2009年02月06日

魚話その151 ぶろっほっほっほ(中編)

●左右混合の魚図鑑


まず前回の結果の解釈から.
左向き優勢と書いたが,実際は左右混合も多い.

ある方向から逆の方向へ変化する過渡期…とは考えにくい.
例えば,引用した図が逆向きだったり,互い違いに入れて省スペースを図ったり(カラー図鑑は費用がかかるが,高額すぎると一般向けでなくなる),片側が傷ついて標本写真には不適だったり,希少すぎて満足な写真が撮れなかったり…その他編者の目論見によるものだろう.
スペースの関係上前回触れなかったのだが,例えば『左ページの魚は右向き,右ページの魚は左向き』,『1種で2枚の図を載せ,左側面は白黒イラスト,右側面は写真』,『とにかく左右関係なしに詰め込んだ』タイプなどなど,実際には左右の混ざりっぷりにもいくつかあった.
また,特殊な例として,『王余魚図彙』のような江戸時代に描かれたカレイとヒラメの図鑑も自然と左右混合になる.


王余魚図彙.jpg

図1.左右混合図鑑の特殊な例(王余魚図彙)クリックすると拡大


また,ざっと見て,写真を多用したもので左右混合が多めだったように感じたが,スケッチと違って記録の難易度が変わらないからだろうか.
もちろん貴重なシャッターチャンスはどんな方向からやってくるかわからないというのもあるだろうが.
とにかく,自然界での様子を示す生態図鑑のように,『背景』が含まれている写真には,左右不問のものが多かった.

しかし,そこまで強調するほど,左右が統一されていることにメリットはあるのだろうか?
図鑑は種類の特定という役割を持っているのは周知の事実である.
『ものすごく似ているのだけれど,ビミョ〜に他と違う特徴がある…』そんな微妙な見分けの際に,図鑑に掲載されている方向がバラバラだと,その都度頭の中で左右反転しなければならない.
『魚が好きな人なら苦痛ではないんじゃ?』と思うかもしれないが,それを仕事にしている人にとっては,大量の情報を扱うこともあり,余計な作業はしない方が楽だし,ミスする可能性も減るだろう.
下図は適当に描いた想像上の魚の図鑑で,シチュエーションを変えて描いてみた.
どちらが種類の特定をしやすいだろうか?


左右混合事例.jpg
図2.図鑑の表示例(A:左右混合の場合,B:方向が統一されている場合).
クリックすると拡大


もっとも,見分けるのが難しいグループ内での方向は統一し,グループ間では左右混合しても支障が小さいわけだ.
例えば,ウナギやアナゴなどは左向き,マダイや●●ダイなどは右向き,トラフグと▲▲フグは…そんな構成にしても大きな問題は出ないだろう.

ちなみに古い魚図鑑(おそらく富裕層や学識者向けだろう)にも上下左右混合モノはあり,『分かる人』や『見て楽しむ』人にとって,方向の統一はさほど重要ではなさそうだ.


梅園魚品図正.jpg

図3.左右向きどちらでもない例(梅園魚品図正)クリックすると拡大


冒頭でも書いたように,左右混合図鑑は分類法も含め,僕の中で未整理のデータがごまんとあるので,今回の特集とは別に,再分析に挑戦する予定だ.

さて本題.
『魚図鑑はなぜ左向きか?』というテーマは,いくつかのサイトで考察されているので,次回はそれらの紹介から(まだ引っ張る).


※今回使用した図のうち,図1と3は国立国会図書館に使用を申請し,許可を得ています.
無断複写はマズいので,必要な人は各自国会図書館に申請してください.
posted by osakana at 03:48| 埼玉 曇り| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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