,ものすごく乱暴な説明をすると,『頭の中にあって,分析すると魚の年齢とか棲んでいた環境が分かる便利なカルシウムの塊』とでも言おうか.


shirauo7.jpg
図7.シラウオの耳石.a,b,cは倍率違い(スケールは1mm).


とにかく耳石といえば僕のブログでも『魚話その13』で紹介したし,そもそも魚類学などの教科書にもしょっちゅう出てくるので珍しいものではないが,考えてみれば,頭の中でどのように納まっているのかを外から覗けるなんてそうそうない.
普通の魚はたとえ透明標本にしても,頭蓋骨で覆われているので,赤い層に覆われてしまうのだ.
酔っ払って観察していたせいか知らないが,顕微鏡の視界の中で,一人花見気分になっていたのは事実である.
耳石は炭酸カルシウム,硬骨は燐酸カルシウムと成分が異なるのは調べれば分かるのだが,それが色の違いに関係しているのかは不明だ.
そんなわけで,江戸時代の人がスケスケヘッドから家紋を見出したように,現代の僕にもちょっとした花をプレゼントしてくれたようだ.


今日の魚
シラウオ(Salangichthys microdon)


参考文献
川と海を回遊する淡水魚―生活史と進化 (後藤 晃 他 東海大学出版会)
日本の淡水魚 (川那部 浩哉 他 山と渓谷社)
posted by osakana at 03:21| 埼玉 晴れ| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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