2023年04月01日

魚話その215 シン・リアルタイム骨取りその9 〜最後に〜

●チカメキントキの全身骨格を例に


半年ぶりの更新である.
前回で作業は終了だが,変色や異臭がないかしばらく様子見をしてから完成としている(特に人に渡す場合).
完成直後は白くても,数ヶ月で真っ黄色/まっ茶色に変色してしまったこともあった.
徹底的な真っ白さを目指してはいないが,あまりにも変色が酷い場合は残留した脂が虫やカビ,異臭の原因になり,好ましい事態ではないので,
なお,日焼けによりうっすらクリーム色に落ち着くくらいは許容範囲と考えている.

sb215_Fig.01.jpg
Fig. 1 半年後のチカメキントキ全身骨格


さて.
以降はイベントやSNSなどでホネ話をしている際に出てきた話題や質問を交えつつ.

1.手法の変遷

ざっくり書くとFig. 2の通り.

sb215_Fig.02.jpg
Fig. 2 作業の変遷


一般的な感覚では「時間がかかり」「面倒くさく」なった感じ.
今回のチカメキントキもたっぷり2ヶ月かかっているし,たくさんの魚をこなしたい人に敬遠されそうだが,全行程の2/3は薬品処理の待ち時間や休日までの時間調整等々によるので,間に別の用事をがしがし詰め込んでいる.
実際チカメキントキの作業待ちで7魚種のホネ取り,依頼物の工作を3件ねじ込んでいた.


2.材料調達とか
企業秘密…といきたいところだけれど、鮮魚店か友人知人らからの釣り・漁労くず拾い・ビーチコーミング・飼育死亡個体等々の譲渡が主だ.
たとえ珍魚に強い店舗であっても,天然物なので頻繁にチェックできる距離にある鮮魚店を優先して通っている.
スーパーの鮮魚コーナーもピンキリで,スズメダイやベニテグリ,シュモクザメが入荷するような店もあれば,サーモンやマダイの切り身パックしかないような店もある.

新しく土地に引っ越して見つけた鮮魚店で通うか否かを判断する個人的基準は
・マルの魚が並んでいる
・季節によってスズキやトビウオといった魚が並ぶことがある
・○○直送みたいなチラシがある
辺りだろうか.

曜日や季節によっても揃えが変わるので,毎週同じ曜日しか覗いていないようであれば,曜日を変えるのもありだ.
あとは珍魚を扱っている店舗からの通販も1つのやり方だと思う.
しょぼい話ではあるけれど,珍しい魚を見つけてもあまり入手した店の情報は公開しないようにしている.
他者との競合を防ぎたい…というみみっちい理由もゼロではないが,どちらかというとむやみやたらと問い合わせの連絡が届くようになって迷惑をかけてしまうのを防ぐ意味合いの方が大きい(詳細は伏せるが,そんなエピソードを聞いてしまった).


3.展示環境とか
自宅にホネを飾り始めたのは就職して一人暮らしを再開した2010年以降で、それまではプラ製のコンテナに収納し,たまにイベント展示する程度であった.
生き物やモノづくりが好きな友人らを呼んで呑み会をするようになってからはホネの数も増え,2010-2015年は6畳間に(Fig. 3a),一軒家の賃貸に転居した2016年以降はこんな感じで飾っている(Fig. 3b).

sb215_Fig.03.jpg
Fig. 3 魚のホネ部屋兼居間兼呑み会部
a) 2010-2016年,b) 2016年以降
掃除に耐える大きくて丈夫なホネは棚の上に,壊れやすいホネに関しては市販の薄型コレクションラックやケースに収納している.


虫害やカビが地味に鬼門で,「何年も飾ってて無縁だったのに,突然沸いた」という事例は自分を含め周囲でも結構起きている.
虫害に関しては,シバンムシやカツオブシムシ等が知られており,ホネに残った軟組織等を餌にすることがある.
大量発生すると部屋ごと燻蒸する必要が出てきてすごく面倒なので,ホネを飾っている台の下に細かな粒が見え始めたら要注意だ.


4.撮影とか
個人的な好みと見やすさ,編集しやすさを兼ね,黒背景での撮影が多い.
手芸品店で購入した普通の黒布を用い,照明1,三脚,小さなレフ板1〜2枚で撮影している(Fig. 4a).
僕の撮影台は工作机を兼ねているため布に埃が付きやすこまめに洗濯するため,黒背景専用の低反射布はもったいなくて使う勇気がない.
上方から光を落としてやれば案外しっかり黒背景を確保でき,眼窩や下顎など陰になる部分を下からレフ板で照らせば,いい感じに撮影できる(Fig. 4b-d).
下面は光を拾ってしまうので台に乗せて映り込まないようにするか,テクスチャとして割り切ってしまうことが多い.

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Fig. 4 撮影の様子
a) 撮影の様子,b) 使用しているレフ板, c) レフ板なしで撮影, d) レフ板で下から間接光を当てて撮影



具体的な方法はフィギュアや模型撮影をする人の間で情報が蓄積・公開されている.
基本的に黒背景で白いホネを撮る場合は形状が優先され,色再現性はあまり重要視されていないので,比較的気軽に手を出せるのではないかと思う.

また,凹凸が多い小型のホネ(=ピントが合いづらくて全貌が分かる写真を撮影しづらい)に関し,ピントをずらしながら複数枚撮影して深度合成する方法がある(Fig. 5).
ここら辺も昆虫や鉱物などで手法が蓄積・公開されている.
僕はZerene Stackerという海外の有償ソフトを使用しているが,フリーソフトも各種出ている.

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Fig. 5 深度合成のイメージ
握りこぶしくらいの頭骨だと,100枚くらい撮影して合成することもある.
記録メディアの容量やマシンスペックに注意…



5.補強とか

ミノカサゴやホウボウのように長い鰭条を持つ魚では,温湿度が調整されている博物館と異なり,自宅の雑な保管環境やイベント出展時の輸送に伴う湿度変化で整形した鰭条が変形してしまうことがある.
また,塩素系ハイターなどによる長時間処理により,手を触れると粉が付くほど表面が劣化してしまうこともある.
いずれもあまり気持ちの良い状況ではないので,僕はアセトンで希釈したパラロイドB-72という薬品を薄く塗りつけることで対処している.
パラロイドB-72は美術品の修復や化石の補強等、様々な分野で重宝されているアクリル系樹脂で,エタノールやアセトンに溶かして使用する.
経年変色がないのが売りとされているが,僕自身が魚のホネに塗って長期的な経過観察をしたわけではないのでホネに対しても同様なのかは不明だ.
しかし,いざという時にはアセトンで再溶解して除去もできそうなので,導入・様子見している.
変な光沢が出ると格好悪いので1〜5%程度の薄い溶液に調整し,何度も染み込ませるようにして使っている.

sb215_Fig.06.jpg
Fig. 6 パラロイド B-72による補強
a) 過度の塩素系漂白剤処理により脆化したコブダイ上顎骨の表面, b) 輸送中の温度・湿度差により再変形してしまったホウボウの鰭条, c) パラロイドB-72のペレット



以上つらつらと書いたが,2007年に書いた内容の更新と供養は済んだ気がする.
40歳を過ぎて年齢的にも細かい操作や体に無理が効かなくなってきたので,今後はじっくりまったりやっていきたいと考えている.
というわけでシン・リアルタイム骨取りはこれで完結(ブログが終わる訳ではないけれど…).
長々とお付き合いいただきありがとうございました.


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2022年08月25日

魚話その214 シン・リアルタイム骨取りその8 〜支柱と台座を作るよ〜

●チカメキントキの全身骨格を例に
※編集して2023年4月1日に再投稿しました.


工作のターン!
支柱とか台座の材料や作り方は人それぞれなので,あくまで僕が趣味でやっている方法を紹介する.
イベント出展用と自宅用とで什器を変えることがあるので着脱ギミック付きだが,用途が絞られていれば省略可能な部分も多い.
実は釣り好きからの派生で釣り具を作るのも好きで,工作も20年以上続く趣味の1つだったりする.
電動工具とかガンガン出てくるけれど,別にこれが必須というわけではなくて,各自で好きなように製作すれば良いと思う.
また,ホームセンターのみならず100均や模型店,彫金工具店にも素材や道具やヒントが転がっているので,覗いてみるのもお勧めだ.
特に模型や彫金系の店は,ホームセンターや工作系通販サイトでも見かけないような小さめ金属素材や,痒い所に手が届く便利グッズと出会えるチャンスが眠っている.

さて.


1. バランス取り
落下に注意しつつ,バランスが取れる位置を探す.
頭骨が結構重いので,かなり前方でバランスが取れることが多い.
一度ホネを整形台等に戻し,工作時の埃や破損を避けるため安全な場所へ避難.

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Fig. 1 全身骨格のバランス取り
a) チカメキントキ, b) アカタチ, c) ノーザンバラムンディ
バランスが取れる部分を赤三角で示した.
脊柱等に補強金具が入っているので,ホネだけの時とバランスが変わる可能性に注意.



2. デザイン
魚のホネは,趣味ホネ界隈で製作されがちな陸上哺乳類と比べ軽いため,支柱のデザインに関して自由度が高い.
僕が作っているホネの飾り台は支柱,連結金具,台座の3パーツ構成で(Fig. 2),支柱はホネと主軸を,連結金具は支柱と台座を接続するパーツで,台座は支柱を自立させるためのパーツである.

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Fig. 2 我が家の支柱の模式図(断面図)
各部位の名称はブログ用に僕がとりあえず付けただけなので,一般名ではないことに注意.



一応ホネへの負荷をぼんやり意識しているが,専門家ではないので,建築工学に基づいた設計ではない(Fig. 3).
もしあれこれ調べたければ,博物館の骨格標本の展示を観察するのが良いと思う.
博物館で展示される骨格標本の什器は長期間の使用に耐えるような構造や支え方になっていると思うので,いろいろ参考になる(Fig. 4).

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Fig. 3 我流の支柱
a) トクビレ頭骨用の支柱, b) トクビレ頭骨を装着, c) 頭骨用支柱に装着するシルエットプレート, d) ウチワフグ全身骨格の支柱, e) ウチワフグを装着
頭骨用の支柱は支柱の根元に全身のシルエットプレート添えたりもしていたのだけれど…糸ノコで毎回切り抜いていたので面倒だった.


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Fig. 4 博物館展示の支柱の例
a) 透明アクリル棒による支柱, b) パンチングメタルを活用した支柱, c) 壁掛け, d) 台座にネジ固定された金属製支柱, e) 台座にネジ固定された金属製支柱
a〜c: 茨城県自然史博物館, d: 須磨水族園 e: 千葉県立中央博物館



3. 支柱の製作
柔らかいアルミの針金で試作し,真鍮やステンレス材を曲げて本番のパーツを作る(Fig. 5).
パーツ同士の接続は,はんだ付けやロウ付け,接着剤,ねじ留めが僕の手札で,TPOに応じて使い分けている.
耐候性や強度はねじ留めやロウ付けがダントツだが,加工が手間だったり焼きなましによる軟化が発生したりもするので,一長一短だ.
また,はめ込み部分は落下や離脱の危険が少ないので,作業の簡便さから2液性の金属用接着剤を多用している(Fig. 5a).
ライターやヒートガンで100度程度に加熱すると,強固な2液性接着剤も融けて外せるようになる(ホネではちょっとできない操作).

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Fig. 5 支柱の製作の様子
a) 我が家で良く使う材料, b) 試作, c) 丈夫な素材で置換, d) ロウ付け, e) 完成
最近ニシンやドラド,ノーザンバラムンディといった,体の後方に腹ビレがある(=筋肉中に腰帯が浮いている)を扱っていたせいか,腹の輪郭をイメージしたラインの支柱が個人的に流行中.



材料はFig. 4からもわかるように真鍮やステンレス,鉄,木,プラスチック等,様々な素材が使われている.
僕は加工性や錆びにくさから真鍮とステンレスの丸棒と針金を選定しており,特に主軸は硬いステンレス丸棒を多用している.
これは連結金具と主軸をイモネジ固定しているため,柔らかい素材だと主軸が潰れたり傷がついて抜けなくなる恐れがあるためだ.
また,ステンバネ鋼線は便利だが,長すぎる/細すぎるとビヨンビヨンと揺れてしまう.
ちょっとした振動でしょっちゅう揺れるようなら,ホネへの負担やパーツ紛失のリスクも上がるので,仕様を見直す必要がある.


4.連結金具の製作
支柱の太さに合わせ,真鍮丸棒を旋盤で加工し,中心と側面に穴をあけ,側面と底面にねじ加工をしている(Fig. 6)
台座に穴をあけ,支柱の主軸を直接差し込むのでも全然構わない.
イベント出展時の輸送の利便性と,自宅に飾る際は地震や風などによる落下防止のため飾り棚にしっかりねじ固定した金具に移し替えることがある(Fig. 7)ため,連結金具を用いて着脱可能にしてあるだけだ.

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Fig. 6 連結金具の製作の様子
a) 模式図(断面), b) 旋盤加工の様子, c) ねじ加工の様子, d) 完成



サイズによっては木材や市販の商品(フランジ接手やフランジ金具というものがある)でも代用可能で,そもそも旋盤は必須ではない.
なんなら真鍮製のハトメだって木に埋め込むと良い感じになる.

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Fig. 7 自宅の棚に支柱を固定する金具
a) バショウカジキ全身骨格を柱に固定する金具, b) アカヤガラ頭骨を棚板に固定する金具
固定金具を赤三角で示した.



5. 台座の製作
材木やアクリル板に穴をあけ,カンナやトリマーなどを使って縁取り加工し,オイルや蜜蝋,ニスなどを塗って仕上げる.
暗色の台座が好みなら,ステインを併用するのもありだ.
僕は連結金具とねじで台座を挟み込むようにして固定するので,底面から沈めフライスや段付きドリルと呼ばれる刃でねじ頭を埋める穴もあける(Fig. 8).

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Fig. 8 台座の製作
a) 材木カット, b) 穴あけ加工, c) 縁取り加工, d) 仕上げ材塗り前後の比較(右が塗った後), e) 完成


単に見た目の問題なので切りっぱなしの木片でも構わないのだが,僕は工作用の材料と勘違いして使ってしまうこともあるため,何らかの加工をしている.
少し面倒だが,例えば半身骨格用に半分ずつ仕上げを変えたり,淡水魚用にリバーテーブルの技法を導入したり,魚の名前に合わせて木材を選定して遊ぶこともある(Fig. 9a〜c).
面倒なら,飾り台用の加工が施された木材をホームセンター等で入手可能だ(Fig. 9d).
チークやアガチス製(たぶん)で,暗めの仕上げ材を塗れば格好良くなる.

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Fig. 9 a) 半身骨格の作品に合わせた台座(フィギュア用の製作依頼品), b) リバーテーブルの手法を応用した台座, c) タチウオの頭骨用に鉄刀木(タガヤサン)で製作した台座, d) 市販の飾り台


6. ラベル製作
工作趣味から派生して真鍮製のラベルを作製している.
少し前まではF式エッチングと呼ばれる,真鍮板の表面を溶かして文字や模様を浮き彫りにする方法で作製していた(Fig. 10).

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Fig. 10 F式エッチング法によるラベルの作製
a) レーザープリンタでマスキングを作製, b) 真鍮板に転写, c) 薬品処理, d) エッチング後の真鍮板, e) 塗装, f) 研磨, g) 穴あけ・曲げ加工・表面コート等をして完成
cは中和の様子で,エッチング液は暗色溶液で中の様子が見づらかったので割愛した.
F式エッチングは模型や電子工作関係で完成された手法なので,興味ある人はこちらのサイトを参考にして欲しい.
エッチングに伴う廃液処理法等も載っている(廃液は銅イオンを大量に含むため,排水口への廃棄は法令で禁止されている),



エッチングは廃液処理の問題もあり,2022年に入ってからCNCフライス盤という自動削り機で削る方法にシフトした(Fig. 11).
細かさはエッチングに劣るが,僕が住んでいる自治体ではエッチング廃液の処理法がかなり厄介なことが判明したため,引っ越しを機にCNCフライスへの移行を決意,7年後にようやく実現した.

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Fig. 11 CNCフライス盤によるラベルの作製
a) デザインした図柄をCNC用のデータに変換, b) 切削, c) 切削終了, d) 塗装, e) 研磨・穴あけ・曲げ加工・表面コート等をして完成



ちなみにどちらの手法も文字や模様を浮き彫りないしは溝彫りすることで下地との高低差を作り,塗装後に表面研磨することで特定の部分のみ真鍮が浮かび上がるようにする手法だ.
完成したラベルは,適当な長さにカットした虫ピンと接着剤を併用して台座に固定している(Fig. 12).

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Fig. 12 a) 虫ピンとラベル, b) 台座に固定した様子


真鍮製ラベルは高級感マシマシだが準備に時間がかかるため,複数魚種のホネが溜まってから作ることが多い.
その都度作るなら,金色シールに自分で印刷して厚紙やプラバンに貼り付けたり,コーヒー染めしてアンティーク調にするのもありだ(Fig. 13).

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Fig. 13 コーヒー染めした紙で作製したラベル
ネットで検索すればいくらでも方法は出てくる.
スペースに余裕があれば,モノクロレーザープリンタを買うのもありかもしれない.
トナーは少々高いが印刷可能枚数は多いし,本体は1万円台で買えたりするので…



7. ケースの製作
自作しても良いし,フィギュア用のケースに入れても良いし,Fig. 2cのような固定法で額装しても良い.
僕も依頼品に対し特製のケースを製作することもある(Fig. 14)が,自分用のはコレクション棚に入れて埃と虫への対策としている.
現在は剝き出しのホネもあるが,将来的には前面に着脱式のパネルを設け,埃対策を施す予定だ.
チカメキントキに関しては棚に収納予定なので,ケース作製は省略.

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Fig. 14 ドラド全身骨格用に作製したケース


代案を細かく書いたらキリがないので工作パートはおしまい.
というわけで完成したチカメキントキ全身骨格はこんな感じ(Fig. 15).
寸詰まりの魚ゆえ腹椎2点支持は厳しかったので,腹椎と尻ビレの棘で支える方式にしてみた.
台座はパドックという赤い木で,チカメキントキの鮮やかな赤色を意識してみた.

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Fig. 15 完成したチカメキントキ全身骨格


繰り返しになるが,趣味なら予算と場所と時間と相談しつつ好きなように作るのがいいと思う.
廃材利用で材料費0円でも200万円の銘木仕様でも自由だ.
「素人魂のブログで支柱は真鍮とステンレスで作らないといけないって書いてあったので,どの太さの棒を買ったらいいか教えてください」とか言われても僕は困る…というか文章がちゃんと読んでもらえてなくて悲しいし,多分ホームセンターの人は困る.
そんなわけで,シン・リアルタイム骨取りの作業パートはこれでおしまい.
(もうちっとだけ続くんじゃ)


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2022年08月16日

魚話その213 シン・リアルタイム骨取りその7 〜組立と整形するよ〜

●チカメキントキの全身骨格を例に
※編集して2023年4月1日に再投稿しました.


ちまちまちまちまちまちまちまちましたクリーニング作業もなんとか終わり,ようやく組立.
硬化後も瞬間接着剤用の剥がし液やアセトンで溶かせることから,僕はアロンアルファ等のシアノアクリレート系接着剤を愛用している.
ホットボンドは手軽だが湿気や(比較的短期間の)経年劣化で剥離するので,仮止め以外では使っていない.
また,2液性のエポキシ接着剤も硬化後の除去が厄介なので,支柱や台座の製作以外では使っていない.

さて.
作業スタート.
1. 組立
1-1. 整形台の作製
水中に浮かんでいる魚はヒレが上下左右に伸びており,卓上にベタ置きすると末端に負荷がかかるため,船模型の人が使っている「キールクランパー」をネットで見かけて以来,作業台を使用するようになった.
最近は大きめの魚を扱うこともあり,工作趣味も兼ね金属製の整形台を作った(Fig. 1b)が,スチレンボードや木材を組み合わせたものでいい(Fig. 1a)し,通販で実験スタンドを買ってきて改造するのもありだ.
気まぐれな僕は同時並行で別の魚の整形をすることも多いので,整形台はいくつあっても困らないのである.

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Fig. 1 整形台
a) スチレンボード製, b) 金属製
魚種によって形状をアレンジすることはあるが,大体こんな感じ.
スチレンボードはダイソーのカラーボード(450 x 300 x 10mm)の黒を愛用.



1-2. 脊柱の補強
まずは脊髄が通っていた穴に針金を通し,脊柱を補強する(Fig. 2).
元々湾曲していたものがまっすぐになると違和感が出るように,除肉時に撮影した写真を参考に脊柱のカーブを決める.
脊柱のカーブがきつい魚種の場合は,柔軟性が残っている粗整形の段階で針金を通すこともある(錆に注意).
尾椎の奥まで針金を差し込んだら,右側面(or展示から隠れる側)から接着剤を入れ,針金を接着する.
材質は真鍮かステンレスで,魚種やホネの重さ,形状に合わせてなんとなく使い分けている.
ただし鉄は赤錆がホネに移ることがあるので,使わない.
整形作業で水濡れ作業があり,また,完成後も結露等で錆びたりする(めんどい).

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Fig. 2 脊柱に通した針金
a) カーブに合わせた真鍮針金, b) 脊柱に通した様子
赤三角は脊柱に通した針金を示す.


1-3. 頭骨と肩帯の組立

以前も書いたが,肩帯は連結具合が微妙にわかりづらいので,左右非対称に残しておくと,接着部位が分かりやすくなる(Fig. 3).
ただし,薬品処理や乾燥時に角度が変わっている可能性もあることと,隣接する肋骨などに接触することでヒレの末端を破損することも多いので注意.

sb213_Fig.03.jpg
Fig. 3 肩帯との連結
a) 左右非対称にパーツを残した肩帯の様子, b) 頭部との連結



1-4. 頭部と胴体の組立
神経頭蓋と第1脊椎骨の連結部分は位置を決めにくいので,頭骨側に数個脊椎骨を残しておくと,位置決めしやすい…と除肉の際にドヤって書いたのに,すっかり忘れているのが素人魂クオリティ….
負荷が大きく落下しやすいので,整形台に乗せる際は眼窩に標本針を通し,頭部も支える.

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Fig. 4 頭部との連結
a) 連結部位の様子, b) 連結後の保持の様子
魚のホネは全体的に軽く,そこまで負荷がかかるもんでもないとは思っているけれど…
接着不備で落下すれば今までの努力が水泡に帰すので,慎重に…慎重に…


1-5. 腰帯の組立
除肉時に撮影した情報を頼りに,腰帯先端部を肩帯に接着する(Fig. 5a, b).
肩帯と連結したままの場合は省略.
また,腰帯が頭部から離れ,筋中に浮いている魚種(ナマズとかコイとかホネ取り対象になりやすい魚でも結構多い)の場合は,支柱作製時に合体させる(Fig. 5c).

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Fig. 5 腰帯の連結
a) 連結部位の様子, b) 連結後の様子, c) 腰帯が後方にある場合(ニシン)
赤三角は接着部位.



2. 整形
とりあえず全体をざっと見て,気になる部分をピックアップしていく.
今回のチカメキントキはヒレの構成がシンプルで粗整形でほぼポーズも決まってしまい整形の効果がちょっと分かりにくいため,過去に撮影したミドリフサアンコウの全身骨格を例に載せてみた(Fig. 6).

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Fig. 6 気になる部分のピックアップと整形後(ミドリフサアンコウ)


分解すれば除肉も薬品処理も簡単になるのにわざわざパーツを連結したまま作業を進めてきたのは,関節をふやかすことでポーズの微調整ができるため.
全身を水に入れてまとめて整形しようとするとうまく整形できないので,慌てず複数回に分けて整形していく(特に頭部).
整形の順番は特に決めているわけではないのだが,今までの記事を踏襲して一応番号を振ってある.
強いて挙げるとしたら,大きく動く/動かすパーツを先に,ヒレのようなボリュームが増すようなパーツや末端のパーツ,動きが小さい部位を後にしている.
また,既にいい感じになっている部分の整形は省略することも多い.

整形用の針は昆虫針でも竹ヒゴでも何でも使うが,錆が出る関係で鉄&メッキのまち針は使わない.
最近はステンレス製の長い針を入手することもできるようになり,厚みがある魚の整形作業がとても楽になった(Fig. 7).

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Fig. 7 整形で使用している針の比較
a) 剥製針, b) 自作のステンレス針, c) ステンレス製まち針(クローバー製), d) 昆虫針(志賀昆虫製)
最近は剥製針を購入しているが,かつては釣具店で購入したステンレスバネ鋼線(天秤仕掛け自作用)で自作していた.
柔らかいスチレンボードに刺すだけなので,適当に研いだ自作針でも十分使える.



さて気を取り直してチカメキントキの整形.

2-1. 頭部の整形
関節付近を程よくふやかし,乾いたキムワイプや針,スチレンボード等を使って保定・乾燥する.
僕が特に注意しているのは,鼻骨の位置(Fig. 8a),鰓条骨の間隔(Fig. 8b),顎の開き具合と上顎パーツの連動(Fig. 9),鰓蓋骨の開き具合,眼下骨の歪みあたりで,結構目立つ.

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Fig. 8 頭部パーツの整形の一例
a) 骨の整形, b) 鰓条骨の間隔の調整
鼻骨は左右の開き具合と高さが揃うよう調整.
どちらも小パーツかつ連結部分も点付けなことが多いため,クリーニング中に紛失しやすい.
位置が決まったら目立たない部分に接着剤を多めに流している.


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Fig. 9 顎の開閉と概要(マダイを例に)
主上顎骨・前上顎骨・下顎パーツの内外関係や開き具合を調整.
魚種によって上顎パーツの動き具合が変わるので,除肉時に確認しておくと良い.
また,主上顎骨末端が下顎パーツの内側に入っている写真をネットで見かける.
違和感がパないので,きっちり直す.



2-2. 肋骨の整形
付け根を軽くふやかして針で固定する(Fig. 10)…だけなのだが,ねじれや左右ズレがある気持ちが悪い.
1本の肋骨に対し複数の針を使用して修正することもあるので,肋骨が多い魚の場合は多めに用意しておくと安心.
また,外れてしまった肋骨は,前後の肋骨の位置関係が決まってから接着したほうがいい感じになるので,数本ならこの段階で接着している.

sb213_Fig.10.jpg
Fig. 10 肋骨の整形
a) 接続部をふやかしているところ, b) 乾燥時の保定の様子



2-3. 鰭条の整形
肋骨同様に個々の鰭条を広げて針で固定する(Fig. 11a).
作業に夢中になって気づかぬうちに先端に触れていることも多いので,作業中の破損に注意している.
鰭条を平面的に広げたいときは園芸ネットで押さえながら乾燥させるときれいに整う(Fig. 11b, ネットの表裏に注意).

sb213_Fig.11.jpg
Fig. 11 鰭条の整形
a) 保定の様子, b) 園芸ネットを使用した保定



2−3. 担鰭骨-脊椎骨の棘の間のクリーニング
担鰭骨‐脊椎骨の間にある軟組織や薄膜をクリーニングしきってしまうと,整形作業中に分離してしまうことがあり,終盤まで意図的に残しておくことがある.
組立と整形が完了すれば脊柱などはもう大きく動かすことはなく,担鰭骨の位置調整も(たぶん)終了しているので,担鰭骨-脊椎骨の間の接続部を薄膜や軟組織から接着剤に置き換える(Fig. 12).

sb213_Fig.12.jpg
Fig. 12 背鰭後半部担鰭骨の仕上げクリーニング
a) クリーニング前, b) クリーニング後


整形はとても好きな作業なので延々と続けてしまいがちだが,適度なところで切り上げる必要がある.
一度全体をカメラで撮影してみると,肉眼で見た時とは別の違和感に気づいたりすることもある(Fig. 13).

sb213_Fig.13.jpg
Fig. 13 整形後の様子


前回のクリーニング同様,ちまちました作業が多く,ちょっと時間がかかってしまった.
作業の途中で部屋の改装が入ったり,なんやかやと別の用事も挟み込まれ遅延に遅延を重ねた結果でもあるが,リアルタイム更新ということで勘弁してほしい.
そんな感じで今回はおしまい.


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2022年08月02日

魚話その212 シン・リアルタイム骨取りその6 〜クリーニングするよ〜

●チカメキントキの全身骨格を例に
※編集して2023年4月1日に再投稿しました.


ここからはちまちま作業のターン!
軟組織が残っている部分を濡らしたキムワイプでふやかし,ピンセット等でちまちま除去する.
ホームセンターで手に入る有機溶剤対応の細筆(コシが強めのやつ)の先端をカットしたブラシも便利だ(Fig. 1).


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Fig.1 クリーニングで使用する器具
先端がしっかり合うピンセットがあると,作業効率が断然違う.
僕が学生の頃の実習では,「先端が精密なピンセットを曲げたら切腹するくらいのつもりで大事に使ってください」と言われたことも…



全身をふやかすのではなく,1ヶ所(例えば尾ビレのみとか)ふやかし→クリーニング→一晩乾燥→別の場所を…といった感じで作業している.
また,作業に夢中になって周囲が見えず,あちこちにぶつけてしまい軟条の先端を破損してしまうこともある.
ここまで来て破損するのは絶対に避けたいので,スチレンボード等を利用し,繊細な部分を保護している.

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Fig. 2 クリーニング時の破損防止用の保定


1. 脊柱
脊柱が緩んで体軸が歪むのを防ぐため,軽く絞ったキムワイプで表面の肉だけをふやかす.
神経棘や血管棘の間の膜や脊髄,血管,周辺の膜もこの時に除去する.
必要に応じて歯間ブラシなども併用すると綺麗になる(Fig. 4).
神経局や血管棘の間の膜は担鰭骨と見分けづらいこともあるが,ふやかすと硬さに差が出るので,落ち着いて選別したい.
魚種によっては脊椎骨の強度に不安が残る事もあるので,脊髄クリーニングの確認がてら脊髄が通っていた穴に針金を入れ,補強を行うこともある.

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Fig. 3 脊柱のクリーニング
a) クリーニング前, b) クリーニング後


2. 肋骨&肉間骨
肉間骨のみ連結部位を記録してから外し,個別にクリーニング.
肋骨は接続部をふやかして角度を微調整できるメリットの方が大きいため,肋骨は外さずギリギリまでクリーニングすることが多い(Fig. 5).

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Fig. 4 クリーニングのため一時的に外した肉間骨
接着した肉間骨の角度はアセトンを染み込ませたキムワイプで緩ませることにより再調整可能(要換気).



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Fig. 5 肋骨および肉間骨のクリーニング
a) クリーニング前, b) クリーニング後





3. ヒレ
末端部がかなり破損しやすくなっているので,慎重に作業する.
作業対象となるヒレの鰭条を全てふやかし,1本ずつほぐす.
軟条は(左右の結合まで)過剰に分離してしまう恐れがあるので,ほぐしすぎには注意(Fig. 4).
メス等を使う場合は,軟条の切断に注意.
鰭条がほぐれたら,色が付いた皮をピンセットで剥がす.
目立たぬようであれば,無理に攻め込まずほどほどで切り上げる.
鰭条の付け根付近は軟組織が多く黄変しやすいので,ピンセットを使って丁寧にクリーニングする.
冒頭で触れた毛先カット筆で鰭条の流れに沿って撫でると,残った皮や膜が浮いて掴みやすくなる.

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Fig. 6 軟条の構造(マダイの左胸ビレ軟条を例に)
軟条はれ付け根から末端にかけて多数のパーツが連結しており,さらにそれらのパーツが中心で貼り合わさって1本の軟条を構成しているので,ほぐしすぎには注意が必要.


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Fig. 7 ヒレのクリーニング
a) クリーニング前, b) クリーニング後



4. 肩帯&腰帯
擬鎖骨の凹みに肉が,鰓側に厚めの皮が残りがちなので,きっちり除去する(Fig. 8).
薄い部分が破損しやすいので注意.

sb212_Fig.08.jpg
Fig. 8 肩帯および腰帯のクリーニング
a) クリーニング前, b) クリーニング後
赤矢印が除去対象となる軟組織.



5. 頭骨
全体的に凹凸が多く,特にくぼんだ部分に貼り付いた皮が取りづらい.
鼻骨周辺や神経頭蓋の内側に有色の皮が残りやすいので,丁寧に除去.
特に神経頭蓋の内側(脳が収まっている空間の天井部分)は見落としがちで,外側を擦ってもきれいにならない時は,内側のクリーニングで改善することも多い.
小さく丸めたキムワイプや歯間ブラシで擦ってみて色が落ちるようであれば,しっかりクリーニング.
鰓蓋骨の裏側の皮も目立つので,除去する.
頭頂部や鰓蓋のような最初に視線が行きがちな部分は少しでも残っていると目立つので,丁寧に作業.
また,側頭骨周辺の薄皮も見落としがちなので,軟組織が残っていないか確認する.

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Fig. 9 頭骨のクリーニング
a) クリーニング前, b) クリーニング後
赤矢印が除去対象となる軟組織.


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Fig.10 鰓弓のクリーニング
a) クリーニング前, b) クリーニング後



6.顕微鏡を用いたクリーニング
魚のサイズや視力,老眼等々で作業しづらいこともある.
そんな時はルーペや実体顕微鏡を使うのもありだと思う.
総合倍率が4〜8倍もあれば,かなりの戦力になる(むしろ高倍率だと作業しづらい).
ホネ以外にも使う人は奮発するもよし,模型やホネ作業の補助用であれば,中古や海外製品まで視野に入れると2〜3万円から入手が可能だ.
眼鏡式ルーペや拡大鏡付きライトスタンド等も試したが,作業後の疲労感や相性もあり,現在は実体顕微鏡に落ち着いている.
肉眼での作業にこだわるのもありだが,最終的なゴールがホネを仕上げることにあることを忘れないようにしたい.

sb212_Fig.11.jpg
Fig. 11 我が家の実体顕微鏡

sb212_Fig.12.jpg
Fig. 12 軟条末端のクリーニング
a) クリーニング前, b) クリーニング後
右下の黒い丸棒は0.5mm径のシャーペンの替え芯.



圧倒的に拘束時間が長く,ず〜〜〜〜〜っと単調作業が続くだけなので,この工程は薬品処理以上に書くことがなかった.
薄くて細い繊維や皮をつまむので,ピンセットの先端がずれているようであれば,微調整しておく.
つまんでいるはずなのに,いつまでも取れない…なんて状況は本当にストレスが溜まる.
この段階までくると,(しっかり脱脂を済ませていれば)臭いもほとんどしないので,快適な部屋でオンライン雑談をしたりラジオや音楽を聴きながら作業をすることも多い.
また,その日の作業前と作業後に写真を撮り,作業の進捗を確認しつつ自己満足するのも重要だ.
とにかく単調作業なので,モチベーションを維持しつつ,できるだけストレスフリーで切り抜けたい.


sb212_Fig.13.jpg
Fig. 13 クリーニングが大体終わったところ


クリーニングの前後で結構違うのが分かるだろうか?
疲れたので今日はここまで.


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2022年07月15日

魚話その211 シン・リアルタイム骨取りその5 〜漂白と粗整形やるよ〜

●チカメキントキの全身骨格を例に
※編集して2023年4月1日に再投稿しました.



今回も液体に浸すだけなので,余談が多めの回.
脂ノリノリだったので,頭骨は有機溶剤脱脂(限定公開記事の方)の最終段階までやってしまったが,いい感じに脂は抜けた(Fig. 1).

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Fig. 1 脱脂が完了した様子


脱脂の過不足は脱脂液を透明なガラス板に数滴垂らし,揮発後の残渣(ざんさ)を見て簡易判断する(Fig. 2)もよし,ホネをしばらく放置して変色しないか観察するのでもいいと思っている.

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Fig. 2 脱脂の確認例
我が家には作業待ちのホネが溜まっていて自動的に放置期間が長くなるので,自然放置による変色の有無で判断することが多い



除肉でも触れたが脳は脂の塊なので,完成直後は真っ白でも,時間の経過とともに残った脳組織が酸化して変色することも多い(Fig. 3).

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Fig. 3 脳の除去不足で頭頂部が褐変した頭骨(マツカサウオ)


さて.
僕がやっている漂白とすすぎの例をFig. 4に示した.
漂白作業は地味に拘束時間が長いので,脱脂済のホネであれば適当に日程調整し,週末や連休の午前中から始めている.
刺激臭はないが,跳ねた滴が眼に入るとダメージを受けるので,安全眼鏡を着用する.

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Fig. 4 漂白・すすぎの例


1. 有機溶剤抜き
残留した有機溶剤と漂白液との反応が怖いので,晴天時を狙い風通しの良い屋外に2日ほど放置して完全に抜く.
厳寒期や梅雨時,大型魚の場合はもう少し長めに放置する.


2. 漂白
オキシドールないしは1〜3%に希釈した過酸化水素水に漬ける(Fig. 5).
残った軟組織が発泡してホネが浮くので,一回り小さいタッパーやPP板で落とし蓋(金属はNG)をし,漂白液液面下に沈むようにする.
使用後の漂白液は,短期間のうち,かつ,数回であれば使いまわし可能だが,危険なので絶対にスクリューキャップ式の容器で保管しないこと(注意点5-2を参照)!

