2014年01月28日

魚話その198 中の人

●大学構内で見かける人々

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大学教授はどのようなイメージなのだろうか?
白衣を着た白髪の爺さんが,終夜実験している光景だろうか?
周囲の人と話をしていると,そうでもないらしい.
ついでに大学構成員を観察した結果,結構多様なことが分かったので,すごく簡単に書いてみたいと思う.
学生時代の記憶に基づくので,最新/詳細情報まではご勘弁.

・一般の人
学生についてきた親戚や友人など様々だ.
構内が一般開放され,ジモティー(死語ですな)の散歩コースになっていることもある.
散歩中の老人だと思ったら,馴染みのない研究室の教授だったりすることもあるのが怖いところ.

・民間企業の人
警備員,薬品や機器の販売や修理に携わる人,学内コンビニの店員など,探すと結構多い.

・共同研究の人
大学内で研究しているのだけれど,本籍は別の大学や機関にある人.
今風の言葉で言ったら,コラボしてる人.
研究は,必要に応じて外部に出向することもあるのだ.

・職員
事務系と技術系に大別される.
事務系は,いわゆる事務室の人達で,経理・書類手続きなどでお世話になるはず.
技術系は実験や研究に関わる人達で,学生〜教員とともにあれこれ実験や管理を行ったりしている.

・学生
僕(理学部)の話をすると,最初の4年間がいわゆる『大学』で,『大学生』または『学部生』と呼ぶ.
進学すると『大学院』となり,学生は『大学院生』または『院生』と呼ばれる.
大学院は『修士課程もしくは博士前期課程(2年間)』と『博士課程もしくは博士後期課程(3年間)』に分かれ,各課程での審査をパスすると修士号や博士号を取得できる.
分野の制限はなく,例えば理学部から水産学部の大学院に進学して博士号を取れば博士(水産学)となる※1.
ただし,医学の博士号と医師免許は別物なので,医学部以外の学生が医学博士号を取得しても,開業できるわけではない.

・ポスドク
博士号取得後の,いわゆる武者修行時代に相当する.
博士号取得すぐに教員になることは難しく,何年かポスドク時代を送る人が多い.
学生〜ポスドクの辺りの話題は書き出したらキリがない.
『ハカセといふ生物』という漫画(連載ブログで閲覧可能)がイメージを掴みやすいので,お勧めだ.
実際には作中には出てこないダークな部分がきっとあったり,分野固有ネタもあるのだろうけれど,生物の実験系ラボであれば,『こんなエピソードありそう…』と感じることが多いと思う.

・教員
かつては助手,講師,助教授,教授と分かれていたのだが,助手,助教,講師,准教授,教授に名称が変わった※2.
さて冒頭に出てきた教授であるが,会議や授業が非常に多い印象がある.
学生視線で『実験の相談をしたいのに,また会議なのか…』程度の理解ではあるのだけれど,『教授を探して実験室で発見』というパターンは案外少なかったし,爆発して髪の毛がチリチリ…というのも見たことがない.
また,他者の論文の査読や書籍の執筆・監修,学会の運営等を受け持つことも多く,様々なデスクワークに時間を取られている印象が強い.
ついでなので,小学校に入学してから教授になるまでのフローを図にしてみた(図1).


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図1.教授になるまでのフロー
途中で退職する人や,全然異なる業界から教員になる人など,例外は多々あるが,とりあえず理系の場合,多くはこんな感じではないだろうか?


このように,一見多様性が少なそうな大学の中にも様々な人がいる.
もちろん他のギョーカイでも同じことが言えるはずだ.
シラス干しを食べながら,そんなことを思ったのであった(やっと魚).

※1.●●博士という表記も聞いたことがあるかもしれないが,1991年の学位規則改正で博士(●●)という表記に変更になったようだ(下に掲載).
※2.こちらは学校教育法の改正で2007年に表記が変更されたようだ.
詳しくは,Wikipediaの解説を参照(下に掲載)して欲しい.


参考文献
研究者マンガ「ハカセといふ生物」→リンク
Wikipediaの『博士(●●)』に関する記載→リンク
Wikipediaの教員名に関する記載→リンク
posted by osakana at 01:33| 千葉 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月20日

なまけっと遊びに行きます

出展者ではなく,客として.
なまけっと,面白そうですね,
http://ikimonomarket.island.ac/index.htm
知り合いが何グループかいるので,遊びに行こうと思ってます.

2回目があるとしたら,『自分が思っていたのと違った…』『自分も出てみたい』『今後の反省点として…』等々があって様相が変わるかもしれないので,1回目も抑えておきたいところです.
魚関係ブースで不振な坊主頭の眼鏡がいたら,たぶんそれは僕です…
タグ:なまけっと
posted by osakana at 17:37| 千葉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 筆者からの連絡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月03日

旅モノその40 魚のホネ屋探訪

ホネ好きがホネを入手するにはいくつか方法がある.
もちろん自分でホネ取りすれば手っ取り早いが,作業の得手不得手,家族の理解,動物の入手等でなかなかうまくいかない.
そんなわけで,世のホネ好きはネット通販やイベント等を活用してコレクションを収集していく訳だ.
実店舗もあるにはあるが,委託販売ばかりで,作者は店舗にはまずいない.
そんな中,実店舗販売で,しかも魚の頭骨を中心に販売という,恐ろしくニッチな店が都内に誕生した.

『いぞらど isolado』はワンフェス2013夏で出会ったI氏が経営する店で,開店したのは最近のこと.
isoladoとはポルトガル語で『隔絶された』といったニュアンスの言葉で,恐らく英語のisolatedに相当する.
そこから転じて,専門家の間では『現代文明とは異なった別の文化や言語,価値観などを有する独立したひとつの文明』=『アマゾンの奥地で未だ現代文明と接触を拒む未開の民族』を指す言葉として使われているそうで,店名もそこからとったとのこと.
ワンフェスで話した際に都内で店舗経営もしていると知り,すぐにでも遊びに行きたかったのだが,なかなか都合が合わず,気付けばワンフェスから1ヶ月以上経ってしまった.


