2007年02月13日

魚話その109 拝啓サベツ用語殿

●標準和名の変遷


つい先日(2007年2月1日)の話。
日本魚類学会が『差別的な単語が標準和名(≒図鑑に掲載されている名前)に含まれる魚の名前を変更する』という方針を発表した。
これらの話は以前から魚関係の書籍には出ており、どういう風に名前を変えるか等々の審議が長いことなされていたものと考えられる。
とはいえ、『差別的な単語』は古い言葉も多く、実際のところ意味が分からずに使っている人も多い。
というわけで、今回は改正の対象となった名前の意味なぞを。

以前から書いているように、このブログは教育的情報の提供が目的のブログなので、決して面白半分で書いているわけではないということを念頭においていただきたい。
ちなみに複数存在する意味の場合、該当すると思われるものに付いてのみ記した。

対象語1.メクラ
めくら【盲】:目が見えない人。

対象語2.オシ
おし【唖】:喋ることができない人。

対象語3.バカ
ばか【馬鹿】:知能の働きが鈍い人。

対象語4.セムシ
せむし【傴僂】:背骨が後方に湾曲して前かがみになっている状態。

対象語5.セッパリ
せっぱり【背張】:せむしと同義と思われる。

対象語6.イザリ
いざり【躄】:足が立たない人が膝や尻を付いて移動する様子。

対象語7.テナシ
てなし【手無し】:手が無い状態。

対象語8.アシナシ
あしなし【足無し】:足が無い状態。

対象語9.ミツクチ
みつくち【三つ口】:口唇裂の俗称で、唇の部分が裂けている状態。

で、その対象種を一覧にしたのがこちら(クリックすると拡大)。

標準和名改正勧告

これらの言葉は基本的に外見や生態に基づいて用いられており、また、当時のそれらの言葉への価値観(?)が異なったためと考えている。
あまり気にしている人もいないけれど、『バカチョンカメラ』もVacation cameraと『バカでもチョンでも(もしくはチョンと押せば)使えるカメラ』とかけたという説がある。
実際の由来は不明確だが、ギリギリアウトの表現の線が濃厚かと…
とりあえず、意味を知らずに言葉が独り歩きするのは多々ある気がする。
今回取り上げられているのは標準和名だけで、地方名を含めればさらにこの類の言葉は残っている。
差別的用語撤廃と古い風習の保存の狭間で、今後どう扱われるのか気になるところだ。

また、この標準和名の変更により、図鑑や分類関係の書籍の改訂が行われる可能性もある。
僕は版が変わるごとに購入しているので、金銭的な面でも気になるところだ。
個人的な理由はさておき、図鑑に掲載されるような名称が不安定(しばしば変わる)のは、あまり好ましい傾向ではないと思う。
古い文献を調べるにあたって、名前の変更に気づかなければ、情報量が半減してしまう可能性だってあるのだ。

この類の変更には数多の意見があると思われるが、それは個々でよく噛み砕いてもらうのがいいんじゃぁないかと考えている。
差別用語をなくすには云々…といった大それたことを書いているわけではないが、意外と『いい年齢』になった人でも知らない人が多い。
日常生活で使う言葉ではないが、今回のような報道があった時に、例えば生徒に『○○ってどういう意味ですか?』と質問される事だってあるかもしれない。
『調べてごらん』でもいいのだけれど、意味を知っていて生徒に調べさせるのと、自分も知らずに生徒に調べさせるのとでは、なんとなく意味合いが変わってくるように思える。
個人的には、下記の『虫の名、貝の名、魚の名』に掲載されている『魚の困った名前―差別的和名をどうするか』というパートが参考になると思う。
出版物のみならず、博物館の展示でも名称に対する指摘/対処が行われてきたのだということが記されている。
話はちょっとそれたが、まぁ、そういうのについて考える機会があってもいいんじゃぁないかと思い、筆を執った次第である。


今日の魚(新称で表示)

ホソヌタウナギ(Myxine garmani)
オキナホソヌタウナギ(Myxine paucidens)
クロヌタウナギ(Eptatretus atami)
アサバホラアナゴ(Dysomma anguillare)
チヒロザメ(Pseudotriakis microdon)
リュウキュウキビナゴ(Spratelloides atrofasciatus)
セダカイタチウオ(Oligopus robustus)
クロアンコウ(Melanocetus murrayi)
ニライカサゴ(Scorpaenopsis diabolus)
オオクチヤリガレイ(Neolaeops microphthalmus)
ツマリホウボウ(Chelidonichthys ischyrus)
ヤマトコブシカジカ(Malacocottus gibber)
セダカクロサギ(Gerres erythrourus)
セダカカワハギ(Rudarius excelsus)
カエルアンコウモドキ(Antennatus tuberosus)
ムチカエルアンコウ(Antennatus flagellatus)
ロケットカエルアンコウ(Antennarius analis)
カエルアンコウ(Antennarius striatus)
ボンボリカエルアンコウ(Antennarius hispidus)
ソウシカエルアンコウ(Antennarius scriptissimus)
オオモンカエルアンコウ(Antennarius commersoni)
クマドリカエルアンコウ(Antennarius maculatus)
イロカエルアンコウ(Antennarius pictus)
ウルマカエルアンコウ(Antennarius coccineus)
エナガカエルアンコウ(Antennarius rosaceus)
ベニカエルアンコウ(Antennarius nummifer)
カスリカエルアンコウ(Antennarius dorehensis)
ヒメヒラタカエルアンコウ(Antennarius randalli)
ヒレナシトンガリハダカ(Nannobrachium SP.1)
チョウジャゲンゲ(Andriashevia aptera)
ヤワラゲンゲ(Lycodapus microchir)
ウサゲンゲ(Bilabria ornata)


参考文献
日本魚類学会の差別的標準和名の改名最終勧告
虫の名、貝の名、魚の名 (松浦啓一 他 東海大学出版会)第1版 P172-191、P192-225
国際動物命名規約


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posted by osakana at 02:34| 埼玉 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | 魚話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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