2010年08月31日

魚話その169 もう魚しか見えない そのPhantasm

●Photoshopの被写界深度拡張機能


ようやく没ネタリサイクル兼言葉遊び企画も今回で終了.
さて,今回のリサイクルネタはPhotoshop(CS4以降)を用いたネタ.

まずは基礎情報.
手っ取り早く,図1の2枚の写真を見てほしい.
手前しかピントが合っていない写真(図1a)と,奥までピントが合っている写真(図1b)がある.


sb16901.jpg
図1.a)被写界深度が浅い写真,b)被写界深度が深い写真,c)側面から被写体を見たところ


この違いを表現するのに使う言葉が‘被写界深度’という言葉で,‘レンズの絞り’などによって調節される.
デジタル一眼の広告に‘ボケがきれい’といった謳い文句があるが,これは‘被写界深度が浅い’状態.
僕は写真撮影の趣味も技術もないので,写真撮影の理論の話は一切抜き.
今回のトピックは,芸術的な写真ではなく,ピントが合った顕微鏡写真のための画像処理である.

顕微鏡も光学機器であり,高額機器でもあるわけだが,これも被写界深度は絞りやレンズの調節で調節が可能だ.
しかし,実際に顕微鏡で観察してみるとわかるが,凹凸が激しいサンプルを観察しようとすると,前述した‘ボケがきれい’状態になってしまう.
脳内ではもちろん補完して立体構造を構築できるのだが,できれば人にも伝えられる形で表現したい。
そんなとき便利なのがPhotoshop CS4に追加された‘被写界深度の拡大’という機能.
具体的な方法は最後に『補足』を追加したので,そちらを参照していただきたい.
こちらの図を見てもらえば分かるだろうか?図2a〜eはピントをずらして撮影したもので,図3は図2の5枚の写真を合成したものだ.


sb16902.jpg
図2.ピントをずらして撮影したドチザメの鱗 (aが手前,eが奥;スケールは0.25mm)


sb16903.jpg
図3.図2a〜eを合成した状態 (スケールは0.25mm)


ちなみにものすごく手間はかかるが,旧来のPhotoshopでもコツコツと作業すれば似たようなことはできるらしい.
いずれは図4の写真もリベンジしたいものだ.


sb16904.jpg
図4.カワハギの体表 a)斜め上より,b)側面より (スケールは0.25mm)


さて.
‘合成’という言葉のとらえ方.
なんだか‘捏造した’というニュアンスが含まれていそうだが,実際には写真を見やすいように編集するのが主な目的で,悪意はない.
もちろん‘画像解析ソフトにより編集しました’などの一文は欲しい.
また,別の機材を用い,光学顕微鏡や実体顕微鏡で観察するようなサンプルを,パンフォーカスで撮影することもある.
例えば,National Geographic誌2008年4月号に掲載されているサメの鱗の写真などは走査電子顕微鏡で観察した写真だ.

ただし,ネックもある.
一つは画像に依存した得手不得手.
コントラストが高めの画像が好みのようである.
また,大量の写真の合成には向いてなさそうだ.
試した限りでは6枚前後が丁度良かった.
失敗すると,より一層ぼやけた画像ができてしまい,本末転倒である.

もう一つは学生や本職でこのソフトを使用している人を除くと、気軽に購入できる価格のソフトではない.
現行の画像編集機能を持つPhotoshopは,グレード別に数種類がラインナップされているのだが,そのうちこの機能があるのは上位2種のみで,10万円以上する.
僕は学生の時に‘指定校学生向けライセンスプログラム’なるものがあり,2万円台後半で入手した.
発注から受け取り,申請,認証に全部で数週間かかるが,低価格の代名詞アカデミック版が4万くらいなので,破格の提供である.
偶然生じたこんな状況が無かったら,今回の機能とはまず出会わなかっただろう.
上記のネックに記したとおり,過度の期待は禁物だが,CS4以降のPhotoshopがラボにある場合は,ちょっと試してみるのもありだろう.


本日の魚
ドチザメ(Triakis scyllium
カワハギ(Stephanolepis cirrhifer


参考文献
National Geographic 日本版 2008年4月号


補足
僕はCS4ユーザーなので,最新版とは異なるかもしれないが,やり方を記載した.
Mac版もWin版も両方使っているが,基本的な操作は一緒であった.
1.ピントを少しずつずらした写真を何枚も定点撮影する.
2.Adobe bridge経由で画像を取り込む(画像を選択>ツール>Photoshop>ファイルをPhotoshopレイヤーとして読み込み).
3.自動でPhotoshopが起動する.
4.レイヤーを全選択した後,‘レイヤーの自動整列’を実行する(ツールバー>編集>レイヤーを自動整列)
5.‘被写界深度の拡大’を実行する(ツールバー>編集>レイヤーを自動合成>画像をスタック)


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posted by osakana at 01:25| 埼玉 ☁| Comment(4) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Photoshopって未だに使用したことがないんですよね。
画像の処理は専らデジタルカメラに付属されてくるソフトとWindowsのペイント機能。
なので当然まともな処理ができず・・・
更に写真撮影のスキルなんかまるでないので、
毎回あんな画像になってしまいます^^;
Posted by Phos at 2010年08月31日 07:51
Photoshopは高額なのですが,研究でちょっと画像系を弄ることもあり,けっこう前から使っていました.
それでもアカデミック版が無ければ使っていなかったでしょう.
フリーソフトでGIMPというのがありますが,あれ,かなり良いです.

ただ…なんと言いますか…使い捨てカメラから,いきなり一眼レフを渡された感じと言いますか…
とにかくいろんなことができてしまうので,逆に何をしたらよいか迷ってしまい,訊けるユーザーが側にいることのありがたさを実感しました.
ネットでも大体の操作は探せますが,本当に些細な操作って,知っている人から口頭でさらっと随時訊けるのとそうでないのとでストレスの溜まり方が違うんですよね.

あ,そうだ.
ディスプレイによってもかなり色合いが変わりますよね.
自宅で使っているPCはコントラストが強めに出るのですが,他人のPCで写真を見ると少し暗かったり,イメージと違うことが多々あります.
そこまでこだわるほどの写真は撮ってないのですが.
Posted by osakana at 2010年08月31日 08:35
CombineZMというフリーソフトなどはいかがでしょうか
日本語の解説(布教)ページもありますよ
Posted by 生き物学科 at 2011年07月21日 21:15
生き物学科さん

>CombineZM

情報ありがとうございました.
これ,実は気になっていたのです.
ところが,現在画像処理用のPCがMacしかなく,WinXP環境は別用途の貧弱PCしかないため,使えないまま現在に至ります.
最近Macを買い換えたため,エミュレータをアップグレードしないとWinXPを稼働できないのが一番大きいです.
Scion ImageやJalview,BioEditといったフリーの生物系ソフトの紹介ネタもやってみたいところなのですが・・・
Posted by osakana at 2011年07月23日 06:34
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