さて.
三軒茶屋駅を下車し,閑静な住宅街をのんびり15分ほど歩いたところに『いぞらど isolado』はある.
窓から中を覗くと,気さくそうな男性が卓上のPCと睨めっこしていた.

店主のI氏は平日にホネを取り,週末に店を開く.
小ぢんまりとした店内には多種多様な魚の頭骨が整然と並び,こんな魚種までホネにしたのか…と,ちょっと驚く.



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図1.店内の見取り図(アルファベットは以下の写真と撮影方向に対応).


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主なラインナップは国産海水魚と南米・東南アジア産淡水魚の頭骨で,多くの商品が1000円台で売られていることに再度驚く.
あまりの低価格ぶりにいささか不安を隠せないが,材料費や人件費(自分の手)を節約し『買ってみようかな』という価格に抑えたとのことで,安かろう悪かろうというわけではない.

実際に手に取ってみると,歯がきっちり残っている.
歯が大きくて少ない爬虫類や哺乳類と異なり,魚類は細かくて小さな歯が密集していることが多いため,抜けた歯を接着して再構築することが難しい.
そのため,歯の残り具合は重要なチェックポイントになるのだ.


下の写真は,僕がほねほねサミットの展示用に取ったホネで,歯の残り具合が全く異なるのがわかる.
パっと見では頭骨が取れていても,歯を見ると抜けてたりすることもあるのだ.


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図2.頭骨を取った際の歯の有無



口や胸鰭のポーズなどは人によって好みが分かれるところだが,関節を濡らしてやれば多少の調整は可能なので,各自で好きなように再ポージングすれば良いと思う.
実際の商品は『旅モノその39』で紹介済みなので,今回は省略.


他にも書きたいことは多々あるが,ウェブサイトでの不特定多数への情報公開は様子見した方が良いというのが僕とI氏の共通見解なので,住所その他の詳細は割愛する.
興味のある人は,店舗のウェブサイトに掲載されているアドレスにメールを送れば,快く店舗の詳細情報を教えてくれる.
また,『現物を実際に手に取り,納得した上で購入して欲しいので,店舗販売を中心にイベント等に積極的に参加していきたい』とのこと.

購入を考えている人は,手ブラで帰りたいからといって宅配便は避けた方が良いだろう.
僕がほねほねサミットに参加した際も,小型魚の華奢なホネを保護できる梱包を低コストで済ませる方法が思い付かず,宅配便に踏み出せなかった.
破損はないにしても,外れてしまったパーツの組立てを電話やメールの文書で伝えあうことを考えると,ちょっと面倒だ(梱包法は僕も教えてほしい).

都内某所にひっそり佇む魚のホネ屋,魚好き・ホネ好きは上京の折に時間を作って覗きに行くと楽しめるはずだ.


店舗ウェブサイト→いぞらど isolado 魚の骨格標本日誌
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2013年10月01日

魚話その197 ポセイドンK

●論文の『孫引き』の意味について考える


何気なく使用している言葉の意味が,本来とは異なる場合がある.
『破天荒』や『姑息』といった言葉が取り上げられた記事を読んだことがあるかもしれない.
定義に厳しい学術系用語は一意的に用いられている…と思いきや,身近なところに例外があった.
それが『孫引き』という言葉.


まずは学術文書について.
研究成果は,論文などの学術文書で公開する.
多くの自然科学系論文は『要旨』『背景』『手法』『結果』『考察』『引用文献』に分かれ,読み手が分かりやすいよう,各項目の初めに『考察』などのように明示される(図1).


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図1.論文の構成の一例 
a. 題名(title)…論文の題名. b. 著者(authors)…論文内の研究に関わった人が出てくる.順番も大事で,一番関わった人が最初. c. 要旨(abstract)…論文の概要.無料公開していることが多い. d. 背景…(introduction)理解に必要な先行研究や原理を紹介. e. 手法…(materials and methods)再現性を高めるため,シンプルかつ正確さが求められる. f. 結果…(results)実際のデータが掲載される項目.データ解釈を行わず,記載がメイン. g. 表(table)…タイトルと説明文は表の上に,補足文は下に書く. h. 図(figure/fig.)…表と異なり,タイトルも説明文も図の下に書く. i. 考察(discussion)…データの解釈を行う項目. j. 謝辞(acknowledgements)…実験操作やサンプル提供,英文校閲を手伝ってくれた人などお世話になった人,使用した研究予算を紹介する. k. 引用文献(references)…本文中で引用した文献の詳細情報のリスト.


英語論文の場合,専門用語を除けば,恐らく高校英語の教科書に載る文学作品よりも読みやすい.
他文献と情報が重複する場合は引用による紹介で文章を単純化し,より相手に伝わりやすいよう工夫されている.
例えば,『●●に関する処理は××(2005)の手法を用いた』『■■に関しては▼▼(1999)が述べているように…』といった表現を用いる.
そういった××(2005)や▼▼(1999)のタイトルがリスト化されているのが『引用文献』という項目だ.

さて,冒頭の『孫引き』.
論文や専門書を読んでいると,本文中で引用された文献の情報が気になってくることがある.
引用される情報は文献の一部であるから,その他の部分が気になるのだ.
派生した興味で,もしくは,より自分に関連性が高そうな情報を得るために,最初に調べていた文献の『引用文献』のリストから文献を見つけ出し,さらにその文献の『引用文献』のリストから文献を見つけ出し…といった行為を『孫引き』と呼ぶ人(僕も含む)がいるのだが,どうも本来はそういう意味ではないようだ(図2a).


広辞苑によると『他の書物に引用されたものを,原点にさかのぼって調べることなく,そのまま引用すること』という,どちらかといえば,いや,かなりネガティブな意味だ(図2b).
ひょっとしたら文系の専門用語かと思い,手持ちの科学論文執筆の指南書を漁ったが,やはりネガティブな意味であった.


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図2.『孫引き』二様 a)僕が認識していた用法,b)辞書に掲載されていた本来の用法


従って,より多くの原著文献を積極的に探すというポジティブな意味で
『いやぁ,関連情報が多くて,昨夜は孫引き・ひ孫引きしまくりで疲れましたよ…』
と言ったつもりなのに,
『情報が多いから,巧いこと要約してある文献を丸写しするのに疲れましたよ』
というニュアンスで伝わりかねない.

基本的に(本来の意味での)孫引きは避けるべきとされるが,入手困難な古い文献等で,例外的に使うこともある.
引用の形式が何にせよ,調べ物をして報告する場合には,出典の表記や,引用部分の明示は大事だ.

知っている人には当たり前のことなのかもしれないが,周囲に訊いた限りでは,僕を含め年齢・出身ラボ関係なしに『原著を遡る』という意味で使用している人が多かった.
『この作品のDNAが第二作にも引き継がれ…』というように,本来とは異なる慣用的な表現が広まっているのだろう.
時代とともに言葉の方法は変化するし,実際こちらの意図するところで伝わってしまうので,誤用とすべきかわからない.
しかし,『孫引き』はどちらの意味も同じ分野の人が使用する用語ゆえ,アンジャッシュの勘違いネタ漫才のように,互いの認識がずれたまま話が進んでしまう可能性もあるかも,と酒を呑みながら思った.


参考文献
広辞苑 DVD-ROM版(新村 出,岩波書店)第6版
集英社国語辞典 (森岡 健二 他,集英社)第1版
これからレポート・卒論を書く若者のために(酒井 聡樹,共立出版)第1版,P143-145
一流の科学者が書く英語論文(Ann M. Korner 他,東京電機大学出版局)第1版,P72
フィールドの観察から論文を書く方法―観察事例の報告から研究論文まで(濱尾 章二,文一総合出版)第1版,P176-177
タグ:孫引き
posted by osakana at 00:50| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月31日

旅モノその39 魚頭骨三態@ワンフェス

2010年以来毎回参加しているのだが,ブログとしては久々のワンフェスネタである.
漠然と紹介するのもつまらないので,これまでも魚や生物フィギュアに絞って紹介してきた.
今回はさらに絞って魚の頭骨である.
絞りすぎて3ブースしかないのだけれど.

さて.
今回も行列が消える昼過ぎにゆったり到着.

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ディーラーダッシュが起こるようなジャンルではないので,安心なのだ.

●Galvanic
さっそくGalvanicのブースに向かい,差し入れしつつ談話.

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ホントに金にならない客ですんません.

Galvanicと言えばホネを中心にした商品展開で有名だが,その一つにウルトラ怪獣の頭骨シリーズがある.
実は今回,骨オヤジさんと原型師さんの呑み会打ち合わせにちょろっと混ぜてもらった.
いつも通り,二人の会話を聞きながら呑んでいただけなのだけれど.
それが海底原人ラゴンの頭骨.
原型師さんの解釈を混ぜ込んだ結果,カサゴっぽい感じで仕上げたいとのことで,微力ながら一言二言コメントさせて貰った.
仕上がりは写真の通り.

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独自の解釈を混ぜ,『●●っぽさ』を表現するのは非常に面白いことだと思う.
脂焼けした魚のホネを参考に着色してみたくなる.
個人的に今後も要注目ジャンルの一つだ.
そして個人的にはグビラ頭骨の再販もして欲しいな…と.


●イワシ金属化
次なる魚頭骨は『イワシ金属化』という,魚の頭骨を鋳造(ピューター?)して販売しているディーラーさん.
実は去年の夏に発見して魚のホネ談義をしたら顔を覚えてもらえたようで,毎回目が合うと呼び止めていろいろ話をしてくれる.

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原型である魚の頭骨を取ることにもアクティブで,いろいろ面白い形状の魚を紹介すると,次のワンフェスで『宿題難しいですわ〜』と語ってくれる.
出会った当初,頭骨はサワラとタチウオの2種類しかなかったが,現在はオオカミウオやらダツやらの珍魚もラインナップに加わり,次に何が金属化されるのかが楽しみなブースだ.

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セミエビ(漁師が食べてしまったそうで,腹側は空だったりする)

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オコゼ

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アナゴ

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サワラ


●TOY-TORCHA
そして,最後がTOY-TORCHAブースのisoladoさん.
今回のネタの元になったディーラーさんだ.
きっかけはGalvanicさんのブースで談笑していた際に,『魚の頭骨をあっちの方で扱っているところがあるらしい』と言う情報が入ってきたこと.
ワンフェスガイドブックの目次は五十音順にディーラー名と取り扱い内容が列挙されており大変見やすいのだが,版権絡みのネタしか載っていない.
従って,前述したGalvanicさんだと,目次には『Galvanic…ウルトラマン…ブースの場所』と書かれ,ホネという単語は出てこない.
そのため,ガイドブック中のサークルカット内の文字をくまなく読んでキーワードを拾うか,事前にGoogleで検索しまくるか,地道に会場を歩き回って探すほかなく,大変なのだ(サークルカットのイラストはあまりアテにならない).

最初は話半分に探していたのだが,いざブースを見つけてみるとびっくり.

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大量の魚の頭骨,しかも非常に安い(1000〜2000円台が多かった).

個人的経験から,細い歯が大量に生えているカサゴの類は除肉中に歯が抜けやすく,丁寧にホネが取れているかの判断材料になるので,さっそくチェック…
びっしり残った歯を見て,再度価格を確認してびっくり.
安すぎる.
いろいろあって僕は国内の珍魚を入手するのは比較的容易な状態にあるのだけれど,いわゆる熱帯魚の入手は弱い.
そんなわけでいろいろ目移りしながらもホーリーとペーシュ・カショーロを購入.

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ホーリー

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ペーシュ・カショーロ

ワンフェスのお約束,ディーラーさんに断りを入れて写真を撮り,ブログ掲載の許可を得る際に,ふとこのブログ名を出したところ,かなり熱心に読んでくださっている方であることが判明.
今年に入って自分のブログの読者と2人も会うとは夢にも思わなかった(閲覧者数から考えるに,この遭遇率はかなり高い).
『素人魂とかいうマイナーな魚のブログをやってまして…』と話を振った際に,『名前は忘れちゃいましたけれど,たぶん読んでます』とか『あ,タイトルはなんか聞いたことがあります』ではなく,『素人魂〜特濃魚汁〜ですよね』とフルタイトルで返してくれたり,『最近だと●●のネタ書いた方ですよね』と返されると,本当に読んでいるのが伝わって非常に嬉しい.

『ブログ更新してくださいね』との言葉とともにいただいたキュウリウオとネズミゴチの頭骨の視線をヒシヒシと感じつつ,この文章を書いている次第である.

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キュウリウオ

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ネズミゴチ


三者三様の魚の頭骨を見せられ,ちょっと負けてはいられないなぁということで,僕も最近作ったキアンコウのホネなどを.

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キアンコウ全身骨格とその支柱(依頼品)

近いうち魚話の方でも紹介する予定だが,簡単なロウ付けと真鍮エッチングができるようになったので,個々のホネに合わせた支柱やネームプレートを作れるようになった.


最後に.
骨オヤジさんのTwitterのフォロワーはご存じかもしれないが,7月の初めに我が家で骨オヤジさん,NeQroさんらと呑み会をし,ちょこっと部屋のホネの写真が出た.
https://twitter.com/honeoyaji/status/353540517105131520
すべてを見せぬ方が想像をかき立てて良いのではないか…と思いつつ,全景を撮るのが面倒だったので,今回は部分みせ.

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小型のホネ用の棚

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大きめの頭骨エリア(現在支柱を作成中)

みなさんのホネ,この部屋のホネ棚に置かせてもらいます.
posted by osakana at 02:08| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅モノ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月14日

魚話その196 でぃーふぉーしー〜Demands on Developing Digital Devices and Contents〜

●電子版の図鑑を妄想する


去年の話.
沖縄出張のため羽田空港を徘徊していたら,巡回スタッフがタブレットPCを持ち歩いているのを見かけた.
口頭のみで伝えられるよりもわかりやすいし,巡回スタッフの身体的な負担も減りそうだ.
自宅でもいともたやすくえげつないほどにダラけてネットができるので学会のポスター発表で話す際にも,質問者に合わせて補足データを見せることができるので,僕の中で便利グッズとして定着した.
その一方で,10インチのiPadをプライベートで外に持ち出すことは減りつつある.
吞み会などで写真を見せるために使うと,若干『準備してきました』と思われそうな気がしてしまうのと,常備するには結構重いのだ.
対して小型モデルやスマホでは,画面が小さいので見せづらい.


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図1.画面サイズの違い ガラケー(左),iPod touch(スマホサイズ;中),iPad(右)
いずれもretinaディスプレイを搭載しており,画像や文字の品質に不満は無いのだが,携帯性と見せやすさの両立が難しい.


折りたたみに出もしない限り,見せるデバイスと電話としての機能の両立は難しそうなので,現状では会う人から判断して使い分けるしかないだろう.


タブレットで思い出した.
日本産魚類検索の第3版(全2400ページ)が出た際に,電子化したら楽かな…と思い,2部購入して自炊してみた.


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図2.日本産魚類検索第3版
第2版から800ページ増え,2400ページに.2部重ねると,厚みが500mlのペットボトルの高さを超える.


確かに市場や野外の調べ物や,枕元で眺める際には重宝している.
ところが,持ち出し頻度は増えたものの,電子化の旨みを思ったより感じない.
僕が電子化で想定しているのは,携帯性,スペースの確保,テキスト検索による書籍のデータベース化,それと電気を消した寝床で読めることなのだが,魚類検索でテキスト検索を使うことはあまりない.
また,一般書籍と異なり『次は10ページ後に飛んで…』といったことはザラなので,ラボ等で腰を据えて使用する場合には書籍の方が使いやすいのだ.


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図3.ページが飛ぶ書籍(クリックして拡大) a) 検索図鑑,b) 道路地図
著作権のナニがアレなので,概念図を描いてみた.どちらも印刷サイズに合わせて膨大な情報を掲載するため,次の項目が掲載されているページ番号が書かれている.魚類検索図鑑は持っていなくとも,道路地図は見たことがあるのではなかろうか?


ハイパーリンクを使い,ワンクリックで次の該当ページへ直接飛ばせるようにしたものの,間隔が詰まるスマホサイズではページ送り機能と誤認されることが多い.
せっかく印刷サイズから解放されるのだし,ページめくりではなく,科ごとに一枚の画面にまとめ,スワイプ操作で辿っていけると使いやすい気がする(再レイアウトはとても大変だと思うけれど).
書籍版の道路地図と,Googleマップみたいな感じ.


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図4.電子版魚類検索図鑑の妄想その1 発散型の検索マップ(クリックすると画面いっぱいに拡大)
スワイプで辿れるようにしてみた.スタートから様々な方向に辿っていくので,種数が多いと円形になりそう.なお,著作権のナニがアレなので,掲載魚は実在しない妄想魚.


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図5.電子版魚類検索図鑑の妄想その2 扇型の検索マップ(クリックすると画面いっぱいに拡大)
発散型と似ているけれど,検索方向は左から右のみとなる.末広がりになってしまうので,種数が多いと難しいかもしれない.


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図6.検索マップ(扇形)をiPadに入れてみたところ(クリックして拡大)
イメージ画像を作成してみた.全体像における現在地は右下のナビゲータウィンドウで把握でき,STARTボタンを押すとSTARTの位置に戻れる.


第4版が『書籍プラス1万円で電子版付き』となったら僕は多分買う…と思う.
普段から読んでいれば覚えるでしょ,と突っ込まれそうだが,人それぞれということで.

図鑑といえば,インターネットをうまく活用した例を2点紹介したい.
一つはネイチャーおおさかが運営している『チリメンモンスターWEBインタラクティブ図鑑』.
Wikipediaのように閲覧者もアップロードできる点(専門家のフォローも入るらしい),そして,自分が調べるために撮影した写真をアップロードし,図鑑内の写真と同じディスプレイ上で比較できるようになっている点が面白い.

もう一点は『虫判定器』と『植物判定器』というスマホ用アプリで,写真を撮ってアプリ経由で送信すると,同定してくれる.
どういう仕組みで判別しているのか不明だし,精度に関する感想はまちまちだが,とても巧い使い方だと思う.
また,公開当初よりもレスが遅くなっているようなので,知名度アップとともにいろいろ負荷が増えたのだろう.
精度等,前述の課題が解決したら,ぜひとも魚版も出してほしい.

いろいろと妄想してきたが,すぐに出るようなものでもないので,当面は自分の観察眼を鍛えるしかないんだろうなぁ…などとぼんやり考えている.


参考文献
日本産魚類検索 (中坊徹次 編,東海大学出版会)第3版
チリメンモンスターWEBインタラクティブ図鑑→Webサイト
虫判定器→Webサイト
※ 植物判定器はアプリ購入サイトしかないので,各自で検索してください
posted by osakana at 20:22| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月06日

魚話その195 ぎょろりむしゅうせい

●水族館で魚を撮影する


先週の土曜深夜の話.
酔いどれ頭で水族館のサイトを見ていたところ,葛西臨海水族園でジャノメコオリウオとトビウオの一種の稚魚が公開されているという告知を見つけた.
いずれの魚も生体を見るのは初めてである.

梅雨入り宣言が出たというのに,雨が降る気配もないので,さっそく水族園へ無修正ロリ写真を取りに行くことにした.
もっともロリはロリでも,ふえぇ…とか言わない稚魚写真だけれど.

さて.
今回は告知で見つけた2種に加え,スマとハガツオの稚魚もいた.
こういうサプライズがあるから,デジカメのメモリーカードは余裕を持って行きたい.


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図1.ジャノメコオリウオ a) 成魚, b) 稚魚(背面), c) 稚魚(左側面) 2013年5月21日に孵化.サイズは約5 cm,2尾いた(他にもいたかもしれない)

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図2.ハマトビウオの稚魚 a) 飼育スペース, b) 飼育エリアの様子, c) 餌を食べる様子 サイズは約3 cm,水に落ちた虫にしか見えないが,よく見るとトビウオの面影はある.このサイズで水面をピョルピョルとジャンプしていた.

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図3.スマとハガツオの稚魚 a) 飼育スペース, b) 飼育エリアの様子, c) 稚魚のアップ 稚魚の混泳水槽なので,僕に魚種の判別は不可能.サイズは約3 mm,薄暗い水槽の中で機敏に泳ぐ稚魚を写すために,ボツ写真の量産(400枚くらい).手持ちの明るいマクロレンズはオートフォーカスも手ブレ補正もついて無いので,本当に難しかった…


水族館は飼育している魚の展示を行っているのみならず,資料の保管や研究,学習資料の提供も行っている.
企画展でテーマを絞った魚の展示や,生態展示,ワークショップなどもその一例だ.
一度行ったことがある水族館でも,時期によって変わったりするので,公式ウェブサイトをチェックするのはアリだと思う.
かつて水族館非公式ガイドという,全国の水族館のイベントなどの情報を網羅的に掲載しているサイトがあったのだが,残念ながら閉鎖してしまった.
今考えてもあのサイトは凄かったと思う.

そうだ.
水族館撮影に関して以前書き損ねたことの補足もしておこう.

・オートフォーカス補助光
薄暗い場所などでコントラストが低下すると,オートフォーカス(AF)がうまく作動しないことがある.
そこで,AF作動時のみライトをつけてピントを合わせやすくする機能がある.
AF補助光という機能で,シャッターを半押しした時に出てくる光がそうだ.
これが結構クセモノで,魚に当たると嫌がって逃げることが多い.
フラッシュ撮影禁止を守っている人でも,AF補助光をオフにしていない人は結構多い.
『ちょうどピントが合いそうだったのに,レンズの前で反転してしまったよ…』という場合は,少し設定を見直してみるといいかもしれない.
慣れが必要だけれど,マニュアルフォーカス(MF)という機能で対処可能だ.


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図4.AF補助光 a) AF補助光が動作している様子(赤矢印), b) AF補助光で照らされた様子(白矢印,カメラとの距離は約30 cm) モデルはPower shot G10(Canon)


・壁の厚み
大型水槽にかかる水圧は非常に大きいため,水族館では分厚いアクリルなどを使っている.
これが結構クセモノで,斜めから撮影すると,写真がボヤボヤになりやすい.
空気/壁/水で屈折率が異なるため発生し,どこにもピントが合わない手ぶれ写真のようになる.
『水槽写真は正面から撮る』という鉄則はやはり大事で,魚に合わせて姿勢を変えるなどの労力を惜しまないのが大事だ.


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図5.壁の厚みの影響 a) 斜め上から撮影, b) 正面から撮影 斜めから撮影すると,全体的にボヤボヤした写真になったり,矢印のように流れたような写真になったりする


・空気を読む
混雑している時に撮影しやすい場所を独占していると,他の来館者に反感を買う可能性が高い.
初公開の珍魚や,入口付近の水槽でなければ,人の途切れ目は結構できる.
通路の端で気長に待つ/再度行列に並び直すくらいの気持ちで考えるのが大事だ.

そういえば以前ブログで公開した動画を,テレビ放送で使いたいという旨のメールがスペインから届いた.
ルールに則って撮影・公開しているとはいえ,無断でテレビ放映するわけにもいかないので,水族館の担当者に事情を説明し,承諾を得ることができた.
メディアに画像を提供したことは何度かあったが,今回のような例は初めてだったので,良い勉強になった.
著作権には気をつけませう.


本日の魚
ジャノメコオリウオ Chionodraco rastrospinosus DeWitt & Hureau, 1979
スマ Euthynnus affinis (Cantor, 1849)
ハガツオ Sarda orientalis (Temminck et Schlegel,1844)
ハマトビウオ Cypselurus pinnatibarbatus japonicus (Franz, 1910)
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2013年05月31日

魚話その194 わ,臭ぇフリーザー

●骨格標本用の魚の冷凍保管を考える

2013年も気付けば梅雨入り,気温も湿度も上がってきた.
我が家には用途別に複数の冷凍庫が存在する.


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図1.我が家の冷凍庫
左側にあるタイプが食材用で,冷凍スペースは86L,右側は非食材用で,121Lある.
HDDと同じで,余裕を持って買っても,知らぬ間に足りなくなっているのが怖い.


快適な梅雨ライフのためには,熱源を居住空間からできるだけ遠ざけることが重要だ.
今回はその片付けの様子…ではなく,標本の冷凍について触れてみたい.

新鮮なうちにホネ取りができない場合,保存は重要課題である.
中にはエタノールやホルマリン、はてはグリセリン保存液を作製して液浸標本にする人もいるかもしれないが,高コスト(エタノール),DNAの断片化(ホルマリン),変成してカチカチの筋肉を除肉する手間を考えると,冷凍が最有力候補となる.
しかし,冷凍庫は除霜機能が備わっているため内部は乾燥し,いわゆる『冷凍焼け』が起きる(図2).


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図2.冷凍焼けした尾鰭(オジサン)
干物のように乾燥してしまった.冷凍庫も使い方を誤ると痛い目に遭う.干されたオジサンという響きが三十路を迎えた僕には切ない・・・
スケールは1cm.


食品・冷凍関係の資料を見る限り,冷凍焼けは脱水に伴う不可逆的なタンパク・脂肪の変性現象とある.
こちらはホネ取りが主なので多少ならば問題ないが,ヒレや吻などの焼けが進むと除肉が厄介になる.
可能な限り標本をコンディション良く保存しておきたい博物館にとっても重要な問題で,鹿児島大学総合研究博物館発行の『魚類標本の作製と管理マニュアル』には,海水魚なら塩水,淡水魚なら真水とともに冷凍すると,冷凍焼けを軽減可能とある.
ただし,種同定が完了し,骨格標本作製を残すのみであれば,特に水の種類にはこだわらない.
むしろ取りかけのホネを凍結する際にも水を入れるのを忘れないようにするのが大事だ.
水ごと凍らせると中身が分からなくなるので,ビニール表面への表記のみでなく,魚と一緒にラベルを凍らせておくと安心だ.


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図3.冷凍保存の様子
一応水とともに凍らせてあるのだけれど・・・
適当に詰め込むと一部が空気と触れてしまうこともあるので,保管時はビニールの空気抜きも念入りに.


冷凍庫の関係で少しでも小さく保管したい気持ちは痛いほど分かるのだけれど,水は十分量使いたい.
適切な処置が施されたか否かは,目の白濁等にも表れ,スーパーで魚の鮮度を見分ける時と注目する場所が似ているのが面白い.
また,スペースのみならず,冷凍庫の増加と共に部屋が温暖化していくので,死体の保管方法なんかより家族の理解を得る方が大変だったりする.

衛生面にも注意したい.
家庭用の冷凍庫は,『半永久的に保管ができる』ではなく『腐敗は冷蔵より遅い』程度に考えておくほうが良さげだ.
設定温度の関係もあるが,先述の除霜,扉の開閉,使用済み氷枕など(冷凍庫にとって)高温の物体を冷凍庫に入れるなどで,一時的にその周辺は暖かくなるのだ.
冷凍庫内の温度変化に関してはいろいろデータが公開されているので,一度探してみると良いと思う.
機種による違いはあれど,想像以上に温度が変化していることに驚くと思う.


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図4.専用冷凍庫
縦型タイプは整理しやすい利点を持つが,1ドアタイプは開放時に冷気が漏れやすいので長時間作業の祭には注意が必要


最後に.
他の動物と異なり,魚は『食材感』が強く,つい食品と同居させても大丈夫と思いがちだけれど,外で拾ってきた鮮度の悪い魚や一度でも薬品を投入した魚は,絶対に冷凍庫を分けた方が良い.
『二つも冷凍庫?そんなカネもスペースも無いって…』と言われそうだが,不特定多数の目に触れる場所では,こう書かざるを得ない.
試しに肉や魚を保存しているスペースにタオルを入れておけば,臭いの移りっぷりで物質の行き来を実感できるのではなかろうか.
自分の不備によって身内の入院沙汰なども起こりうることを覚悟した上で,ホネ取りに手を出した方が良いと思う.


本日の魚
オジサン Parupeneus multifasciatus Quoy & Gaimard, 1825

参考資料
魚類標本の作製と管理マニュアル (本村浩之 編, 鹿児島大学総合研究博物館) P9 - 12
扉の開け閉めによる庫内温度の上昇(エヌケイエス株式会社http://www.validation-wa-nks.jp実験データNo.43)
扉の開け閉めによる保管物の温度変化(エヌケイエス株式会社 実験データNo.45)
霜取り運転時のフリーザーの温度変化(エヌケイエス株式会社 実験データNo.69)
おいしさを科学する 冷温(ニッスイアカデミーhttp://www.nissui.co.jp/academy/taste/09/03.html
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2013年05月25日

魚話その193 リアルタイムじゃないホネ取り〜その3〜

注意!
・解剖の描写があるので,ご注意ください.
・本文中に『一般入手できる』というニュアンスの記述がありますが,一般家庭での作業を推奨する意味ではありません.
・高校や大学の生物系サークルなど,大型専門機器の購入が困難ではあるものの,しかるべき施設と知識を持った人が対象です.
・ホルマリンを扱うので,その取り扱い方法/処理方法が確立している方々を対象としております.
・ポリエチレングリコールとエチレングリコールは別物です(危険度も).
・現在も試行錯誤中の手法であることにご留意ください.
・最初のうちは入手が容易な種の,特に顎(頑丈かつ歪みやすいなので)を使って試されることをお勧めします.
・本件での事故や貴重なサンプルの損傷は一切責任を取れません.



今回で軟骨標本シリーズは最終回.
ホルマリン抜きしたホネをポリエチレングリコール(以降PEGとする)溶液に浸す.
PEGは化粧品等にも用いられているが,軟骨から残留ホルマリン等が溶出する可能性は多分に考えられるので,必ず手袋+ピンセットで作業し,生活空間とは分けた場所で作業する.

10%PEG-200
→20%PEG-200
→30%PEG-200
→30%PEG-400
→30%PEG-600
→20%PEG-4000
→30%PEG-4000
→50%PEG-4000
→70%PEG-4000
→90%PEG-4000
→95%PEG-4000

このような順番で,1種類の溶液につき,1週間〜1ヶ月ほど浸す.

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図1.PEG含浸処理 a) 常温処理時の樹脂製容器, b) 高温処理時のステンレス製容器, c) 鰭の保定
容器の耐熱性次第では,兼ねることも可能だが,いずれの処理もジップロック等の耐熱性バッグに入れ,揮発性物質の拡散を防いだ方が良い.
他の人が使用する際にコンタミの原因となりかねない.
また,熱膨張に伴う破損の恐れがあるため,高温処理時は容器の蓋を密閉せず,耐熱バッグを数枚重ねてコンタミを防止する.
鰭は園芸店で入手できる鉢底ネットでサンドし,釣り糸で固定すると,含浸処理中に他の標本に当たって変形するのを軽減できる.


より良い溶液の置換パターンもありそうだが,これは現在も模索中だ.
一つ一つに時間がかかるので,あれこれ試しても結果が出るまで時間(とカネ)がかかってしまう.
ちなみに脳室内に空気が残っていると,一部がずっと空気中に露出されている状態になる.
吻軟骨などは特にに影響を受けやすく,乾燥でひしゃげてしまい,どういうわけかPEG溶液に浸す工程を最初からやり直しても直らない.

なお,70%を超えたあたりから,70〜80度ほどの加温が必要になるため,研究で使用する加温装置(インキュベーター)は必須だ.
比較的安い部類の研究用機器なので,大抵の実験室にはあると思う.
代用案もあるのだけれど,一般家庭で事故が起きても嫌なので,『インキュベーター必須』という表現で止めておく.
なお,以前IHクッキングヒーターの使用を書いたが,手法の更新に伴い,より長時間の処理が好ましいことが判明したので,IHクッキングヒーターは使えない
95%PEG-4000まで置換が済んだら,溶液から取り出し,余分な液をできるだけ回収(数回は再利用可能)する.


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図2.PEG溶液の除去 a) 背腹方向のPEG溶液を除去, b) 骨格の窪みのPEG溶液を除去
脳室内や脊椎骨等の内側に溜まったPEG溶液を念入りに除去する.
表面は最後の仕上げ前に拭きとることが可能.


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図3.再利用が進んだPEG溶液(左)と未使用のPEG溶液(右)
次第に雑菌が繁殖し,黄色味を帯びてくる.
数回使用したら交換するか,低濃度溶液として再利用する.


鉢底ネットを敷いたタッパーに入れ,実験室の冷凍庫で30分ほど冷やす.
なお,何が揮発するかわからないので,食品用に使っている冷凍庫では絶対にやらないこと.


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図4.冷却処理
常温ではペースト状の濃度のPEG溶液が染み込んでいるはずなので,冷凍庫が使用できない場合は自然乾燥でも構わない.
流動性を少しでも早く落とすことで,少しでも多くのPEGが軟骨内に残るかな…と,作業の効率化半分,おまじない半分でおこなっている.
※必ず容器に入れてから冷凍庫に入れてください!(見やすいようにわざと剥き出しでやってます).

表面が白いクリーム状になったら冷凍庫から取り出し,余計なPEGをスパチュラでこそぎ落とし,水に浸した後に硬く絞ったキムワイプ等で表面を拭く.
表面のペタペタがなくなったら,風通しの良い場所で1週間ほど風乾し,完成.


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図5.冷却後のPEG除去 a) 拭き取り前, b) 拭き取り後
一連の流れを考えれば頭骨での作業を載せた方が好ましいが,鉢底ネットの凹凸痕が残って見やすいので,ここでは鰭をチョイスした.


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図6.ドチザメの頭骨標本
ひしゃげているのは,前述の通り,一部がずっと空気中に露出してしまったためと思われる.


他にもいろいろ試してみたところ,対象となる魚種の除肉法の除去技術の向上,漂白工程検討など,含浸処理以外にも課題が見つかった.
今後はその辺の改善も図りたい.


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図7.a) フトツノザメ頭骨(左側面), b) フトツノザメ頭骨(正面), c) ネコザメ頭骨(左前側面), d) ネコザメ頭骨(正面), e) ギンザメ頭骨(左側面), f) ギンザメ頭骨(正面), g) ヘラチョウザメ頭骨(左側面), h) ヘラチョウザメ頭骨(正面), i) ホテイウオ頭骨(左側面), j) ホテイウオ頭骨(正面)
ギンザメの頭部先端は,前述のドチザメ同様,空気中に露出したまま放置してしまった結果で,ホントはシャキっとしている.
撮り直したい頭骨もあるのだけれど,人にプレゼントしてしまったものもあるので.
カメラやレンズのメンテナンスは定期的におこないませう.


保管は温度・湿度共に低い場所に静置する.
通年エアコンが効いている場所…といきたいところだが,せめて気密性の高い容器+シリカゲルくらいはしておこう.
夏場や梅雨時などの高温多湿な時期にはPEGが染み出てきて表面がペタペタになることもあるので,何か敷いておくと良い.


いろいろな〆切り系がひと段落し,職場をふらついていたら,ある人に『魚のホネ好き学生が来たので,話してほしい』と呼ばれた.
そもそも僕の趣味をなぜ知っているのかが謎なのだけれど,それはさておき,現場に向かう.
会話が進むうちに,どうもその学生はこのブログを知っているらしいということが発覚.
その話の発端が,この軟骨標本の話題であり,更新を再開するきっかけになった次第.
それにしても世の中狭い.

追伸
九州の某大学の魚のホネ好き学生君よ,君の名を訊きそこなったので,もしこれを読んでたら連絡くれい.


本日の魚
ギンザメ:Chimaera phantasma Jordan and Snyder, 1900
ドチザメ:Triakis scyllium Müller & Henle, 1839
ネコザメ:Heterodontus japonicus Maclay & Macleay, 1884
フトツノザメ:Squalus mitsukurii Jordan & Snyder, 1903
ヘラチョウザメ:Polyodon spathula (Walbaum in Artedi, 1792)
ホテイウオ:Aptocyclus ventricosus (Pallas, 1769)

参考文献
遺物の保存と調査(沢田 正昭,クバプロ)
posted by osakana at 14:44| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月22日

魚話その192 リアルタイムじゃないホネ取り(サメの頭部骨格標本)〜その2〜

注意!
・解剖の描写があるので,ご注意ください.
・本文中に『一般入手できる』というニュアンスの記述がありますが,一般家庭での作業を推奨する意味ではありません.
・高校や大学の生物系サークルなど,大型専門機器の購入が困難ではあるものの,しかるべき施設と知識を持った人が対象です.
・ホルマリンを扱うので,その取り扱い方法・処理方法が確立している方々を対象としております.
・ポリエチレングリコールとエチレングリコールは別物です(危険度も).
・現在も試行錯誤中の手法であることにご留意ください.
・最初のうちは入手が容易な種の,特に顎(頑丈かつ歪みやすいなので)を使って試されることをお勧めします.
・本件での事故や貴重なサンプルの損傷は一切責任を取れません.


ちょっと前に流行った表現を使うなら,久しぶりすぎるブログ…?

最後のネタ更新から10ヶ月,軟骨標本ネタなら,前作の魚話その190から17ヶ月も経過している.
その間何をしていたかといえば,本業と,学生時代/本業関連の論文やら本の原稿やらを黙々と書いていた.
余裕がなかったかといえばそうでもなかったのだが,PC作業は執筆に限定していたので,更新が停滞した次第.
なお,一般向けの和文書ではないし,身元バレは避けたいので,出版物の告知はしない.

さて.
固定が完了したら,水道水ですすぐ.
人の口に触れることが絶対に無いよう,換気の良い薬品専用の流し台で洗浄すること.
廃棄のことを考慮し,容器とペーパータオルも一緒に洗浄してしまおう.
ホルマリンも1次,2次洗液(容器や標本の最初と2度目のすすぎ水)も,きちんと廃液として回収しよう.
絶対に下水に廃棄しないこと(廃液処理に関しては,住んでいる自治体に事前問い合わせ).


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図1.洗浄の様子 容器を洗う際に1,2回目は少なめ(半分くらい)の水ですすぐと,廃液の量を減らすことができる.洗いの手抜きではなく,表面に付いたホルマリンと時間経過と共にホネから染み出してくるホルマリンの洗浄方法を分けているのだ.


次に,多めの水に浸して一晩放置し,浸した水も一応廃液容器に回収.
これを3回ほど繰り返す.
ホルマリン臭が抜けていることを確認したら,5回ほど水ですすぐ(一晩待つ必要はない).
人間の鼻では気付かない残留ホルマリンを考慮し,洗浄済み頭骨も必ず食品用とは別の容器や冷蔵/冷凍庫などに入れること.
金銭的負担を考えても,活発に発表しているような化学系部活クラスの施設が前提だ.


固定前には見落としていた細かな肉の凹凸が,ホルマリン固定により硬度が増して判別しやすくなる(図2).


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図2.ホルマリン固定により見やすくなった除肉時の残り(顎間接部分) 本当はもっとトゥルンとしている.


場所に応じてスパチュラ(調色スティック)や歯ブラシなどで除去すると,仕上がりが綺麗になる.
凝ればきりがないのだが,仕上げの見栄えを考えると,脳函天蓋(頭骨背側の脳が収まっている部分:図3a)や舌弓周辺(図3c)は丁寧に仕上げておきたい.


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図3.きっちり仕上げておきたい部位 a)脳函天蓋(右側面から撮影),b)舌弓周辺


なお,作業時には細かな肉片が飛び散る.
ホルマリンが目に入ると危険なので,除肉の仕上げは必ず水洗後に行うこと.
とりあえずここで今回の作業は終了.


以降は今回の補足.
●ホルマリンの固定について
まず換気に注意する.
密閉容器に入れ,できればジッパー付きのビニールなどで包んだ方が良い.
未固定の状態では腱や関節に柔軟性があるため,顎をくぱぁしようと,多少捻れようと,問題ない.
ところが,固定後は関節の柔軟性が失われてしまい,少し力を加えただけで,脱臼のような破損が起こる(骨格自体が折れる破損よりも多かった).
まだ試行錯誤中だが,今回のサイズであれば,一昼夜で固定は切り上げている.
基本的に水洗完了までの作業は,2〜3日で終了させるつもりで計画を立てた方が無難だ.


●頭骨は敷居が高いと感じたなら…
無理せずに取りやすいパーツだけにしてしまうのもアリだ.
口唇軟骨などはかなり敷居が高い.
いっそのこと顎だけ取ってみるのもアリだろう.
顎取り経験者なら,防歪効果を実感して貰えると思う(特に小型サメの顎の場合).

●歯抜けについて
次回から使用するPEG溶液は再使用可能なので,不要なロスを抑えるためポージング用の紙を抜き取る.
その際必ず歯の流れに沿った方向(飲み込む方向)に抜き取ろう.
ただでさえ歯を使い捨てする魚種なのに,湯ざらし除肉の熱で,歯がかなり抜けやくなっているのだ.


本日の魚
ドチザメ:Triakis scyllium Müller & Henle, 1839


参考文献
遺物の保存と調査(沢田 正昭,クバプロ)
posted by osakana at 12:39| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする