飽きっぽい僕が(こういうのをやっている人の枕詞…?)よくまぁ150回も続いたもんだ.
今回から,150回記念と称し,3回に渡った小ネタでもやろうかと思っている.
とはいえ,別に大したことをしているわけではないので,なんか最近テレビもつまらんし,休日の夜は気分も憂鬱だし…なんて思っている人の暇つぶしにでもなってくれれば幸いである.
では…
イマドキの魚の図鑑は,魚の特徴を示すため,生態が分かるようにするため,水中で生活している時の色合いを出すという目論見に応じた水中写真や水槽撮影も珍しくないが,それでもやはり図鑑の多くは背景無しで魚の写真やイラストを陳列しており,形態やその他の説明を行なっている.
『この魚はなんじゃろな?』が目的の書物なのだから,整然とした陳列は便利なのだろう.
また,上記の『なんじゃろな?』に特化した(種同定)専門書では写真よりも線画で表現されることも多い.
ところで,魚図鑑を眺めていると,特にイラスト系の図鑑において左向きのものが多くないだろうか?
一説には,『ドイツの物理学者であり魚類学者でもあったMarcus Elieser Bloch [1723 - 1799]という人物が美麗な図版を出版し,皆がそれに倣った』という説が有力視されている.
しかも『右側を解剖して観察し,無傷の左側をスケッチに使った』という逸話付きだ.
当初それで納得していたのだが,魚本好きな僕はどうしても元祖とされるBlochの図鑑を見てみたくなり,先日Bloch's Atlas [Allgemeine Naturgeschichte Der Fische](復刻版)を入手した.
しかし,僕のBlochの魚図鑑はことごとく右向きなのである.
これはひょっとして,国外の図鑑も視野に入れた方が良いんじゃあなかろうか?
と言うわけで,自宅の本棚他,手近なところを調べてみたところ,左向きもしくは左右混合が圧倒的に多く,右向き優勢の魚図鑑は圧倒的に少ないことが分かった(条件は最後に記した).
図1.アジア・オセアニアの図鑑における魚の方向(クリックすると拡大)
図2.南北アメリカの図鑑における魚の方向(クリックすると拡大)
図3.ヨーロッパ・アフリカの図鑑における魚の方向(クリックすると拡大)
もちろん少数しか調べられなかった国もあるので,実際に検証できるのは数カ国だとは思う….
ところで,先のBlochの図鑑が右向きだった件であるが,最初は何らかの意図で編集され,左右反転された可能性も考えた.
しかし,文字は反転しておらず,しかも背景は不均一なベージュ(いわゆる古紙色)なので,繊維の模様まで誤魔化して反転する意義を感じない.
また,カレイやヒラメではなく,普通の体型の魚もごく稀に左向きになっているので,やはり方向統一のための編集が行なわれたとは考えにくい.
当時の印刷方法(銅版画と同じ原理だと思われる)を考慮しても,さすがに文章をイラスト中に挿入することや,学術目的の書籍を出版することを考えれば,左右反転くらいは意識しそうである.
すなわち,Blochは右向きの魚図鑑を出版していた可能性が高いのである.
『Blochの魚類図鑑が現在の魚図鑑の体裁を作ったってさっき書いたんじゃない?』というツッコミはごもっとも.
確かにBlochの魚図鑑は大量の詳細美麗な図と,記述的な文章の組み合わせで,現在の専門的な図鑑の体裁を擁している.
しかし,もしもBlochの図鑑を『元祖』とするなら,魚の方向という項目は含まれていないのではないだろうか?
まあいずれにせよ,左向き優勢な魚図鑑が多そうだ.
次回はその背景について,アレコレ調べたり考えたことを書いてみようかと思う(ちょっと引っ張る).
注
魚の方向に関しては,いくつか条件を設けた.
a) ジャンル…図鑑と読み物を,それぞれ『一般向け』と『専門書』に分類する
b) 国…例えば日本で編集された『アメリカの魚』は,日本の本として考える
c) 時代…国によって印刷技術の進歩状況が異なるので,出版された世紀で分ける
d) 方向…カレイ・ヒラメ以外の魚で判断し,9割以上を『●向き』,それ未満を『左右混合』とする
e) 上向き(エイに多い)はカウントしない
f) 冊数…続巻モノは1冊として考える
参考文献
ちょっと多すぎるので,本企画終了時に一覧を掲載します.