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Fig. 5 漂白の様子
a) 漂白液に浸した様子, b) 「落とし蓋」をしてホネを水面下に沈めた様子



3. すすぎ
大きめの容器にたっぷりの水を用意し,何度も水を入れ替えながら漂白液を完全に抜く(Fig. 6).
同サイズの容器が2つあると作業が楽だ.
魚体や水量によって適切な回数は異なるが,冬季は10回目以降のすすぎで一晩放置することもある(夏季は怖いので一晩放置はしてない).
すすぎ初期はホネに残った過酸化水素により反応が継続する可能性があるため,どんなに時間がなくても放置しないようにしている.

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Fig. 6 すすぎの様子


魚の体型によっては水交換の際に強い負荷がかかる可能性もあるため,園芸ネットでバスケットを作る等,魚体保護のための細工もする(Fig. 7).
また,パーツを紛失しがちなので,ザル越しに換水する等のリスク管理を行いたい.

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Fig. 7 破損防止のための自作かご(イヌノシタ)


4. 乾燥・粗整形
すすぎから回収したらペーパータオルに乗せて軽く水を切り,スチレンボードやステンレス針を使い,脊柱と頭部の角度を調整する(Fig. 8a).
乾燥時に関節の連結部が収縮して全体的に縮む可能性があり,鰭条末端がスチレンボードに貼り付いていると断裂する可能性がある.
スチレンボードの小片や針をうまく使い,ボード本体から鰭条末端を浮かせて乾燥させると被害を軽減できる(Fig. 8b).
体の中心部から末端に向けて整形すると良い感じに仕上がるので,体軸の粗整形は地味に重要だ.
肩帯や腰帯はこれまで同様にフックで吊るしても良いし,連結が緩くなっているようであれば,針でうまく角度調整をして鰭条末端がスチレンボードに触れないようにして乾燥させておく(Fig. 8c).
頭骨は一度乾燥すると左右の膨らみ具合や鰓弓の整形が面倒なので,丸めたキムワイプ等(ティッシュペーパーだと取り出す際に繊維が残って面倒)でいい感じに膨らませておく(Fig. 8d).
作業が順調な場合,いずれの部位も全体的にふやけている状態は今後ないので,鰭条を分離しておく等,この状況を最大限に活用したい.
詰め物等で乾燥しづらくなっており軟組織に雑菌が繁殖するリスク等を加味し,微風を当てて乾燥している(急激な乾燥は変形・破損のリスクがある).

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Fig. 8 粗整形の様子
a) 体軸の整形,b) 鰭条を浮かせている様子,c) 肩帯:腰帯の乾燥,d) 鰓弓の整形の様子



以降は漂白〜粗整形の注意点.

5. 注意点
5-1. パーツが緩くなっている
漂白液はパーツ間の連結を緩くする作用があり,長時間漬けすぎるとパーツ分離,最悪の場合は骨がモロモロになってしまう.
こまめにチェックし,程よく赤・黄系の色が抜けたらすすぎへ.
濡れている時は若干黄色味を帯びているホネも乾燥と共に白味が増すので,一度粗整形まで進めて白さ不足を感じたら再漂白するのでも良いと思う.
二度手間になるが,崩壊するよりはずっっっっっっとマシだ.
また,漂白で発泡した軟組織の浮力増加や連結の緩みの影響は結構大きく,一部のパーツだけに錘を乗せると変な負荷がかかり,分解などのトラブルに繋がる.

5-2. 漂白液の再利用と保管について
使用済みの漂白液(過酸化水素水)は,しっかり除肉と脱脂が済んでいれば数回の再利用は可能と考えているが,保管はPP製タッパーに軽く蓋を乗せる程度にしたい.
液中に残った軟組織等と反応して発生したガスで容器内の内圧が高まることがあり,スクリューキャップ式容器やロック付きの容器では破裂の恐れがある(Fig. 9).
販売時にオキシドールが入っていた容器なら…と言いたいところだが,一晩放置でパンパンに膨らんでいて冷や汗をかいた経験があるので,お薦めしない.
破裂しないにしても,次回蓋を開けた際に「プシュッ」っとガスが出て顔に雫が飛んできても嫌だ…

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Fig. 9 a) 35%過酸化水素水の容器に設けられたガス抜きの穴, b) 使用後のオキシドールを戻してパンパンに膨らんでしまった容器


5-3. 過酸化水素は温度上昇でパワーアップする
オキシドールの主成分である過酸化水素は温度が上がるとパワーアップしてホネがバラけたり,最悪ホネの表面がボロボロになるため,夏季の漂白は特に注意している.
すすぎ用の水も配管に滞留して温まった水を流し切り,そこそこ冷えた水を使うようにしないと同様の悲劇が起きる.
手間暇かけた全身骨格が,目を離した隙に分解しているいるのを発見した思い出は数え切れず,思い出しただけで震えてくる(Fig. 10).

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Fig. 10 a) すすぎ工程で鰭条が崩壊したイヌゴチ, b) 半身骨格として仕上げたイヌゴチ
冷水と間違えて温水を入れてしまった僕が100%悪い.
脊柱他さまざまな場所が分離していたが,最終的には全部繋げ直し,半身骨格として仕上げることはできた.
が…かなり精神的ダメージを負った.


5-4. ステンレスも腐食する
ステンレスはホネに残った軟組織&過酸化水素と反応して腐食することがあるため,解剖器具を錘代わりに使うのはもとより,ステンレス針金で数珠繋ぎする場合も注意が必要だ.
条件次第では半日ほどで赤錆が出たり,針金が切れる(Fig. 11).
錆色がホネに移ると,薬品工程が一つ増えて面倒だ.

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Fig. 11 a) ステンレス製品に発生した赤錆, b) 錆で切れた針金


5-5. 虫害やカビに注意
脱脂が終わって魚臭がかなり軽減されているとはいえ,漂白の前後いずれもホネの各所に軟組織が残った状態になっている.
虫害発生時は部屋丸ごとの作業になるので,作業待ちのホネには注意.
今まで無縁だったから…と思っていても,ある日突然虫やカビにロックオンされてしまう.

カワハギの尾ビレのように色が抜けにくいこともあるので,ほどほどのところで切り上げるのも大事だと思う(Fig. 12a).
また,魚種によっては漂白前から十分に白いこともある.
そういう場合は不要な破損を防ぐため,漂白液に鰭条を触れさせぬように浸すこともある(Fig. 12b).

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Fig. 12 鰭条の漂白
a) 漂白後も色が残るウマヅラハギの鰭条,b) 鰭条と漂白液の接触を避けているトクビレ



やることやったので,今日はここまで.


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2022年07月03日

魚話その210 シン・リアルタイム骨取りその4 〜脱脂やるよ〜

●チカメキントキの全身骨格を例に
※編集して2023年4月1日に再投稿しました.


カリカリに乾燥したら薬品による脱脂スタート.
乾燥で腐敗を遅らせることはできるが,脂の酸化はどんどん進行する.
あくまで概念図だが,時間と除肉とホネの色はFig. 1のような感じになるので,変色が始まる前に除肉と乾燥を切り上げたい.
魚種によっては数日で黄変が始まる.

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Fig. 1 時間経過と変色のイメージ


タチウオの全身骨格のように長くて柔らかい魚は胴体部分をロール状に巻いたり,普通の形状の魚でも負荷のない範囲で曲げたり,尾椎右側に切れ込みを入れ容器に合わせて折ることもある.

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Fig. 2 脱脂に向けポーズを変える
a) 容器に合わせ尾椎を折ってケースに収めた様子(チカメキントキ).b) ガラス容器に合わせ長い胴体を丸めた様子(タチウオ)



1. アルコール脱脂
ぎりぎり収まるサイズのPP製タッパー(Fig. 2)を探し,エタノールに沈める.
ビー玉の使用で薬液の節約(通常サイズで約2.3mL,大型で約4.2mL)は可能だが,重量や衝撃でパーツ破損が破損するので注意.
数日間浸しておき,晴れた日に屋外で風乾.
動物や風による紛失・破損にも注意だが,毒性が低いとはいえエタノールも燃えやすいので,火気厳禁だ.

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Fig. 3 アルコール脱脂の様子


とりあえず不特定多数に無条件公開する脱脂法はここまで.
アルコールによる脱脂の繰り返しと漂白でもでも脂はそれなりに抜けるので,風乾後は漂白工程に移るのも1つの選択肢だ.
実際,キアンコウやカワハギ類は脂が非常に少なく,アルコール以外の有機溶剤を用いた脱脂工程を省略しても白く仕上がる(Fig. 4).

sb210_Fig.04.jpg
Fig. 4 アルコールのみで脱脂したウスバハギ全身骨格(漂白後)


10年以上ホネ取り法を記事で更新できなかった理由の1つは,「自己責任で」書いても読み落とされてしまう可能性があったためだ.

というわけで,どうしてもアルコール以外の有機溶剤を用いた脱脂法も知りたいという方は,下記の「警告」とその下の「警告に同意してアルコール以外の有機溶剤を用いた脱脂法も読む」をクリックしていただき,閲覧してほしい.

アルコール脱脂のみで構わない場合は,ここで本日の記事は終了.




【警告】

リンク先の記事で紹介している手法は,慢性的な中毒症状,火災,死亡など重大なリスクを伴います.
特にアセトンは薬品の組み合わせ(前段階に使用した薬品の残留など)や,酸化剤等の薬品混入によって爆発物を生じることがあり極めて危険なので,注意が必要です.
もし使用する場合は自己責任で使用・保管・管理・廃棄に関してしっかり調べてからにしてください.
本記事は「この方法でやるといいよ」ではなく「私はこの方法でやってます」という紹介なので,仮に家屋の火災や死亡等の重大事故が発生しても,私は一切の責任を負いません.
また,「ここの記事でやってたよ」と別のメディアで第三者に伝える場合も,リスク管理について触れていただければと思います.
伝言ゲームでどんどん情報が削ぎ落とされた後に事故が発生するのも嫌なので.
これらの条件にご理解・同意いただけた方のみ,ご覧ください.
ID・パスワードともに半角小文字でfishです.


「上記の警告内容に同意して有機溶剤を用いた脱脂法も読む」



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2022年06月29日

魚話その209 シン・リアルタイム骨取りその3 〜頭部の除肉やるよ〜

●チカメキントキの全身骨格を例に
※編集して2023年4月1日に再投稿しました.


今回は頭部のJO☆NI☆KU開始.
見やすい角度や説明のしやすさの都合で,いくつかの魚種が混在しているが勘弁してほしい.
どうしても撮りやすい形状などに差異があるのだ…

【注意!!!!!】
今回は除肉の回なので,解体中の写真が多数出てきます.
食用に魚を捌く写真とほぼ一緒なのですが,血や内臓が苦手な方がいらっしゃるかもしれません.
それでもご覧になりたい方のみ以下の本文をご覧ください.
【注意!!!!!】



1. 肩帯と腰帯の分離と除肉
肩帯と,(魚種によるが)腰帯を外す.
肩帯はいくつかのパーツで後頭部と連結しているわけだが,板状のパーツが重なっているだけであるため、時間が経つと重なり具合が分からなくなる.
適当に組み立てるのも一つのやり方かもしれないが個人的にはモヤモヤするので,左右で異なる連結部位で分断しておき,情報を残すようにしている.

sb209_Fig.1.jpg
Fig. 1 a) 頭部と肩帯の分離している場所,b) 分離された肩帯および腰帯,c) 除肉後の肩帯および腰帯(黒矢印が後側頭骨,赤矢印が擬鎖骨)
普段は後側頭骨-上擬鎖骨間(上の黒三角)か上擬鎖骨-後擬鎖骨間(下の黒三角)で分離している.
今回は偶然既にグラついている部分があったので,左肩帯は上擬鎖骨‐擬鎖骨間で,右肩帯は神経頭蓋‐後側頭骨間で外した.


2. ヒレの除肉
新鮮で冷凍焼けしていない魚限定だが,鰭条の付け根に切れ込みを入れピンセットで慎重に引っ張ると,手袋を脱ぐように皮を剥くことができる(Fig. 2).
ついでに鰭条の間の膜もクリーニング.

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Fig. 2 ヒレの除肉(イヌゴチ)
魚種により難易度は大きく異なるが、皮が厚い魚種は新鮮なうちに剥皮を済ませた方が後で楽.



小型魚の場合は肩帯や腰帯をが小さすぎて除肉時に持ちづらいこともあるので,頭部からの分離と順番を入れ替え,持ち手代わりにすることもある.
大まかな流れは大体一緒だが,細部はその時の気分や魚種でアレンジしている.


3. 頭骨の除肉
頭骨の除肉はとにかくパーツの紛失に注意しながら作業を進めている.
Fig. 3は過去に公開したデータの一部だが,参考に今回の記事でも頭部パーツの大体の位置と名称を載せておく.

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Fig. 3 マダイの頭部パーツ一覧
1. 神経頭蓋,2. 鼻骨,3. 軟骨性強膜,4. 涙骨(眼下骨1),5. 眼下骨2-6, 6. 前上顎骨,7. 主上顎骨,8. 歯骨,9. 角骨&関節骨,10. 口蓋骨,11. 外翼状骨,12. 内翼状骨,13. 後翼状骨,14. 接続骨,15. 方形骨,16. 舌顎骨,17. 前鰓蓋骨,18. 主鰓蓋骨,19. 間鰓蓋骨,20. 下鰓蓋骨,21. 基舌骨,22. 下舌骨,23. 角舌骨,24. 間舌骨,25. 間舌骨,26. 尾舌骨,27. 鰓条骨1-6,28. 上側頭骨1-2,29. 後側頭骨,30. 上擬鎖骨,31. 後擬鎖骨1-2,32. 擬鎖骨,33. 肩甲骨,34. 烏口骨,35. 射出骨1-4,36. 上咽鰓骨,37. 上鰓骨1-4,38. 上咽鰓骨,39. 角鰓骨1-4,40. 下咽頭骨,41. 下鰓骨1-3,42. 基鰓骨1-3, 43. 小軟骨片,44. 腰帯,45. 鰭条骨,A. 胸ビレの軟条,B. 腹ビレの軟条
左右に対で存在するパーツは下線を引いた.
複数存在する場合は数字を振ってあるが便宜的に振っただけなので,「眼下骨2が…」と研究者と話しても通じないと思う.



これを踏まえ…魚種にもよるが,眼下骨,鼻骨,上側頭骨は頭部の剥皮時に紛失しやすいので注意が必要.
プラプラしているパーツは後の作業で紛失する可能性があるので,位置関係と連結状況を撮影してから別容器に回収・保管し組立時に合体させる(Fig. 4).

sb209_Fig.4.jpg
Fig. 4 外れてしまった小パーツ保管の一例
静電気で気づかぬうちに紛失する可能性もあるので,マスキングテープでケースに貼り付けメモを残すようにしている.



4. 細部の除肉
細くて破損しやすい鰓条骨や鰓弓もピンセット2本使いで除肉している.
新鮮なうちにパーツを見極めてしっかり押さえれば,案外きれいに毟り取ることができる(Fig. 5, 6).

sb209_Fig.5.jpg
Fig. 5 鰓弁の除肉の様子(イヌゴチ)
a) 鰓弁を毟り取っている様子,b) 除去後


sb209_Fig.6.jpg
Fig. 6 舌周辺の除肉の様子
a) 除肉前,b) 除肉後



下顎の内側(具体的には歯骨の内側)(Fig. 7)と上顎の内側(口蓋および翼状骨群)に張り付いている厚い皮も丁寧に剝がす(Fig. 8).

sb209_Fig.7.jpg
Fig. 7 歯骨内側(黒矢印)の除肉の様子
a) 除肉前,b) 除肉後


sb209_Fig.8.jpg
Fig. 8口蓋の剥皮
a) 副蝶形骨を傷つけないように切れ込み(黒矢印)を入れている様子,b) 剥皮中の様子



いわゆるホホ肉を取り除くと翼状骨群が見えるが,薄くて透明感があるパーツのため内側に張り付いている皮が丸見えになり,変色が目立つ.
ついでに前上顎骨〜翼状骨群の間に張っている膜(よく釣り針がかかるところ)も丁寧に除去(Fig. 9).
ちょっと面倒だが,顔周りの仕上がりに差が出るのできっちり除去しておきたい.


sb209_Fig.9.jpg
Fig. 9 口周りの膜の除去


5. 脳の除去
眼窩から「薄膜」経由で神経頭蓋の内部にアクセスできるので,キムワイプで作ったコヨリや歯間ブラシを突っ込んで脳を除去する(Fig. 10).
脳は脂を大量に含むため,頭骨内に残っていると頭頂部の褐変の原因となる.
もろに目立つ場所なので,脱脂の第一段階と言っても良いんじゃないかというくらい重要な工程と考えている.

sb209_Fig.10.jpg
Fig. 10 脳の除去
a) 眼窩から見た「薄膜」(黒矢印),b) 歯間ブラシによる脳の除去,c) 歯間ブラシに付着した脳,d) コヨリで吸着した脳

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Fig. 11 a) 頭骨の除肉前,b) 除肉後


8〜9割くらい除肉したら軽く水に漬けて細かい肉屑を落とし,前回除肉した胴体とともにぬるま湯+中性洗剤の溶液に1時間ほど浸す(Fig. 11a).
その後「バケツに張った冷水に5分ほど浸す→水を交換」という作業を20回くらい繰り返す.
パーツ間の連結が緩くなるため就寝中(こまめに確認できない)に洗剤処理を充てないようにし,すすぎも排水時には目の細かいザルを併用して紛失を防ぐ・強い流水を当てない等丁寧に取り扱う.

sb209_Fig.12.jpg
Fig. 12 a) 中性洗剤処理,b) 乾燥の様子


ヒレが付いているパーツは全部吊り下げ,頭骨はバットに乗せて微風を当てつつ乾燥(Fig. 12bおよび前回のFig. 13b).

頭部のクリーニングは楽しい作業だが,脂が酸化してどんどん黄変するので,1日で完了させるか再度水ごと凍結して保管する.
変色後も脱脂と漂白である程度リカバーできるが,変色前に脂を抜いておいたほうが綺麗に仕上がる.

趣味ホネ人は結構多いが,魚以外を扱う人が多い印象だ.
身近なところで理由を問うと,パーツが多くて面倒とか,華奢だからとかが主な理由のようだ.
Fig. 3は「マダイの頭部パーツのしおり的な何か」というフリーの写真集の一部で,パーツを数えてみたら,頭骨,胸ビレ・腹ビレ周囲のパーツを合わせて100近くあった.
今回のシリーズも全部バラバラにする作戦を考えたが,そんなにサイズが大きくないし,ブログ執筆と並行するにはちょっときついので,できるだけ繋がった状態で作業を進めた.
軟組織が若干残ってしまうことと,入り組んだ場所の作業がしづらいのがネックだが,ふやかすことでポージングしやすいという利点は捨てがたい.

というわけで本日はここまで.


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2022年06月27日

魚話その208 シン・リアルタイム骨取りその2 〜胴体の除肉するよ〜

●チカメキントキの全身骨格を例に
※編集して2023年4月1日に再投稿しました.


しばらく余裕があるかなと思っていたら,仕事帰りに寄ったスーパーで良い感じのチカメキントキを発見してしまったので,さっそく更新.


sb208_Fig.1.jpg
Fig. 1 チカメキントキ(新潟産)

【注意!!!!!】
今回は除肉の回なので,解体中の写真が多数出てきます.
食用に魚を捌く写真とほぼ一緒なのですが,血や内臓が苦手な方がいらっしゃるかもしれません.
それでもご覧になりたい方のみ以下の本文をご覧ください.
【注意!!!!!】






15年前の記事と異なるのは,パイプ洗浄剤や入れ歯洗浄剤,塩素系漂白剤(ハイター)といった趣味ホネ界隈で大人気の薬品や熱湯を使わなくなったこと.
大型魚の除肉では熱湯を使用することもあるが,通常サイズの魚では熱湯もほとんど使わなくなった.
薬品除肉は手軽だが,魚では歯やヒレの末端,鰓蓋骨の縁といった細かい/薄いパーツの脱落や損傷・変形が発生することがあり(Fig. 2, 3),修復も面倒という欠点も伴う.
なんだか逆行しているようだけれど,破損少なめの格好良いホネを飾りたいので,手作業メインに戻った.


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Fig. 2 熱湯処理によるカサゴ類の歯抜け
歯が残っているイズカサゴ(上段)と歯が抜けたカサゴ(下段)
上下で種が異なるので厳密な比較にはならないが…歯が抜けてしまった時のイメージとして.
小さいパーツだけれど,抜けると結構目立つ上にナマズやカサゴのようなおろし金系の歯を持つ魚種は修復もはや不可能.


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Fig. 3 次亜塩素酸ナトリウム処理によるワカサギ尾ビレ軟条の破損
10倍希釈なのでかなり濃いと感じるかもしれないが…もっと薄くても長時間放置すれば同じことが起きるかもということで,参考程度に見てください…
ちなみに軟条は数珠つなぎの構造物なため,どこから欠けるかわからない.
また,どの除肉用薬品も無縁ではないし,なんなら漂白で使用する過酸化水素水でも発生しうる.



1. 撮影
人によって記録方法は異なると思うが,メモなりスケッチなり写真なり,複数の方法でたくさん残していくのが良いと思う.
良い感じ(に見える)全身写真が1枚撮れても,「棘と鱗が同色で見辛かった…」「もう少し斜めから見たかった…」と後悔したことが多々あったので,こまめに記録するようにしている.
完成後に魚種を同定するのは困難なので,種同定と記録の時間はしっかり確保しておきたい.
僕は記憶力に自信がないので,1尾の除肉で数百枚は撮る.

除肉作業と組立作業はそこそこの期間が開いているはずで,写真を見返しても撮影意図を思い出せないこともあるので,僕は三角形にカットした黒マステを添えて撮影し,撮影意図も残すようにしている(Fig. 4).


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Fig. 4 黒マスキングテープの活用
a) ニシン上神経骨(肉間骨の一種)の付け根部分を指している様子,b) 愛用している黒マスキングテープ(15mm幅)
細かいパーツの付け根や突起の位置など,背景に紛れて見辛くなりがちな被写体の撮影に愛用している(使い捨てにできるので便利).



また,情報の記録ではないが,組立時にもう1尾用意して参考にするという方法もある.
資料はいくらあっても困らないので,骨格図が載っている文献等も事前に探す.
ただし,個人作製の写真に関しては取り漏らしや破損もたまにあり,共倒れになる可能性があるため,鵜呑みにせず参考に留めている.


さて.
除肉開始.

2. 剥皮
背ビレの根元付近に刃を浅く入れ,ピンセットで皮をつまみ,担鰭骨に気を付けながら皮と筋肉の間に刃を滑り込ませ,皮を剥く(Fig. 5).
魚種によっては筋中に肉間骨が張り巡らされているため,ホネの空間配置をあまり把握していない場合は皮と筋肉は分けて取った方が無難だ.
剥皮により力を入れなくても刃を進められるようになるため,華奢な肉間骨の存在にも気づきやすい.
胸ビレ周辺は後擬鎖骨を破損しがちなので注意.
また,剥製を作るわけではないので,皮は細切れでいい.


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Fig. 5 剥皮の様子
a) 剥皮開始,b) 左半身の剥皮が終了



3.除肉
刃の進め方は全然違うが、調理法でいうところの5枚おろしを参考に,胴体を五ヶ所に分けて除肉している.
肛門から刃を入れ,腹ビレの付け根まで刃を進め,取れる分だけ内臓を除去する(Fig. 6).
胸ビレ付け根の辺りに心臓と太い血管があり,そこから出血しがちなので,ティッシュを丸めて突っ込み,可能な限り血液や腹腔内液を吸い取る.
また,ヒレを支える骨や肋骨、肉間骨に注意.


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Fig. 6 除去した内臓
食道や心臓は頭部を分断してから除去すると楽.



皮内臓を除去したら,再度背側から刃を入れ,いわゆる五枚おろしみたいに筋肉を切り取る(Fig. 7).
鮮魚店で入手可能なスズキ目の食用魚ならシンプルな棒状の肉間骨が多いと思うので,背側から進めた刃先が肉間骨に当たったら刃を体表側に向け,背身を回収するように除肉する.
その後肉間骨列の腹側に切れ込みを入れ,肋骨や尾椎の血管棘に沿って刃を進め,腹身を回収するように除肉する.

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Fig. 7 側面の除肉
a) 上椎体骨の位置(点線部分),b) 除肉が済んだ様子,c) 肋骨(黒矢印)と上椎体骨(白矢印)



チカメキントキの場合は肉間骨として上椎体骨が1列並んでいるだけなので作業しやすいが,ニシン目やサケ目魚類のように上神経骨や上肋骨,上椎体骨といった複数種類の肉間骨が1つの脊椎骨にくっついて筋肉の中に埋まっている場合は注意が必要だ.
ちょっと脱線するが,普段「背骨」と呼んでいるひと繋がりのホネを脊柱と呼んでおり,それぞれを構成する中心部のパーツ1つ1つを脊椎骨と呼ぶ.
そして,脊椎骨の左右にくっついているのが肋骨や肉間骨(上椎体骨,上肋骨,上神経骨等)で,これらの有無は魚種によって異なる.
脊柱は頭のすぐ後ろ〜内臓が収まっている辺りまでは肋骨がくっついており,その一群を腹椎,それより後ろ側を尾椎と呼ぶ(Fig. 8).
厳密には腹椎と尾椎は横突起の有無や血道弓門の有無で分けられるのだが,長くなるので今回は省略.

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Fig. 8 a) バショウカジキ全身骨格と腹椎・尾椎,b) ニシン腹椎,c) ニシン尾椎,d) ティラピア腹椎,e) ティラピア尾椎
1. 上神経棘 2. 神経棘 3. 上神経骨 4. 椎体 5. 上椎体骨 6. 上肋骨 7. 肋骨 8. 血管棘
b〜eはいずれも右斜め前方より撮影.



ここまで除肉できたら,脊柱がかなり露出していると思うので,刃物の先端を脊椎骨に刺して連結部分を探し出し,頭部付近の脊椎骨を数個残して胴体と分断し,水とともに頭部を凍結保管する(Fig. 5).
頭部は時間がかかるので,僕の作業スピードでは平日に胴体と頭部の状肉をこなすのはちょっとキツいのだ.

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Fig. 9 a) 頭部/胴体の分断,b)頭部の保管



これで胴体に集中できるようになった.
脊柱の神経棘・血管棘の間に残った肉はブラシやスパチュラ等で落とす(Fig. 10a).
肋骨や神経棘・血管棘間の膜は薬品処理時に脊柱や鰭のバラケ防止のため残しておき,漂白後に除去している.
また,脊髄や血管もピンセットや歯間ブラシ等で取り除く(Fig. 10b).

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Fig. 10 a) スパチュラによる除肉,b) 脊髄の位置(上の黒三角)と血管の位置(下の黒三角)


肋骨と肉間骨はそれぞれの隙間に刃を入れておき,少しゴツめのギザ付ピンセットで根元を押さえながら作業すると,除肉中に抜け落ちるリスクが減る(Fig. 11).
複数本まとめてやろうとしたり,根元を押さえずに力を入れて作業すると,ホネが抜けてしまうので注意が必要.
また,骨表面にピンセットが直接当たると傷がついてしまうことがあるので,小さいハサミやメス等でチマチマ除肉したり,脱脂と漂白後に肉をふやかして爪でしごくこともある.

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Fig. 11 a) 肋骨除肉前,b) 肋骨周辺の除肉の様子,c) 肋骨除肉後


ここまでの作業が終わったら,冷水に数時間漬け,何度か水を交換しつつ血抜きを行う(Fig. 12).

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Fig. 12 血抜きの様子


長時間浸しておくと雑菌が繁殖して腐敗したり歯や軟条が脱落していくので,数時間で回収している(就寝中に放置していて何度か失敗した).
また,温水は血液が固まって除去しづらくなるので注意が必要だ.
最後にアンコウの吊るし切りのごとくフックでどこかいい感じの場所にぶら下げ,微風を当てて乾燥(Fig. 13a, b).

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Fig. 13 a) 乾燥の様子,b) 乾燥に用いている卓上扇風機


バットなどに寝かせて乾かしても良いが,軟条末端が壁面に貼り付いて切れてしまったことがあったので,それ以来鮮度が良く軽い魚に関しては吊るして乾燥するようになった.
タチウオのように長くて柔軟な魚の場合は,ロール状に巻いて脱脂用の容器形状に合わせて乾かしている.
ただし,この時も軟条末端の破損が怖いので,竹ひご等で容器壁面と密着しないようにする(Fig. 14).


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Fig. 14 壁面から浮かせつつ容器形状に合わせて乾燥させている様子(タチウオ)


疲れたので今日はここらで終了.


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posted by osakana at 19:00| 千葉 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年06月25日

魚話その207 シン・リアルタイム骨取りその1 〜使用している器具や薬品など〜

●チカメキントキの全身骨格を例に
※編集して2023年4月1日に再投稿しました.


Twitterって手軽で楽しいね!
このブログの全盛期は長い大学院生の頃で,2010年前後は卒論・論文投稿・就職・引越的etcがてんこ盛りで疲弊,社会人になってからは魚のホネがメインになってしまいネタの多様性確保ができず,更新が途絶えた次第.

さて.
今から15年前に「リアルタイム骨取り」というタイトルで魚の全身骨格作製の様子を公開した.
当時は薬品による除肉を行っていたが15年間で手法が二転三転し,最近ひと段落ついたので,改めて現在の手法を公開.

sb207_Fig.1.jpg
Fig. 1 ミノカサゴの全身骨格
2009年作製(下段)と2019年作製(上段)



今回は「僕はこういう手順でホネ取りをしていますよ」という,ふわっとした紹介調で書くつもりだ(安全衛生管理に関連する項目以外).
そもそも魚の骨格標本を作ろうとしてここに辿り着く人は,既に詳しい人が多そうだし,ホネ取りハウツーサイトもいっぱいあるので,今更ドヤって書いてもな…と.

さて.
現在の僕のホネ作業はこんな感じ.


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Fig. 2 作業フロー


使用している道具と薬品は以下の通り.
状況に応じて適宜追加・省略しているが,使用頻度が高い道具のリスト.


1. 道具

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Fig. 3 使用している道具
1) バット…刃先の保護とサイズ展開の多様さ・価格から,PP(ポリプロピレン)製を愛用.
2) 手袋…食用魚メインだが,手に臭いや汚れがつくと他の作業ができないし,有害な薬品や死体を扱う時に備えて手袋慣れしておくという目的も込みで.
3) ハサミ…よく切れるものを.
4) ピンセット…除肉用に鉤付きと頑丈なやつを3本(HOZANのPP-101やPP-103,PP-105),組立用に1本(KFIのK-3とか)を愛用(Fig. 4a).
5) スパチュラ…除肉時に肋骨の間等のクリーニングに使用している.マグロのすき身を取るような感じで使用.
6) メス…カッターナイフやデザインナイフ等で代用可.
ただし,カッターは構造上どうしても刃がガタつくので,僕はほぼ使わない.
交換式ではなく割高だが,ホームセンターや模型店で超精密ナイフ的な商品名でメスと同じ商品を入手できたりもする.
7) ブラシ…隙間の洗浄や,脳をほじくり出すのに便利.
8) 紙…キッチンペーパータオルやキムワイプ等,状況に応じて適宜使用.



僕は学生時代から使い慣れた解剖器具を使用しているが,よほど小さな魚でなければ,ホームセンターや100均等で購入できる商品でも精度的には問題ない.
ただし,除肉時はヌルつく肉や皮をしっかり掴めることが重要なので,内面がギザギザもしくは鉤付きが便利(世の中にいっぱいあるのでメーカーや品番を指定するつもりはない).

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Fig. 4 お気に入りのピンセット
a) ホーザンの強力ピンセット(左)と通常のピンセット(右)の厚み比較,b) 有鉤ピンセット先端部の拡大



2. 薬品

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Fig. 5 使用している薬品
1) オキシドール:漂白で使用.タッパーに溜めて使っている(ロック付き蓋やねじ蓋容器だと発生したガスを逃がせず破裂することがあるので危険).
薬品同士の混合で爆薬生成のリスクがあるので,脱脂で有機溶剤を使う人は,しっかり揮発させてから使用.
2) 無水エタノール, 3) アセトン, 4) ベンジン:脱脂で使用.いずれの溶液も互いに混ざらぬよう,しっかりホネから揮発させる.
魚種やホネの状況,使用環境によってはアセトンやベンジンは使用しない.
5) 接着剤:組立に使用.


アセトンやベンジンといった有機溶剤は,内臓へのダメージが蓄積したり,薬品同士が混じって爆発物ができたり,火災が発生したり等々,命に関わるリスクを孕んでおり,使用・保管・廃棄のいずれにおいても適切な運用が必要なので,無理に使わない.
部活動で顧問の先生にサポートしてもらえる人,もしくは自分で稼いだ金で薬品を買えるようになってから(その頃には社会的責任が備わっていると思うので)でも良いかなと思う.
水道にそのまま捨てるのは論外だし,ホネにも薬品にも興味がなく事情も把握していない親に「なんか事故った/捨て方わからん廃液出たんだが…」と丸投げするのも酷だ.

また,住んでいる市町村や,薬品の種類・量によって廃棄方法等も変わってくるので,ここでは「各自の責任で購入前にしっかり調べて!」とだけ書いておく.
試薬であれば,SDS(Safety Data Sheet)という薬品の説明書が入手できる(Fig. 6).
「ネット上の詳しい人」はたくさんいるが,ぶっちゃけ画面の向こうで面倒見ている人がなんか自分の手に負えなそうなトラブルが起きていても「連絡に気づかなかったわ…ごめんごめん」で済ませることもできてしまえるわけで,基本的には自分とすぐ近くにいるリアル友人・先生あたりでなんとかできる範囲の手法で留めておくのがいいと思う.
現場の様子から判断が必要なこともあるし…
リアル交友関係はホネに限る必要はなく,化学系まで範囲を広げておくと,ホネ取りクラスタより試薬に詳しい人の選択肢が増えるはずなので,かなり心強くなる.


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Fig. 6 安全データシート(SDS)に記載されている項目


3. 作業環境


我が家は工作とホネ取りを行う部と生活スペースとは分けており,作業部屋には局所換気装置を追加することで除肉時や薬品処理時の臭気対策を行っている(Fig. 7).
また,食品と混同せぬよう冷凍庫も分けている(Fig. 8a).

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Fig. 7 我が家の作業環境 
a) ホネ取り兼工作部屋全貌,b) ホネ取りエリア,c) 除肉中に換気装置を使用している様子


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Fig. 8 a) ホネ用冷凍庫兼資材部屋,b) 冷凍保管の様子 c) 8年前に水ごと冷凍した魚のヒレの様子


4. ホネにしやすい魚

普段僕がホネ取りしているのは,20〜30cm程度で鮮魚店に並んでいる魚.
ただしウナギなどのにょろり系,サケ類,イワシやニシン類辺りの魚類はパーツ数が多いので,パーツ欠損なく仕上げようとすると全身骨格は面倒.
軟骨魚類も収縮と変形が酷く,今回紹介する方法とは別の方法で作業することになるのでパス.
それだけ注意すれば,食事の時にかじって『骨が硬い』と感じた魚なら好きなやつで(多分)大丈夫だと思う.
撮影と除肉作業は地味に時間がかかるので,冷凍保管して日程調整をする.
1か月以上先になるようであれば,水と一緒に凍らせる等の冷凍焼け対策をする(Fig. 8b, c).

準備で疲れたので,一日目終了.


そうだ,一応リアルタイムという言葉は入っているけれど,執筆と画像編集の時間分のラグは勘弁してくださいまし.

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posted by osakana at 14:24| 千葉 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月08日

魚話その206.5 マダイ天獄〜ケータイグラビア編〜

本文は…ちょとまててください…

ちなみにウェブブラウザで閲覧するより,一度ダウンロードしてからPDF閲覧ソフトで見た方が見やすいと思います.

まだ試作段階なので,なにか感想や誤植があればこっそり(優しく)教えてくださいませ.

下記内容についてご理解・ご了承いただけた方のみ,個人的にご利用ください

【ダウンロード前の注意】
・素人が趣味で作成した資料なので,鵜呑み厳禁です
・ウェブ配布の特性を活かし,ファイルを随時更新するつもりなので,二次配布/二次使用しないでください
・作製は全て個人で行ったため,誤表記が残っている可能性は多分にあります
・万一トラブルが発生しても,補償できません
・個体差は多々あるので,これが正解というわけではありません


マダイ頭部パーツのしおり的ななにか(スマホ版)(Ver. 1.133)
madai_smartphone_ver.1.133.pdf



マダイ頭部パーツのしおり的ななにか(スマホ版)(Ver. 1.132)
madai_smartphone_ver.1.132.pdf



マダイ頭部パーツのしおり的ななにか(スマホ版)(Ver. 1.131)
madai_smartphone_ver.1.131.pdf



マダイ頭部パーツのしおり的ななにか(スマホ版)(Ver. 1.13)
madai_smartphone_ver.1.13.pdf


マダイ頭部パーツのしおり的ななにか(スマホ版)(Ver. 1.12)
madai_smartphone_ver.1.12.pdf


マダイ頭部パーツのしおり的ななにか(スマホ版)(Ver. 1.11)
madai_smartphone_ver.1.11.pdf


マダイ頭部パーツのしおり的ななにか(スマホ版)(Ver. 1.10)
madai_smartphone_ver.1.1.pdf


旧バージョン マダイ頭部パーツのしおり的ななにか(スマホ版)(Ver. 1.01)
madai_smartphone.pdf
posted by osakana at 00:19| 千葉 ☔| Comment(0) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする