2005年09月06日

魚話その27 ネコに真珠!?

●魚のギラギラ


タチウオという変わった魚がいる。
漢字で書くと太刀魚。
細長くて薄っぺらい、1mほどのギンギラギンな魚である。
ガチガチの歯を持っており、容姿はさりげなくない。
関西以南では食用魚として一般的なようだが、少なくとも十数年前まで関東ではあまり一般的ではなかった。
で、釣りでは結構有名なターゲットであり、ギンギラギンの外観と形状から『妖刀』だとか『サーベル』と称されたりする。

さて。
魚のギンギラギンはグアニンと呼ばれる物質の結晶からできている。
高校生物を習った人ならピンと来るかもしれない。
そう、DNAの構成要素であるあのグアニンである。
グアニンが結晶化し、体表に沈着することであのギンギラギンができるのだ。
ただし、普通の魚の場合グアニン色素層の外側に鱗の層があり、ギンギラギン度はタチウオ程ではない。
タチウオはグアニン色素の層がむき出しになっているので、余計にギンギラしているのだ。

ちなみにこのギンギラギンだが、魚類では甲状腺ホルモン(チロキシン等)によって代謝が調節されている。
例えば、サケが川を下る時、小判模様(パー・マークという)が消えて銀色一色になる。
銀毛と呼ばれる現象なのだが、これはチロキシンが核タンパク質の代謝促進を行い、鱗内面・真皮下部へのグアニン結晶が沈着したためである。

で、このグアニン結晶、他にも使われている場所がある。
それが目である。
闇夜にライトで照らされた時にギラッと光るネコの目、あれがグアニンに由来しているのだ。
タペタム(タペータムとも輝板とも呼ばれる)という板状構造を網膜の下側に形成しているのだ。
眼球内に入ってきた光を、タペタムで内側から再度反射させることによって、暗闇のわずかな光をも使ってやろうということなのである。

ちなみに魚類でもタペタムを持っている種がいる。
深海の魚がそれだ。
やはりわずかな光を最大限利用してやろうということらしい。
キンメダイやハダカイワシ、チカメキントキなどでタペタムを持っていることが知られている。

さてさて、前出のタチウオのギンギラギン、昔はこれを剥がしてガラス球の内側に貼り付け、人造真珠としていた。
人造真珠発祥の地はフランスとされており、かつては魚の鱗をガラス球に内張りしていたようだ。
これが日本に持ち込まれ、よりギンギラギンなタチウオを利用するようになったのだろう。
今はパールエッセンスと呼ばれる化学薬品を用いているが、古い図鑑ではタチウオの説明に『人造真珠の原料』と書かれている事が多い。
が、一歩間違えたらネコの目のタペタムが人造真珠に使われていたかもしれない。
ネコに小判ならぬネコに真珠…違う意味のことわざになっていたかもしれない…


今日の魚
タチウオ(Trichiurus japonicus)
tachiuo.jpg

キンメダイ(Beryx splemdens)
ハダカイワシ(Lobianchia gemellarii)
チカメキントキ(Cookeolus japonicus)


参考文献
新版魚類生理学概論 (田村保 他 恒星社厚生閣)第1版 P144,245 3次


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posted by osakana at 19:31| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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