2005年07月26日

魚話その008 見栄っ張りのイワナ

●イワナの背伸び


渓流釣りのターゲットとしてイワナはかなりポピュラーな魚である。
鬱蒼と茂った藪をかき分け、ようやくたどり着いた細い流れに仕掛けを投じると…かつてイワナが渓流の妖精とかそんなニュアンスの言葉で呼ばれていた時代もあった。

さて。
繁殖期に入ったイワナは産卵床を作って産卵を行なう。
このとき成熟したメスは、より大型個体のオスをペアとして選ぶ。
大きなオスとの間に出来る子供はやはり大型になる資質が期待されるわけで、
『自分の子孫は、他人の子よりもイイ子と出会って欲しい!!!』という目的をモロ出しにした結果とも考えられる。
で、せっかく成熟しているのにアブれちゃった小さなオスはどうするのか?

主な戦略は2パターン。

1.こっそり参加しちゃう
 イワナはメスが産卵床に産んだ卵へ精液をかけるという体外受精を行なっている。
 したがって、大きなオスの目を盗んでこっそり放精しちゃうことは可能なのだ。
 この行動をスニーキングといい、こっそり放精しちゃう個体をスニーカーと呼ぶ。
 スニーキングは結構いろんな魚種で知られている。
 タイリクバラタナゴやブルーギル、ベラの一種のブルーヘッド、トゲウオなど。
 スニーキングという戦略の有効性はDNAを用いた父子鑑定から分かってきた。
2.大きくなっちゃう
 成長を待つという意味ではなく、自分が相対的に大きくなっちゃうということである。
 イワナの体サイズは上流域に行くほど小さくなる。
 繁殖にアブれた小さなオスは上流を目指す。
 で、『自分は周囲のオスより大きい』という状態を作り出すのだ。

余談だが、上流域ほどイワナのメスの比率が高まるという報告もある。
苦労して遡上したチビオスイワナにとってはウハウハのハーレム気分なんだろうか?
いや、実際どうなんだろ?
ハーレムって刑罰にも使われたみたいだし。
不義を働いた男に入れ替わり立ち代り女の人が性行為を強要し、不能にしてしまうという刑だ(←ソースが行方不明)。
ちょっとやだなぁ…。

脱線した。
2の戦略を初めて知ったのは、2002年、僕が大学3年生の時である。
『口から指を入れる触診で、イワナの雌雄が分かる』という記載を見つけた知人Aが僕に教えてくれ、その雑誌の中で紹介されていたのだ。
しかも、数多の幸運が重なり、この研究をしている先生方にくっついて白神山地核心部の調査にまで連れて行ってもらった。
世界遺産の一つである白神山地には一般の立ち入りも可能だが、それは緩衝地域(バッファーゾーン)と呼ばれるエリアまでで、核心部に入るには手続きが必要なのだ。
そんな貴重な体験をしつつ、不謹慎ながらちょっと感じたこと。
可愛い女の子が周囲に普通の女の子と一緒にいるのもおんなじ現象なのだろうか…と。


今日の魚
イワナ(Salvelinus leucomaenis)→FishBaseの画像
タイリクバラタナゴ(Rhodeus ocellatus ocellatus)→FishBaseの画像
ブルーギル(Lepomis macrochirus)→FishBaseの画像
ブルーヘッド(Thalassoma bifasciatum)→FishBaseの画像
トゲウオ(Gasterosteus aculeatus)→FishBaseの画像


参考文献
日経サイエンス (鹿野雄一 日経サイエンス社) 2002年2月号 P112〜115 3次
貝に卵を産む魚 (福原修一 トンボ出版) 第1版P26 3次
魚類の繁殖戦略 (桑村哲生 海游社) 第1版P20,P104,P165 3次


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posted by osakana at 00:22| Comment(1) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
●補足です

スニーキングという言葉は魚種によって扱いが違うようである。
通常は、あぶれオスが交尾の隙をついて放精する際を指す。
しかし、ベラの研究者たちの間では、以下のような使い分けをすることもあるらしい。
・ストリーキング→あぶれオスが交尾の隙をついて放精する
・スニーキング→あぶれオスが、縄張りオスの隙をついて侵入し、縄張りにいるメスと交尾しちゃう
ああ、ややこしい!

参考文献
魚類の繁殖戦略 (桑村哲生 海游社) 第一版P4
Posted by osakana at 2005年07月26日 00:35
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