2011年07月17日

魚話その180 ようじょ

●養生テープの活用


もう1年以上前の話になるが,職場が移転した.
数百人程度の職場だが,研究用資材が多く,苦戦したのも今となっては良い思い出だ.
当時便利さを再認識した物品がいくつかある.
梱包材やダンボールは言わずもがな.
しかし,個人的に一番感動したのは養生テープであった(図1).


sb18001.jpg
図1.養生テープ a)外観,b)透明感


この半透明テープは粘着力が弱く,粘着物の跡が残りにくいのがウリ.
各社の製品紹介ページを見ると,数値化されたデータが出ている(表1).


表1.代表的な各種テープの粘着力(粘着力に関しては末尾の『補足を参照』)
sb18001t.jpg


梱包の雄ガムテープよりも両面テープが圧倒的に強いのが印象的だ.
実は移転以前より養生テープを使っていたのだが,最初はガムテープの代用品として使用していたため,不便なテープという認識が強かった.
ところが,いざ引っ越しで使用したところ,開梱時に綺麗に剥がれるということの便利さを痛感したのである.

この養生テープ,骨格標本作製にもかなり便利だ.
ここから先は作成法の流儀による違いが大きいので,自己責任で.

骨格標本は,筋肉や腱などの周辺パーツを除去し,骨として綺麗になればなるほど,バラバラになる.
魚はパーツが多く,また,脆いので,わざとニカワ質などを残して交連(繋がっている)状態を維持することが多い.
しかし,それなりにサイズが大きくなると,時としてそれらは悪臭源となる.
特に自宅で保管する人にとっては悩ましい問題でもある.
自分は気にしなくとも,来客や周囲の人への気配りもそれなりに大事なのである.

回避策はいくつかあるが,その一つは,やはり回避対象であったバラバラクリーニングである.
基本的な手法は通常の骨格標本と変わらないので,ここでは省略.
異なるのは,除肉以降の工程.
キッチンペーパータオルや新聞紙に,元の配置を意識しつつ載せていくのがオーソドックスな乾燥方法ではなかろうか?
ところが,乾燥中に移動を強いられたり,風にあおられたりと,様々なアクシデントがホネの紛失や配置情報の損失をもたらす.
パズル感覚で情報ゼロから組み立てるのが好きな人は別として,個人的には,不要な作業の省略で得た時間を,別の魚ネタにあてたいところである.
また,時間経過とともに記憶が曖昧になっていくことも見過ごせない.

そこで,除肉が済んだ骨格を99%エタノールに5分ほど漬けて簡単に脱水し,脱脂が必要な場合は,アセトンなどに10分ほど浸す.
そして,簡単にティッシュペーパーで液体を拭き取ったら,スチレンボードなどに粘着面を上に固定した養生テープに貼り付けるのである.
こうすることで,多少の風や振動などでは動じない乾燥台ができる.


sb18002.jpg
図2.乾燥台利用の一例 a)同時に複数種の骨格標本を乾燥,b)脊椎骨の順序情報を維持


ちなみに脱脂工程が短すぎると感じるかもしれないが,これはあくまで乾燥前処理であり,位置関係が確定した後に改めて,部分ごとに脱脂をすればよい.

最後に注意点.
1つ目は長期間貼り付けておくと,やはり糊が付着する.
2つ目は淡い色ゆえ貼り付けた骨格が見づらい.
最近つや消し黒の養生テープを見つけたのだが,粘着面は白色交じりであったため,期待したほどではなかった(図3).


sb18003.jpg
図3.自宅で使用している養生テープの表裏(右:粘着面)


粘着面もつや消し黒であったなら,細かい骨も見つけやすく,貼り付け固定したまま撮影もできるのだが,未だそのような商品に出会ったことがない.
そのようなわけで,裏側も黒い養生テープを今日も捜し求めているのである.


本日の魚
アオメエソ:Chlorophthalmus albatrossis (Jordan & Starks, 1904)
カタクチイワシ:Engraulis japonicus (Temminck & Schlegel, 1846)
テングダイ:Evistias acutirostris (Temminck & Schlegel, 1844)
トクビレ:Podothecus sachi (Jordan & Snyder, 1901)
ナマズ:Silurus asotus (Linnaeus, 1758)
ニギス:Glossanodon sp.
ボラ:Mugil cephalus (Linnaeus, 1758)


参考文献
佐々木 彰,岡 有作 (2010) 硬骨魚類の骨格標本作製法 Sci. Rep. Mus. Tokai Univ., 2010, 10, 51-57
伊藤恵夫(1992)排水パイプ用洗浄剤を利用した小動物骨格標本作製法.化石研究会会誌,25,43-44.
ニチバン製品情報→リンク
日東電工株式会社製品情報ページ→リンク
積水化学工業株式会社製品紹介→リンク


補足
粘着力:ステンレスや測定用の物体にテープを貼り付け,直角,もしくは180度(会社によって異なる模様)折り返し,一定速度で剥がした際に,どれくらいの力に耐えうるか・・・をテープ幅当たりの数値で表現する.
恐らく工業規格の書籍を見ればもっと詳細に書いてあると思われるが,異なるメーカーの,かつ,様々なテープを比較しているため,今回は概略のみ.
ちなみにメーカーによってはN(ニュートン)を使用する場合と重量(kg)を使用する場合があるが,ブログ内では直感的にイメージしやすいよう,計算し直してkgに統一した.
なお,使用時のテープの幅はそれぞれ異なり(表の値と実際の数値は数倍増減しうる),貼り付け面との相性や環境条件でかなり変動するようなので,ブログで紹介するのは目安の数値とご理解いただきたい.
posted by osakana at 16:36| 埼玉 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
タイトルを読んでmixiから期待して着たのに!
テープの話かwww
Posted by 骨オヤジ at 2011年07月17日 18:53
どもです.
この突っ込みがくるのを待ってましたw
実は引っ越しの業者の人同士の会話で『ちょっとそこのようじょ取って』と言ったのが強く印象に残っていたので,こんなタイトルになりました.

最近一度に何魚種も骨格を取っているからと言うのもありますが,このテープ,便利すぎて最近は欠かせません.
Posted by osakana at 2011年07月17日 19:04
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