2015年01月01日

魚話その201 紅白鮫合戦

●アカシュモクザメとシロシュモクザメの頭骨は結構違うっぽい


気付けばもう(これを書いているのは)大晦日.
ホネサミ2014では,詰め込み過ぎてイマイチな展示をしてしまったばかりか,誤同定したまま展示するという失態を犯してしまった.
そんなわけで,今回はその辺りをば.

最初に言い訳をさせてもらうと,日本産魚類検索第3版ではアカシュモクザメとシロシュモクザメは頭頂部の凹凸具合で区別されている.

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図1.アカシュモクザメとシロシュモクザメの一番有名な見分け方


これは英名にも反映されており,先端が凹むアカシュモクザメはScalloped hammerhead,凹まないシロシュモクザメはSmooth hammerheadと呼ばれている.
実際には背鰭基部の長さの比でも確認できるようなのだが,まあ水族館や漁港に転がっているシュモクザメを見ても,なんとなく分かる.

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図2.a)葛西臨海水族園のアカシュモクザメ,b)友人から貰ったシロシュモクザメ


さて.
ホネサミに向けて防歪処理をしたシュモクザメ頭骨を展示するため,沖縄のS君より譲って貰ったロリ個体を捌こうとしたところ,何か様子が違う.
頭部の凹みは見当たらず,シロシュモクザメのように見えるのだが,背鰭基部の比率がアカシュモクザメっぽい.

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図3.S君から貰ったロリ個体のシュモクザメ.
体色の関係で凹んでいるように見えるが,その外側に白い周縁があり,指でなぞると頭部の凹み()が不明瞭.



決め手に欠けたが,頭部の凹みを優先してシロとし,ホネサミに出展したのであった.

ところが,サメ好きの知人に見せたところ,どうも頭骨の形状がアカっぽいと言う.
片方は比較用に歪ませてしまったし,そもそも成長に伴う変形かと思っていた.
少し気になったので調べたところ,シュモクザメ科の頭部について研究した文献を見つけ,シュモクザメ科の頭骨を系統と重ねた図から,アカとシロで二つの差異を見出すことができた.
第一に吻軟骨の孔の大小/有無(),第二に鼻殻の突起の尖り具合()が異なる(図4b).

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図4.a)シュモクザメ頭骨の名称,b)アカシュモクザメとシロシュモクザメの頭骨
サメのホネ界隈で用いられているであろう日本語訳が見当たらなかったので,そのまま表記した.※1IOL: distal lobe of preorbital process,※2FPP: distal wing of fused preorbital and postorbital processes



この情報を基に改めて手持ちのロリ個体を見ると,シロではなくアカである可能性が非常に高くなった(図5).

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図5.a)シロシュモクザメの頭骨,b)アカ/シロ不明だったロリ個体の頭骨


成長による変形は確認していないし,できれば複数個体を扱った上での情報としたいのだが,シュモクザメの頭骨が主題の文献でも孔の大小が描き分けられているので,恐らく大丈夫だろう.
日本産魚類検索は種同定で非常に重宝するのだけれど,僕のように分類経験が乏しい者が使うと,『極めて凹む/あまり凹まない』といった程度で分類する形質は,断定しづらいことがある.
両者を同時に並べ,自分の中で一度比較できれば分かるのだけれど,一般陣として入手できる魚の種類には限りがあるので,片方しか入手できないことも多々ある.
今回はシュモクザメという,比較的分かりやすい特徴を持った種のはずだったのだが,まんまと引っかかってしまった(悔しい).
今後は迷ったら,頭骨を取ってみようかなと思う次第である.

余談だが,図4aに示したように,シュモクザメをシュモクたらしめているパーツは鼻殻と呼ばれ,鼻のパーツとなる.
それだけでも結構不思議生物なのだが,よく見ると鼻の穴が他のサメのように正中線近くではなく,眼の側にある(図6).
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図6.アカシュモクザメの鼻の位置 a)生体,b)骨格

かなり変わった場所にあるので,シュモクザメのイラストを描く時に注意して欲しい.

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図7.a)シュモクザメで間違いがちな鼻の位置,b)一般的なサメ・エイの鼻の位置


そういえば,ファインディング・ニモのシュモクザメことアンカー,鼻の位置がちょっと気になる.
いや,そういう野暮なことを言ったらつまんなくなっちゃうから,追求しないけれどね.
おや…?
誰か来たようだ….


本日の魚
アカシュモクザメ:Sphyrna lewini (Griffith & Smith, 1834)
シロシュモクザメ:Sphyrna zygaena (Linnaeus, 1758)


参考文献
日本産魚類検索 (中坊徹次 編,東海大学出版会)第3版
Mara, K., R. (2010) Evolution of the Hammerhead Cephalofoil: Shape Change, Space Utilization, and Feeding Biomechanics in Hammerhead Sharks (Sphyrnidae). University of South Florida(恐らく学位論文)
三重県水産研究所 おさかな雑録
posted by osakana at 02:55| 千葉 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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